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頭がおかしくてお金が欲しいイカれた精霊魔術師エルディア  作者: 無印のカレー
地区予選

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63話 森開発2

『千触魔角鹿』(ディア・ウロボロス。)


でかい鹿に、無数の木の根を思わせる触手がついた化け物。


『樹海還しの魔鹿』。

二つ名とは噂話などを通じて広まり、やがて定着した呼称。




魔の森が難攻不落である理由の一つ。

すぐこの巨大な鹿が現れる。


まだ森に入ってほとんど開発を進めていない。




すぐさまカイゼリオンの遠距離射撃が火を吹いた。


魔の森に乾いた破裂音を残し、炎の収束射撃が確かに巨体に直撃した。

しかし焼かれた部分が、森の情報を吸い上げて一気に再生していく。


カイゼリオンの渾身の遠距離射撃が、全く意に介されていない。


「削り切れる気がしねえ!!!」


リリが無責任に声援を送っていた。


「駆除頼むっすよー

あれがいる限り、領域拡大は無理っすからー。」


カイゼリオンは再装填を完了させ、次弾を撃ち込むと、舌打ちをした。


「ち。マジもんの化け物だ!!

王都の奴らが対処できないのもうなずける!!」


千触魔角ディア・ウロボロス』の千を超える触手が、わずかに揺れる。




森は、息を止めた。

正確には、息を止めさせられた。


──何かくるのか?


途端に静まる森。

そして明らかに魔力圧力が高まる鹿


「カイゼリオン。手を掴むっす。

転移するっすよ。

ビームが来るっす。」


「お、おう。」


ビームとは?





菌糸ネットワークを通じて鹿に供給されるエネルギーとは、森そのもののエネルギーを意味した。


それは森そのものが、数万年という歳月をかけて蓄積してきた生命の循環。


森が積み重ねてきた時間、そのもの。

その莫大なエネルギーが今、『千触魔角ディア・ウロボロス』へと流れ込む。


すなわち、ビームが放たれた。



爆光。


森の一部が白く焼ける。

衝撃波が森を薙ぎ払い、何百年も立ち続けた巨木を、紙細工のように吹き飛ばした。


「……マジかよ。

今ので都市一個消せるぞ。」


赤熱した大地と、揺らめく陽炎にカイゼリオンの声が初めて揺れる。


その中心で『千触魔角』は、立っていた。



その様はまさに森の上位守護者。


十分な魔力量

豊富な養分

森全域との同期

外敵への防衛要求


これらが揃う事で森は、森の番人を生成する。

その個体は、森全体の意思を共有する。


そしてよく大きなビームを打つ。



その時、ぬるり、と土が割れ、その割れ目から、無数の骨が、組み上がるように這い出してくる。

オズワルドの『屍操術ネクロマンシー』だ。


そして地面からはい出した骨達は、容赦なく魔鹿の触手に薙ぎ払われて壊滅的な打撃を受けた。


一撃。


それだけで、骨軍の半分が森に還された。


「のわーーー

拙者のスケルトンが!!」


「シェイド出番よ!!

『我招く無音の衝裂に慈悲は無く、汝に普く厄を逃れる術も無し。』」


ぷるぷるぷるぷる


魔力吸収フィールドで少しでも動きを軽減するが、焼け石に水だろう。


ぶおおおおお!!!!!!


「こっちこい!!

クソ鹿!!

しゃあこのやろお!!!」


だが気を引く事には成功した。


エルディアは走る。

森の一部が、明らかに“人工的な広間”に変わっているそこへ


やがて。


エルディアは笑う。


「はい、落ちて。」



どこおおおおん!!!!



「鹿は黙って狩られてなさいよ!畜生め!!

いくら魔力があってもおつむは足りていなんじゃないの!!」




「……」


エルディア以外が、静かになったその場で一同は思った。


──魔物相手にもそれやるんだなー……


エルディアは、穴の蓋で楽しそうに言った。


「さあ。迷い惑いなさい。

そして膝まづきなさい。『戦術迷宮タクティカル・ラビリンスに。

迷える子羊に、啓示という名の導きを与えましょう。」


穴は、浅く掘られたものではない。


巨体は、なお地上へ這い上がろうともがく。

無数の触角が岩盤へ突き刺さり、壁面を砕きながら身体を押し上げるも、上がれない。


森の地形そのものを書き換えた、巨大な陥没地帯。


暴れるほど足場は崩れ、巨体はさらに深く沈んでいく。


その時『千触魔角ディア・ウロボロス』の千を超える触手が、一斉に空へ向いた。




千触魔角ディア・ウロボロス』が吠えた。


森ではない。

ダンジョンでもない。

落とし穴の底で世界そのものに対する咆哮。


次の瞬間に、空が割れるほどの閃光。


正確には、菌糸ネットワークを巡っていた森の生命力が、一本一本の魔鹿の触角へと収束し、やがて千の奔流が一つの意思となったもの。



触手が収束し、千本の触手に万の情報が一点に集約される。


天そのものへと立ち上る、一本の光の柱が発射される。




森の魔力。

菌糸の電流。

古代樹の記憶。

空間の圧力。


巨大な魔力が一つの“形”になった姿に、カイゼリオンが即座に後退する。


「全員、伏せろ!!」


だが、遅い。

オズワルドが歯を食いしばる。


「……王都が巻き込まれかねないでござる……!!」


遅れて衝撃と轟音。


そして爆風。



エルディアは不敵に笑う。


彼女は一歩も動かない。

そのまま、軽く手を上げる。


リリが叫ぶ。


「姉御!!逃げるっす!!」


だがエルディアは笑った。


「逃げる?

そんな暇はない。

これはね“帰宅手段”。

推定出力は、カイゼリオン50倍ってとこか。

余裕。」


その瞬間。


せこせことリリが広げていたダンジョン領域が“起動”した。





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