返答
「婚約はお断りいたします」
そう来訪されたトリエ様に婚約の返事をするとトリエ様は茫然と私を見つめていた。
おそらく断られることは想定していなかったのだろう。
珍しくかなり動揺してそれが表情に現れていた。
「理由は聞いても?」
「私…家族と離れたくありません。セヴィのこともロゼリアのことも…2人が幸せだと確認できるまでこの家を離れたくないのです」
トリエ様の告白は本物だった。だから私も真摯に答える。
嘘を付くつもりはない。
トリエ様はその答えを聞くと腕を組み考え込み「リアナ嬢が兄弟を大切にしているのは知っている。しかしそれが婚約を断ることに結び付くのは…」と唸りながら私に問いかける。
「…以前、そちらのフォンセ王国では婚約と同時に花嫁修行のため婚家に住むとトリエ様から聞きました。私はまだこの国からも家族からも離れたくありません」
「…リアナ嬢は私の事が嫌いで婚約を断る訳ではないと言うことかな?」
トリエ様はそう真剣な声で私に問う。
正直私は彼が好ましいと思っている。ただそれは恋愛感情なのか親愛なのか萌えという感情なのか前世を含め恋愛経験の少ない私には正直正解の感情はわからない。
ただ絶対言えるのは「私はトリエ様の事は嫌いじゃありません」と言うことだ。
「ならばリアナ嬢にはこの婚約を保留にして欲しい」
「…それはお互い不誠実ではありませんか?」
「私はリアナ嬢の隣にいるためなら王位は弟に譲ってもいいと思っているし、私の婚約者になっていいと言うまで待ってもいいと思っている」
トリエ様は冗談でも笑えないことを言っている。
「トリエ様…それは大げさだと思います。その王位を投げ捨てるまで私自身には価値はないと思います」
「それはリアナ嬢自身が感じる価値だ。私にとっての価値はリアナ嬢が決めてはいけないよ。私は君の隣が欲しい」
真剣な眼差し。
正直、気持ちは揺らいでいる。
しかし私にはやるべき事がある。
あと…14年はロゼリアやセヴィを見ていたい。
「トリエ様はどれくらい待てますか?」
そう私が問いかけるとトリエ様は輝かんばかりの笑顔で
「いつまででも」
と答えたのだった。




