魔法学の先生
その日の夜もセヴィは私の部屋へやってきた。
まだまだ甘えたい盛り、私はベッドを開けてやりセヴィのスペースを作る。
「お姉ちゃんは僕が変わったら嫌い?いなくなる?」
セヴィは不安そうに私に尋ねる。
ーセヴィがこれから星ラプのセヴィのように根暗腹黒キャラになってもお姉ちゃんはお姉ちゃんよ
というのは心にとどめておき「当たり前じゃない、私たちは家族なんだもの」とセヴィの頭を優しく撫でながら答える。
「お姉ちゃん、大好き」
セヴィはここ数日最大の笑顔を私に向け安心したのかすやすやと安らかな寝息をたて始めた。
ーおいおい、最高に可愛いかよ…
私はセヴィの寝顔をみながら心の中で悶えた。
次の日、とうとう念願の魔法学が始まるということで意気揚々といつも家庭教師と勉強している学習室へと向かう。
何だかんだでスコルプ家は公爵家なので家は広く様々な部屋がある。今だにどれくらいの部屋があるかはわからないがよく使う部屋や気に入っている部屋はしっかり覚えており、迷子にはなったりしない。
今日もセヴィはしっかりと私の後に着いてくる。
学習室の前につき、ドアをノックする。
「失礼します」
「どうぞ」と中学生くらいの男の声が聞こえ入室を許可される。
家庭教師の方はもう部屋にいると執事のハロルドに聞いたためその方だろう。
ドアを開けるとそこには机の上に腰掛け紫の髪を束ね、金の縁の眼鏡をかけ整った顔の青年がいた。
「君がリアナ様?」
「はい、リアナ・コーラル・スコルプと申します」
私は淑女の礼をとる。
それと同時に大きなため息が聞こえ「がっかり」と先生の口から聞こえた。
「えっ?今、何とおっしゃいましたか?」
聞き間違いかはたまた空耳かと思い聞き返す。
「耳、悪いの?がっかりって言ったんだよ」
ーなっ、何なのこの失礼なヤツ
「初対面でがっかりと言われる筋合いはありません。失礼ではありませんか?」
私は極力冷静を装い言葉を返す。
彼はははっと短く笑い、バカにしたようにこちらを見る。
「俺の名前はカイ・アスター・シュティル。スコルプ家は優秀な魔術師を輩出しているからどんな優秀な教え子かと思ったが、こんな才能の欠片もないヤツの指導をする?はっ、反吐が出るぜ」
嫌そうにカイはそっぽを向く。
私は煮えたぎる腹を抑え「しかし、雇われたのですから私の出来不出来は関係なく教えていただいてもよろしいでしょうか?」とカイに伝える。
カイは怠そうに髪を掻くと「断る」と言い、机から降り部屋から出ていこうとする。
「何故ですか?」
そう問うと「はあー…出来が悪い上に頭も悪い訳?」と侮蔑を含んだ目で私を見る。
「俺の名前聞いた?俺は忙しい身なの、出来の悪いヤツを教えている時間はない」
カイ・アスター・シュティル。シュティル家は魔法師団の師団長を代々輩出している魔法能力が高い家系である。
魔法師団と呼ばれる国の魔法研究を含めた魔法による護衛団である。
もちろん騎士団も存在している。
そしてシュティルと言えば星ラプにヒース・オーキッド・シュティルと言う魔法師団長の息子と言う攻略キャラがいた。
次期魔法師団長と言われるほど能力が高かった。
そう言えばヒースのエピソードで次期魔法師団長だと信じて疑わなかったヒースの兄と戦うイベントがあったな…兄の名前は確か…カイ…
「カイ・アスター・シュティル!」
「そう、わかっただろ?俺は忙しいの」
カイは自分の名前が有名で自分が忙しい身であるとわかった驚きだと思って満足している様子だが、私の驚きは別だった。
カイは傲慢で高飛車で選民意識が強い性格だったが、ボスとしては弱く星ラプの小物中ボスとして有名だった。
私は何だか親戚の男の子をみるような生暖かい目でカイを見てしまった。
「おい…お前、俺を馬鹿にしてるのか?」
カイは私の視線が自分の望むものではないと気付き鋭い視線と怒気のはらんだ口調で私に問いかける。
ーしまった
私はあわてて「そんなことは…」と訂正しようとした。
しかし頭に血が上ってしまったカイは顔を真っ赤にして私に手を振りかざす。
ーヤバイ、殴られる。
私は咄嗟に腕でガードしようとしたが間に合わず、勢いよくぶっ飛んでしまった。
「お姉ちゃん!!!」
セヴィの叫び声と眩しい光が見えた。
そこで私の記憶は途絶えてしまった。




