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頭がおかしくてお金が欲しいイカれた精霊魔術師エルディア  作者: 無印のカレー
お金儲けしたい

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8話 魔術学校入学試験2

方向性は違っていたのかもしれない。

ただ、すべては“精霊契約の完成度を上げるための努力”だった。


確かに、確かにエルディアの努力は通常の努力ではなかった。


その全ては、この日のためだった。

少なくとも、エルディアの中では。


森での契約交渉。

契約書作成。

福利厚生整備。

精霊との労働条件確認。


寝る間も惜しんで努力していたのは事実だった。


精霊と不器用ながら向き合い、精霊を業務プロセスに落とし込む努力ではあったが、確かに努力していたのだ。


『精霊契約:評価対象外』

──盛大に裏切られた。


ふと周囲をみる。

契約書片手に。



祈りは光属性の正当なアプローチ

呼吸は風の流れとの同調

感情は怒りすら制御し、火と共鳴するための


──なんで!?

いや待て待て待て。


(私は何をしていた?

闇属性の熟練度を上げ。

寝る間も惜しんで魔力制御を学び。

闇精霊にビビられ。

逃げられ。

やっとの思いで契約までした。)


その結果が――


『試験項目にありません。』


盛大に胸中で突っ込んでいた。

精霊契約するために、わざわざ闇属性の熟練度をあげて、精霊契約をまでした私の立場は!?!?



ボエ〜。


「ぼえーじゃ、ねえんだよ!!!!

ぼえーじゃ!!

おまえ、ぼえぼえいってりゃいいって思ってるだろ!!!!」


黒い肉みたいな質感。

脈打つ表面。

先端の目玉っぽい部分。


杖は非常にきもい。



一波乱あったが、学科は問題なく終わった。

こちとらアルトっていう、便利屋がついてる。


この程度の問題は怖くはない。


後でクソ笑われる気がするが。


ただ。


エルディアは首を傾げる。

──答えそのものを知っている気がするんだよね。

勉強しなくても解けたよーな。


なんか。






次。魔術実技試験。


そこには確かに物語があった。


何度も挑戦して、最後の一矢が到達する。

一度魔術が暴発し、諦めかけた後に再挑戦して成功する

正しい魔術が完成して、的を射貫く


積み重ねの証明だった。


残酷で。

だからこそ誠実で。

だからこそ、努力がそのまま結果になる。


その全部が、一本の魔術の矢に詰まる。


エルディアは一歩前に出る。


(ファイアーアロー……誰でも使える優等生魔術だけど、せっかく覚えたんだし……使うか。

ダークアロー。)


理由が最悪だった。


「いけ。」


闇弾が発射され、的を的確に吹き飛ばす。

ボエ〜。


火属性の安定性を捨てて、闇属性で同等以上の結果を出したにも関わらず、エルディアはうつむいてその場を去る。


杖の泣き声が意外と恥ずかしい。




模擬戦に入る。


試験場には、独特の“重さ”があった。

魔力の圧ではない、もっと静かなもの。

“この一戦に、自分の積み重ねを全部乗せる”という重圧。


誰もが、理解していた。

これは戦いじゃなくて、人生の答え合わせ。


──そしてエルディアの番。


(誰もが“ここまで来た理由”を抱えている、ねぇ……)

ダークワンドを軽く持ち上げると、杖がなく。

ボエ〜


(私の答えはもう出てる。最短で終わらせる)


彼女は小さく言った。


──《刻印全開放《フルリリース。》》



エルディアの対戦相手は、受験生の中でも別格と噂される男だった。


ルミナス・アークライト


くるり、と杖が回ると魔法陣が展開。

次の瞬間に炎で構成された巨大な火蜥蜴が、地面を這うように現れた。

熱風が吹き荒れる。


「ど、どうしたサラマンダー!!!!」


ただ、サラマンダーはルミナスの陰に隠れていた。


ぷるぷる震えている。

普通に出てこない。


「……」


──おめーもか!!!

(サラマンダー!!

オメーもわたしのこと怖いんか!!)


エルディアは胸中で絶叫した。

なんなんだ本当に。

闇精霊だけじゃないのか。


──お前は、悪魔だ


(何。今の声

試験中なんだけど。)


「くっ……邪気か。

確かにわかる。

一目見た時から、凄まじい邪気がお前から漂っていた。

──まるでむせかえる死の匂いそのもの!!」


「んなーー!」


エルディアはさすがに反論した。


「失礼な!

お風呂入ってきたもん!!

お金ないから公衆浴場で!!

乙女だもん!!」


「……」


ルミナスの顔がさらに険しくなる。


「まるでダンジョンの深淵の災厄級モンスター……

本気を出さねばこちらが殺されるか……」


「いや、殺さないって。

試験じゃん

殺したら失格……

泣くぞ……

そろそろ泣くぞ私……」


ボエ〜。


「お前は鳴くな。」


「いいだろう。

この僕に本気を出させるとは驚嘆に値する。

穿て。

サンライトアロー

陽光の光を収束し、薙ぎ払え!!」


「答えてダークワンド!!

ダークミスト!!

陽光を遮って!!」


極光の矢が一直線に放たれ、黒い霧が噴き出し訓練場全体へ広がった。

光の矢が霧を裂きながら突き進むが、威力が大きく落ちる。

エルディアは横へ転がるように回避した。


「やるね。

闇属性で日の光を封じて、サンライトアローを減衰させた。

さらに目眩し。

魔術戦の闘いに完全に慣れきっている。

手練れだ。」



観客席から悲鳴が上がった。


「な、なんだあれ!?」

「見えねぇ!」

「闇魔術だ!!」


煙の中心部。エルディア。

視界不良事故を起こしていた。


「な、何これ見えないんだけど!!!

ちょっと、煙ですぎなんだけど!!

けほっけほっ」


黒霧の向こう。

同じように霧の中でルミナスは確信する。


(間違いない。このレベルの混戦制御。

黒霧の中で、視界が奪われている状況。

それでも崩れない立ち位置。

──完全に手練れだ。

学生の域を超えている!)


ちょっと混乱してるようだが、ブラフの可能性がある(ガチです)。

そして静かに告げる。


「この僕に本気を出させるとはね。

感謝するよ。自らの運命に。

さあ、いけ。

エレメンタル、サラマンダー!」


サラマンダーは恐る恐る火を吹いた。


ぼっ。



彼は思い出す。


初めてサラマンダーと出会った日。


洞窟の奥。

誰も踏み込めない灼熱の領域。


「お前は、“耐えられるか”?」


何度も倒れた。


皮膚が焼ける感覚。

魔力が蒸発する痛み。

意識が途切れる恐怖。


それでも、ルミナス・アークライトは立ち上がった。


「諦めるのは、僕じゃないから。」


だからこのサラマンダーは、ただの火ではない。

困難を切り開く、光。



サラマンダーの“純粋熱量”が訓練場を塗りつぶした瞬間。


誰もが思った。


(終わった)

(これで決着だ)


黒霧の中でのエルディアの目が細まる。


──光った!

「そこね。」


《ロックバレット》


石を生成。






「え?」


ルミナスは反射的に、全力の魔力障壁を展開した。


直後に凄まじい衝撃。

障壁が、ガラスのように砕け散る。


「何をされた!?」


──石!?

ロックバレットか?

まさか複属性持ち《デュアル》!?


(それになんて練度だ!?

一切魔力の流れを感じなかった!

それにこの威力

一撃でも喰らえば……)


ぞわりという悪寒に従い、急いでその場を移動。

散弾が彼のいた場所を抉り取る。


──なんだ今のは……!?

こいつ……僕を殺すか!?


サラマンダーの身体が弾け飛んでいた。


「ギャウッ!?」

「なっ――」


ルミナスの顔色が変わる。

精霊が強制送還された。



そして走るルミナスの膝から急激に力が抜ける。

──魔力欠乏!?!?


この僕が!?!?

あり得ない!


魔力総量には絶対の自信があった。


同年代どころか、下級魔術師すら上回る。


(まさかこの煙か!?

この黒霧に魔力吸収効果でもあるというのか!?!?)


聞いたことがある。

優れた闇属性魔術士は、対象の魔力や生命力そのものへ干渉するという。


だが学生にもなっていない入学前。

魔術学校試験を受ける魔術師の卵が、その域だというのか。


──まずい。

体が動かない。

今攻撃されたら、僕は……


「……」


あれ?


攻撃がこない。


「勝者!!ルミナス・アークライト!!!」



「ヘ?

な、なんでだ!!!」


試験官を見る。


黒霧が晴れた先、試験管に指差された先。

エルディアは地面に突っ伏して気を失っていた。


ぴくりとも動かない。


「…………」


──自爆してんじゃん!!!

この子、盛大に自爆してんじゃん!!!!





とはいえ、

とはいえだ。


ルミナスは小さく笑う。


「ふ。」


マントを翻す。


「これが魔術学校か。

思っていたより面白くなりそうだ。」



彼は笑った。



後日、ルミナス・アークライトは魔術学校試験を主席合格した。


エルディアも合格したが、多くの反対意見があったという。

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