67話 管理者依頼2
古代樹統括存在の上位端末である千蝕魔角鹿。
千蝕魔角鹿は、彼女の指示に従い侵攻を始める。
千蝕魔角鹿の主兵装は都市破壊ビームだが、その戦闘行動はあくまでも個体の判断に委ねられる。
つまり安直に言うならば、非常に制御が悪い。
「言う事ききなさい!!
くそ鹿!!」
「姉御。
無理あるっすよ。
千蝕魔角鹿は意思を持つっす。
つまり必要なのは対話。
古代樹統括存在は精霊の一種。
その眷属たる千蝕魔角鹿も、当然精霊っす
そして姉御は当然、精霊に嫌われる。」
「躾けてやる。」
「はい?」
「もち本格的に研究所と交戦は始める前に、千蝕魔角鹿を、ぼこす!
もちろんぼこすとは、物理的にボコボコにするって事!!」
「そもそも相手が違うっす。
私らの相手はあの研究所っす。」
「この鹿、暴れまくるんだもん。
だから今ここで躾をする。
どちらが上か、どちらが主人か、その身に刻みこむ!!
覚悟しろよ鹿風情が!!」
エルディアはリッチを召喚した。
ふぉっふぉっふぉっふぉ。
リリは首を傾げた。
余裕あんなー。
そしてリリは、研究者と交渉。
失敗。
リリは首を傾げていたが、エルディアはそれを聞いており、そして思っていた。
──そりゃお前、あれじゃ失敗するだろ。
交渉なめてんのか。
なら、ぶっ潰しちゃいましょうってことで、エルディアは借りておいた『それ』を引き続き、侵攻させる。
すなわち躾を終えた千蝕魔角鹿を。
まさに最低の第二プラン。
魔力位相同期網起動。
命中座標算出の為の観測魔術式起動。
魔の森の魔力を借りて、千蝕魔角鹿とも同期。
都市破壊ビームの制御に入る。
だが、由々しき問題が立ちはだかっていた。
この鹿、全然言う事を聞かない。
ボコボコにしたのに。
リリが見かねて言う。
「姉御、制御を変わるっすよ。」
「くそう……
魔物の制御は、結構自信あるのになー。
どうしてもロデオしてる感じになるんだけど。」
そしてリリが制御が変わると千蝕魔角鹿は、静かになった。
「お前、覚えとけよ。
後で絶対ぼこすかんな。」
ぶおーーーー!!!
「やる気かてめー!!」
「姉御!!
喧嘩しないでください!!!
何度も言うけど、姉御は精霊に嫌われるから、絶対に言うこと聞かすのは無理です。
役割分担しましょう!!」
まあ、リリが操ろうが何しようが、制御できてるならいい。
──納得はいかないが
「観測魔術式を立ち上げるから、リリは都市破壊ビームの発射ルーチンを踏んで。
「ラジャーっす。」
エルディアの姿がは、ウロボロスの前に躍り出る。
「なんか、姉御が浮かんでるんすけど。」
「シェイドの幻覚よ。
リリ。
それじゃビームよろしく。
狙いはこっちで調整する。
クソ鹿。しっかり狙いなさいよ。
外したら殺す。」
ぶおおおお!!!!
そして、ウロボロスはエルディア幻影に向けて、容赦なくビームを放つ。
それは研究所を掠める軌道を描き、研究所の結界を崩壊させた。
確かにそれは研究所の全ての結界を穿っていた
「姉御は無茶苦茶っす。
でもこれで研究所が菌子ネットワークの影響下に、入る。
侵食を再開。」
「交渉もして、干渉をごましましょう。」
「はーい。」
リリは通信魔術を立ち上げる。
「ベルク。生きてるっすか―」
『リリ。貴様のせいか。』
「違うっす。」
……
その時、膨大な魔力が広がった。
同時に昼にもかかわらず、空いっぱいに広がる、星の光。
エルディアはひくついた。
「ね、ねえりり。
なにあれ。」
「姉御、迎撃みたいっす。
どうやら虎の尾を踏んだみたいっすね。」
空が落ちるように、昼の陽光の元で、夜空をそのまま引きずり下ろしたような光の群れが、森を、鹿を、その頭上に立つエルディアを、まとめて貫かんと降り注ぐ。
「リリ!!
あなた、いったわよね!!!
魔族のベルクは、研究に特化してるからそこまでの戦闘能力はないって!!」
「実際そんな戦闘能力があったら、もう千蝕魔角鹿は攻略されてるっす。
この迎撃は、つまりベルクとは別口っすね!」
そして星の、輝きは大地を舐めた。
数千の星槍が、一斉に降り注ぐ。
それは流星群ではない。
天そのものが放つ裁き。
封神八十七式烈光流星乱舞。
王国最高の魔術師アステルだけが到達した、星属性固有魔術。
「――終わりです。」
星の光は裁定。
彼女はそこにいた。
アステル。
王国最強の魔術師。




