一難
「リアナ様は時折、庭を散歩するとおっしゃって出ていきますがどの辺りを散歩していらっしゃるんですか?」
カロンが紅茶を入れながら問いかける。
「ふふっ、秘密」
「危ないことはしてらっしゃいませんか?」
「ええ」
小屋を作っているのがばれれば危ないと言われる気もするが、自分で出来る範囲でしか基地は広げていないので大丈夫だろうと判断する。
「僕も着いていきたい」
セヴィは少し拗ねたように私に言う。
「うーん、いつかね」と返すとほっぺを膨らませ抗議の表情をする。
「でもセヴィは本気になれば私がどこにいるかはわかってしまうのにそれはしないのね」
セヴィは精霊の申し子のため精霊に魔力を代償に願えば私の居場所はわかるようだった。
「魔力を使うし、そんなずるいやり方でお姉ちゃんを見つけても嬉しくないし、秘密を暴くみたいで何だか好きじゃない」
ーなっ、なんて出来た子なのかしら…。
私は一人心の中で感激する。
セヴィもこの1年で大分成長したと思う。勉強もマナーも魔法も全てにおいて努力をしており能力に胡座をかいたりはしていない。
人への思いやりも少しずつ学んでおり立派な人物へと近づいている。
素晴らしい次期スコルプ家当主である。
「リアナ様、実は先程当主様より執務室に来るように伝言がございました」
「お父様が?」
「休憩後でかまわないとおっしゃっていました」
「わかったわ」
私とセヴィは紅茶を飲み、お茶菓子のクッキーをつまむ。
前世よりは甘くないが砂糖や蜂蜜は割りと貴重なため少しだが甘く幸せな気持ちになる。
「お父様からのお話は何なのかしら?」
私とセヴィは顔を見合せ首を傾げる。
執務室への道は重苦しくて何となくだが好きではない。
その上なんだか今日はいつもより人が多く見慣れない騎士がちらほらといる。
誰か要人のお客様でもいるのだろう。しかしそのような話は侍女からなかった。
執務室の前に執事のハロルドが立っており「リアナ様、中で当主様がお待ちです」と執務室のドアを開ける。
そこにはお父様とお祖母様、そして私と同じ年くらいの見知らぬ少年がいた。
「お父様、お待たせいたしました。お祖母様もご無沙汰しております。」と淑女の礼を取りながら声をかける。
「リアナ、久しぶりです。噂では立派な淑女になってきていると聞きました」
お祖母様は扇で口許を隠し笑っているのかどうかわからない表情で私に応える。
「いえ、立派な淑女であるお祖母様にお褒めいただくにはまだまだでございます。大変失礼にございますが、そちらの御方は…」
私は目線を少年に合わせる。
少年は顔こそ日本人離れの美しさだが、サラサラの黒髪にダークブラウンの瞳が日本人の配色でどことなく懐かしい気持ちになる。
「彼は隣国のフォンセ王国の第1王子、トリエ・カテドラル様です。貴女は名誉なことにトリエ様の婚約者候補の1人として選ばれました。誇りに思いなさい」
お祖母様の一言は静かな空間に大きく響いた。
最近、忙しくて遅筆です。遅筆ですが、今後ともよろしくお願いいたします。




