【航海日誌6】
Ship’s Log ’527/3/10
Location: Planet Alduna/Lemuria Sector
Status: Tier6
今日は引っ越しました。
とても疲れました。
「ふっ‥‥まるで園児の絵日記ね‥‥」
以前の航海日誌を見返したヴェスタは、自嘲の笑みを下手くそに浮かべた。
それはもう絵と変わらないレベルの下手くそな笑みだった。
「でも‥‥今の私は違うわ‥‥そう、諦めず積み重ねてきた!」
にこりと綺麗な笑みを浮かべるヴェスタ。
本人に自覚はないが、今の微笑みはとても魅力的だった。
実はあれ以来ヴェスタは真面目に書き続けていた。
きっといつの日か誰もが唸るような航海日誌を書こうと。
そう志して今日まで続けてきたのだ。
「継続は力なり‥‥そう先人は語ったわ‥‥」
そうだ、あきらめず頑張ろう。
なんども挫けそうに成った時に心に去来した、その偉大なる先人のしるべ。
じっと目を閉じ集中するヴェスタ。
まるでアスリートが記録に挑む瞬間のように。
武道の達人が試合に挑むかのような集中力。
ヴェスタの周りだけ時がゆっくりになる幻想すら見えた。
カッ!
目を見開き一心不乱に書き始めるヴェスタ。
「ふぉわたあ!」
まるでトランス状態のように上体を揺らし、象形拳のごとく何かが乗り移る。
「あたたたたたたたたたたたた!!」
ピシっ!
謎のポーズで動きを止めるヴェスタ。
この航海日誌のデバイスは立体入力に対応しており、様々な状況でも入力可能な工夫がされてある。
UI (ユーザーインターフェイス)が神がかっているのだ。
超重力下や、無重力下でも日誌を書けるよう、様々な入力オプションが有る。
今のヴェスタが操るのは、ジェスチャー入力。
特定のジェスチャーがコマンドになり、様々な入力支援を受けられるモードだ。
「ふっ‥‥」
どこか”やってやったぜ”みたいな満足した顔になるヴェスタ。
残心を解き、自然体に戻ったヴェスタ。
軽く息が乱れているが、鼻息が荒い程度に収めている。
つつぅと汗も一雫流れてきた。
「やったわ‥‥完璧」
にっこりと綺麗な笑みになったヴェスタは、鼻歌を歌いながらお風呂で汗を流しに行く。
「ふんふぅん♫」
るんるんでスキップぎみにシャワーにむかったヴェスタは、やり遂げた気持ちで満たされる。
(なんだ‥‥簡単なことなのだわ‥‥続ける。それだけだったのだわ)
極意にたどり着いたヴェスタは、あんなに航海日誌を嫌がっていた自分をもう思い出せずにいた。
そう、航海日誌の達人となったのだ。
そうして今日もヴェスタの航海日誌が刻まれる。
Ship’s Log ’527/5/12
Location: Planet Alduna/Lemuria Sector
Status: Tier7
今日はスパイラルアークでGEOまで行きました。
月がきれいに見えました。
いつか行こうねとみんなで言いました。
さっき帰ってきたらもう夜でした。
今日はつかれたので寝ます。
ヴェスタの画力は6才程度まで上達していた。
文章は変わりなかった。




