【航海日誌7】
Ship’s Log ’527/5/12
Location: Planet Alduna/Lemuria Sector
Status: Tier7
今日はスパイラルアークでGEOまで行きました。
月がきれいに見えました。
いつか行こうねとみんなで言いました。
さっき帰ってきたらもう夜でした。
今日はつかれたので寝ます。
「あはは‥‥まるで小学生の絵日記じゃない‥‥こんなもので満足していたのだわ」
以前の航海日誌を見返したヴェスタは、ちょっと驚いて乾いた笑いを浮かべた。
それはもう絵と変わらない、干からびた残滓のような笑みだった。
「でも‥‥ここまで進んできたのだわ‥‥間違っていなかった」
明らかに間違った方向に、自信を持って進むヴェスタ。
その浮かべた笑顔の美しさを見れは、無駄ではなかったのかも知れない。
そんな自然な笑みだった。
方向性は間違っているが。
ヴェスタは真面目で努力家だ。
そしてその努力を恥じる性分が有る。
ジュノあたりに見つかると、「なになに?なに描いてるの?!?」などと絡まれて、慌てて保存しないで消してしまったりするので、こっそりと努力する。
実はジュノはかなり絵がうまい。
絵だけではなく、音楽にもフィギアスケートにも素養が有り、どれをとっても一流になれるレベルだ。
そんなジュノに見られるのは、とても耐えられないとヴェスタは思う。
でも、いつの日かきっと。
そうも、こころの奥底に炎を灯す。
今はジュノとアイカで、最初の拠点があった島で、装備の完熟飛行と武装の試射に行っている。
予定では1時間以上は戻らないはずだ。
こういった一人になれる時間を見出し、ヴェスタは瞑想と航海日誌に取り組む。
絵日記ではなく、公文書ともなる航海日誌だ。
静かにまぶたを閉じて、呼吸を整えたヴェスタが目を開ける。
そこに激しさはもう無く、研ぎ澄まされた気迫が燃えている。
所作には涼やかな流れが有るのに、その筆使いには荒々しいとさえ言える心が籠もる。
「ふっ!!」
すいすいっと立体入力装置を操るヴェスタ。
そこには無駄が削ぎ落とされ、気迫の籠もる太刀筋があった。
真剣勝負の気合で腕を動かすヴェスタ。
瞳には、敵を怯ませる凄みすら有る。
何と戦っているのかは不明だった。
「はぁ!!」
しゅぴっと振り下ろした姿勢で、綺麗な残心を取るヴェスタ。
鍛え抜かれた武を表現している。
まさに武人。
航海日誌に挑むもののふなのだ。
「クスっ‥‥ちょっと気合が勝ちすぎたわ‥‥次はもっと冷静に攻めなければ」
何と戦い、何を掴み取ったのか、満足した微笑みで額の汗を拭うヴェスタが部屋を立ち去った。
また保存を忘れているが、ジュノ達が戻る前に気付いてシャワーの最中に裸で戻ってきて保存するので大丈夫だ。
Ship’s Log ’527/5/29
Location: Planet Alduna/Lemuria Sector
Status: Tier8
今日はあたらしい装備で空を飛んだ。
いままでのより沢山飛べました。
あすは友達のリステルも起きるので、今度はみんなで飛びたいな。
確実にヴェスタの技術は高まっていた。
航海日誌以外の方向で。
ちょっと交通安全のポスターっぽいものであった‥‥
‥‥妙に一部分だけ丁寧なのも気になるところであった。




