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頭がおかしくてお金が欲しいイカれた精霊魔術師エルディア  作者: 無印のカレー
お金儲けしたい

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7話 魔術学校入学試験

魔術学校試験、当日──。


受験生たちは皆、緊張していた。


ある者は家族の期待を背負い。

ある者は村の未来を背負い。

ある者は、幼い頃に交わした夢のために。


魔術とは、心を通わせる術。

故に試験会場は静かだった。


誰もが、自分の“想い”と向き合っている。


──来てしまった。とーとー


石造りの巨大な校門を見上げながら、エルディアは深呼吸した。


「アルトも受けるんだっけ。

でもあいつは大ジョーブだ。

私は私のことに集中!」


エルディアのダークワンドを持つ手に力が入る。


──ここに至るまでの道のりは容易ではなかった。



黒い木材。

紫の宝石。

無駄に禍々しい装飾。


──しかし見れば見るほどキモい杖だ。

ぶち折りたくなる。


ボエ〜


鳴くし。



人は皆、努力を積み重ねる。

──だがエルディアは違った。


「まず精霊が寄ってこない。」


そもそも、好感度が立ちはだかっていた。



──精霊学・基礎理論。

第一章。

『精霊とは心を通わせる存在である』


──バタン。


エルディアは本を閉じた。


「無理。」


時間がなかった。

精霊への敬意がどうしても持てなかった。

愛せないよ。


──ならせめて、嫌悪を消す。

エルディアは座禅を組み始めた。


「無……」


ボエ〜


「無……」


ボエ〜


「うるっっっさいなこの杖!!!!」


ドゴォッ!!


壁に投げた。


ダークワンド。

この杖は、ある魔族の少女リリによってエルディアに献上されたものだ。


「役立たず」

「半端者」

「魔族の恥」


今よりもさらに小柄な魔族だったころリリに、戦う力はなかった。


命懸けで一族の宝物庫へ忍び込み。

番人を欺き。

傷だらけになりながら、それを奪って逃げだした。


その結果一族から追放され、帰る場所も失ってもそれでも彼女は笑っていた。

ずっとこの杖と一緒だった。


その杖には、歴史があった。


闇属性適性を強制補助。

低位闇精霊との接続補正。

初級闇魔術回路の自動形成。


本来なら闇属性を扱えない者ですら、闇属性魔術の入口へ立たせる破格のアーティファクト。


それが好感度問題に悩む、エルディアの手へ。

──そしてそれは後に、魔術界でこう記録される。


《史上最も情緒が終わっている契約》


まさに、時代の転換点であった。


そして彼女はそこで、後の時代のあらゆる精霊魔術の基礎となる契約術式を開発する。




エルディアの前の机の上には、資料が山のように積まれていた。


「再現性がない。

……愛すら再現性は不明瞭。だから必要なのは絶対に感情じゃない。絶対に条件整理だ。

そして、精霊側の要求は主に3つ。安心感、魔力供給、契約安定性。」


──《高速省略型クイック条件提示式ショートカット最低限相互利益契約バーゲニング


あまりに最低な術式だった。


それは、信頼をおきざりにしたまま魔力供給 と安全性 によって、 契約への道筋をこじつける、文字通り異端の術式。




祈り。

共感。

絆。

慈愛。

時間。


本来精霊契約とは、それらを経て成立する神聖な儀式。

それら全部を破壊し、めちゃくちゃ合理的に精霊側に労働条件を的確に示した。


・契約解除自由

・過剰搾取なし

・魔力供給安定

・危険時は即切断可能


それは祈りを省略した契約。

共感を経由しない接続。

絆の代わりに置かれたのは、ただの条件表。


「ずっと一緒」

「永遠の絆」

「家族」


笑える。


「それって、精霊が結局、“感情労働”を無償でやらされてるだけじゃん。」


愛してるから働けってそんな関係は愛せないから。

愛って免罪符じゃないから。


愛。博愛。祈り。

大いに結構。


愛だろうがなんだろうが、ギブアンドテイクが成立してない関係は搾取だから。

なら最初からビジネスでいい。


エルディアの倫理観だけが終わっていた。



試験内容の説明──。


学科。

魔術実技試験。

模擬戦。


緊張が高まる受験生の中、そしてエルディアは気づく。

(あれ……?これって……)


心の中で、何かが静かに崩れていく。


(待って……精霊契約……関係ない……?)


エルディアはわなわなとしていた。

あまりにわなわなと震えていた。


「ね、ねえ!!!!」


心の中で絶叫する。


「精霊契約してるかどうかなんて、一切試験に関係ないんだけど!!!!」


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