歓迎会
「さて、歓迎会を始めましょう。
ダルさん!神野さん!前々から言ってた新人が来ましたよ!!」
松田は部屋全体に聞こえるように大きく声を張り上げる。そして研究室奥の倉庫と、研究室左のソファーからニコニコのモノクルと気だるそうな顔とが生えてきた。
「何?!ついにまともな人手が増えるのカ!?」
「休憩時間ぐらいゆっくり休ませてくれよ………。」
「一旦作業を中止して、自己紹介からお願いしますね。」
二人は各々作業を中止して阿柱へと近づいてくる。一方松田はせっせとお茶とコーヒー、そして茶菓子を用意して机を片付け始める。阿柱は何をして良いのか分からず、ただ佇んでいた。
ダル、そして神野と呼ばれた男たちは自然な流れで片づかれていく机の側にある椅子に座り始めた。
「ン?座らないのカ?」
「え?あっ、はい!すみません!失礼します!」
「緊張しすぎじゃないのか?もっと楽にしても良いんだぞ?」
神野と呼ばれた方が気楽に阿柱に話しかける。しかし、阿柱は緊張はしたままだ。
少しして、机の上に五つのカップが置かれ中央にアイスコーヒーと紅茶が入ったポットが置かれる。神野はその事に少しながら疑問を浮かべ、松田に問いかける。
「おい松田よ。ここには四人しかいねぇよ?」
「いえ、五人分であっています。綾四井さんはもうすでにおられますよ。」
「やあ」
「ヒョエッ??!?!」
突如としてダルの左隣に綾四井が現れた。ダルは声にならない悲鳴をあげ、椅子から転げ落ち尻餅をつく。阿柱は極度の緊張もあり、状況をうまく飲み込めず、神野はダルの反応を見て笑い、松田は主任の悪ふざけのタチが悪いことに呆れた。
綾四井は何事もなかったのように近くの椅子を現れた場所に持ってきて座る。
「これで全員揃いましたね。では、気を取り直して綾四井さんから順に右に自己紹介をお願いします。」
四角形の机に左右に二つと三つ、椅子があり二つ側に松田と阿柱。三つ側に神野、ダル、綾四井と並んでおり、必然的に紹介順は綾四井、ダル、神野、松田、阿柱となった。
「よかろう。私は綾四井。僭越ながらこの研究所の研究主任をやっている。階級は特別一級監視員となっている。好きなものは野菜、嫌いなものは肉だ。別にベジタリアンっていうわけでもないがな。」
次にモノクルを左にかけ、高身長で細身、そしてまるで十八世紀のイギリスにタイムスリップしたかのような格好をしているダルと呼ばれた男が立ち上がり挨拶をする。
「私の名前はダルシム。阿柱ちゃんには気軽にダル先輩とでも呼んでほしいナ。階級は準二級監視員、好きなことは書類整理。嫌いなことは……ホラー鑑賞とかかナ?よく、格ゲーのキャラに重ねられるけど、ヨガはしてないヨ。これからよろしク!」
何かホワホワした雰囲気で彼の周りにお花が咲いている気がすると、阿柱は思う。同時に語尾の発音が特徴的で話しやすそうだとも思った。
次に目の下にクマを浮かべ棒付きキャンディーを咥える良く言えばイケおじ、悪く言えば身だしなみが出来ていない二十代といった外見だ。特徴的なのは口元や耳、鼻や目に縫い付けたように金属製のワイヤーが通っていることであり、なぜ普通に喋れているのか阿柱には良く分からなかった。
「俺の名前は神野、好きに呼んでくれ。階級は二級監視員、同時に研究員でもある、好きなのは……寝ること。嫌いなのは、夢を見ることだ。以上。」
「好き二…?ごっどちゃん?」
「おめぇは黙っとけ。」
ダルシムはとぼけた様に冗談を言う。それに対して神野は真顔でダルシムの頭頂部に軽く拳を当てる。その様子から二人はとても仲が良さげに見えた。
二人のやりとりが終わると、松田が立ち上がり自己紹介を始める。
「では…私の名前は松田です、先輩呼びしてくださいね。階級は二級監視員。好きなのも嫌いなのも特にありません。強いて言うならばおしゃべりが好きです。話し方がブレブレなのはテンションの違いなのでよろしくね。」
最後に阿柱に視線が注目する。
「はい!私の名前は阿柱です。不束者ですがよろしくお願いします!好きなことは筋トレです!階級は…わかりません!」
「阿柱君の階級はどうなるんでしょうかね?他研究所の職員でもなかったぽいですし。」
「八級じゃなイ?」
「それじゃぁ、ここには来れないだろ。三級以上が条件だったはずだろ?」
それぞれ疑問を浮かべ推測を始める。ダルシムは適当にいった推測を神野が正す。そんな中、綾四井は書類をどこからともなく出し始めそれぞれの目の前に配り始める。
「それについては私から説明しよう。」
阿柱と綾四井を抜いた三人は配られた書類に目に通し始める。内容としては阿柱がこの研究所にきた経緯が事細かく書かれていた。そしてざっと目を通した神野が困惑の声を漏らす。
「………空想態から出てきただぁ?」
ヨガ、ヨガ、ヨーガー(前投げ)




