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【航海日誌8】

Ship’s Log ’527/5/29

Location: Planet Alduna/Lemuria Sector

Status: Tier8

今日はあたらしい装備で空を飛んだ。

いままでのより沢山飛べました。

あすは友達のリステルも起きるので、今度はみんなで飛びたいな。


挿絵(By みてみん)



「ふふ、かわいいの描いていたのね、わたしも‥‥」

そう、いまやヴェスタは過去の航海日誌をみても心乱れる事はない。

その道を駆け抜け、並人では垣間見ることも出来ない地にたどり着いたのだ。

「リステルとジュノの解像度の差がすごいわ‥‥ジュノにだけエアブラシまで使ってある」

細かく見ていくとさすがのヴェスタでもイラっとするので、あまり見続けないこととする。

とはいえ、航海日誌が怖くて震えていたヴェスタはもういないのだ。

「コホン」

ぱたりと航海日誌の端末を閉じる。

今ではない、そういった顔をしているヴェスタ。

「航海日誌には描くべき時と場所‥‥そして天の意思があるのだわ」

いっぱしの芸術家のような顔で、機をまつヴェスタ。

「過去を否定していても、前に進んだことにはならないわ‥‥」

志しをもち、再度航海日誌端末を開くヴェスタ。

「‥‥‥‥‥‥コレハヒドイ」

ぱたん

過去を否定するのはダメだったのだが、今じゃないと考え直すヴェスタ。

そもそも悲嘆すべきは文章の方だとは、未だ気付けずにいる。

すっくと立ち上がるヴェスタが部屋の中央でぴっと片足立ちになる。

揺らがない体幹に、積み上げてきた功夫(クンフー)が見取れる。

すいっと片足が上がっていき、180度開かれる。

バランスも身体の柔らかさも常人を越えた先にある。

これが航海日誌の為でなければ、万人が褒め称えただろう。

立位の開脚だ。

上がった右足にそっと右手が添えられ、左手はゆるく開かれる。

重心を整えていく。

心の乱れも同じ様にそっと整っていくのをヴェスタは受け止める。

半眼になった瞳は揺るがず、寝起きのヴェスタのように無我の境地に入っていく。

すうぃっと体位を変え、右足が降りてくる。

空気の揺れすら起こさず、静かな動きだ。

両手は頭上で手のひらを合わせ天を向く。

降りた右足は半歩前だ。

右足に重心が移っていき、しぜんと右膝が曲がっていく。

みぎあしの親指一本に荷重が移り、重力から解放されたように左足が後方に上がっていく。

足の上がりにあわせて、上体も天を向いていた合掌と共に前方へと倒れていく。

全ての動きが連動し、美しい調和を見せた。

真横からみたらきれいな”T"の字になったヴェスタ。

その姿勢のまま心を研ぎ澄ませていく。

もうヴェスタの心に乱れはない。

「‥‥みえたわ」

キラーンとヴェスタの瞳に星が浮かぶ。

何を見たのかは不明だが、ヴィーラバドラーサナのポーズを解き、端末に向かう。

そこには静かな足運びで、戦士の目をしたヴェスタがいた。


「航海日誌‥壱の型『睦月(むつき)』‥」

いや、そもそも航海日誌に型はないのだが、何かに取り憑かれたようにヴェスタはするりと動く。

未だにジェスチャー入力にこだわり、無駄に運動量の多い航海日誌を書いていく。

その動きは洗練され、クロスコンバットの達人ジュノですら、今のヴェスタには近寄りがたい何かを感じるだろう。

無駄を削ぎ落とした滑らかな所作。

心を研ぎ澄ませたヴェスタ。

そこにあるのは、確かに達人の動きであった。

ジェスチャー入力で航海日誌を書く達人だ。

掛け声すら無く、呼吸も読ませない水流のような淀みのない動き。

起こりの少ない動作は、優雅とさえ言えた。

ひとしきり演舞を終えると、航海日誌も書き上がったようだ。

満足げな微笑みは、菩薩のごとく慈愛に満ち、後光が差しているかのように周囲を明るく照らす。

何かを成し遂げたのは間違いなさそうだ。

すっと蹲踞(そんきょ)から納刀し三歩後ろ向きに視線を切らずさがる。

正座に移り、三つ指を付き深々と頭を下げる。

航海日誌端末への感謝と敬意を忘れてはいけないと、ヴェスタ流航海日誌術では最初に習うのだ。

航海日誌にそういったルールが有るわけではない。

「ふ‥‥控えめに言って、会心の出来だわ‥‥」

どこからかでてきた手ぬぐいで汗を拭きながら、シャワーを浴びに行くヴェスタ。

その足取りは軽く、本当に満足の行く出来だったのだろう。

部屋から出た瞬間に、すごい勢いで戻ってきて立体操作をつんつんする。

いつものように保存を忘れていたようだ。

ふぅとため息をもらし、改めてにっこりしたヴェスタは鼻歌とともに去っていった。


その結果は神のみぞ知る、であった。

















Ship’s Log ’527/7/30

Location: Planet Alduna/Lemuria Sector

Status: Tier8

今日はみんなで海水浴。

ホテルの上にあるプールでも泳ぎました。

ジュノはとても綺麗でした。


挿絵(By みてみん)



ヴェスタの技術は、既に小説の挿絵にそのまま使えるレベルになっていた。

日誌本体にはとくに進化はない。





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