悩み
トリエ様…いや、トリエから「いつまでも」と言う返答があってから気付けば3年も経過していた。
トリエは相も変わらず我が家への訪問を欠かさない。
流石に12歳になったトリエは以前に比べてすべき事が多い様子で訪問の頻度は下がっていた。
でも1週間に1度は顔を合わせ、寛いでいく。
婚約の返事は別段気にしていないようだった。内心は次期王がそんなので良いのかと思ったが、今の状態が居心地の良い私は見て見ぬふりをしていた。
婚約騒動は落ち着いたが、あれから野心家なお祖母様が静かなのが少々不気味ではあった。
「おねえたま」
ロゼリアが走って私の元にやってくる。私はロゼリアを抱き止め、目の高さまでしゃがみ抱き締める。
ロゼリアは嬉しそうに抱き返し「あのね、おねえたま。さっき、精霊さんがいたの」と楽しそうに話す。
様が綺麗に発音できないところも愛おしい。ひねくれることもなく、愛を受けて育っているロゼリアはセヴィのことも「おにいたま」と慕っている。
見目も赤ちゃんから子供へと成長し、顔立ちもはっきりしてきた。
姉の欲目を除いてもロゼリア超かわいい、マジかわいい…と語彙力が崩壊するくらいだ。
セヴィはあれからすっかり精練されておりもう一緒のベッドでは寝てくれなくなった。
ただ私の事は慕ってくれていて何かと母に報告するように学んだことや今日あったことを感情豊かに話してくれる。
お父様とお母様は今も仲が良くスコルプ家は安泰であった。
しかしそんな安らかな日々は長くは続かなかった。
私は庭の角に作った秘密基地の小屋の中でうーんと唸る。
秘密基地のはずなのだが、目の前ではトリエが寛ぎながら「何を悩んでいるんだい?」と私に問いかける。
ここに何故、トリエがいるかと言うとは婚約騒動の後この小屋はトリエに見つかってしまった。
何がきっかけであったかは忘れてしまったが、トリエは「令嬢が小屋を1人で建てる?普通」とひとしきり笑い終わった後、私が拗ねたようにこれ以上人にばれたくないと言ったら結界魔法を施してくれた。
トリエから様々な魔法を教わりながら気付けば秘密基地は豪華な装いになっていた。
豪華になった秘密基地の話は一先ず置いておき、悩みがあった。
「ロゼリアと王太子の顔合わせのお茶会の日が決まったの」
「それは悪いことではないよね?どちらかと言えば良いことなんじゃないのかな?」
前世の記憶のある私にとってはあまり良いことではない。
私はうーんとうなり腕組みをし、トリエにはどこまで話すべきか決めあぐねていた。
「まあ、妹を溺愛しているリアナには良くないことなのかな?」
トリエは苦笑いをしながら目の前に置かれた紅茶を口に含む。
あながち間違いではないので訂正せずにトリエに向かって微笑み返す。
「…リアナはいつになったら妹離れするのかな…」
トリエが独り言のようにぽつりと呟いた言葉に私は少しだけ胸を痛めるが聞かなかったふりをした。
つい居心地がいいとはいえ一国の王子との婚約を保留にし続けるのは忍びない。
「…」
「急かしているように感じたらすまない。いつまでも待つと保留にさせてもらったのは私だ。リアナは気にする必要はない。ただ…溺愛されている妹君が…少し羨ましくて…」
トリエは顔を赤らめ下を向いた。
彼の珍しい表情に私はドキリと心が高鳴るのを感じた。
正直、トリエはさりげなく傍にいてくれるし、家族以外で恋愛感情かどうかわからないが好きだと感じている。
家族のことがなければ婚約を受けてもいいと感じていた。
ただまだやることが多すぎる。
「…トリエ」
「すまない。空気を悪くしてしまったかな?」
「いえ。ただ、トリエが顔を赤らめたのが珍しくて…男性にこう言った表現はあわないと思うけど可愛いなって…」
正直な感想をトリエにぶつける。
再びトリエは顔を赤らめ、下を向いた。
完全無欠な彼には割りと珍しい反応に私は再び沸き上がった感情に蓋をして、気合いを入れ直すため両頬を力一杯叩く。
小気味良いパチンと言った音が部屋に鳴り響く。
-覚悟を決めろ、私。
前世を思い出した日から決めていた。世界の平和なんて大それた事なんて望んでいない。
-さて、どうやって婚約をぶち壊してやろうか…。
「悪い顔してるね…リアナ」
トリエの乾いた笑いが虚しく部屋に響いた。
かなり投稿に間があいてしまってすみません。自分のペースでちまちまやっていきたいと思います。




