62話 王都近郊の森開発
魔王様からの指令。
「王都ダンジョンを管理せよ。」
王都ダンジョンとは、王都の地下に超巨大ダンジョン。
今なお成熟を続けている。
タスクは、以下の進捗で管理が表される。
①リリのダンジョンを王都への転送。
②リリと王都ダンジョンの接続。
③そんで最後に王都ダンジョン制御率。
合計300%
上記、タスクをこなすためには、まず転送元であるリリのダンジョンの超強化が必須。
つまり全ての流れは、ここに帰結する。
数千年の間、難攻不落とされた王都近郊の魔の森を制圧し、ここにダンジョン領域を兼ねたショッピングモールを作り出す。
そこからDPを獲得し、王都ダンジョン管理に特化したダンジョンシステムを構築する。
余談ではあるが、同時に故郷の村の冬侵食と、魔王再来ゲージが溜まっていって、どっちかがMAXになるとエルディアは死ぬ。
そして超広範囲の魔物がいる森を使えるものにする、その為の魔法ような手段もまた大規模なものになる。
それすなわちインフラ。
つまり土木工事であった。
すでにスケルトンが森を侵略していた。
スケルトンが斧を持って木を切り倒している。
オズワルドの闇魔術だ。
その数1000体。
「素晴らしいわ。オズワルド。」
「ふっ。
エルディア殿。
だが、はじめては見たものの、正気とは思えませぬな。
本気で年間利益金貨10000枚の街をここに作り出す気でござるか?」
「私には見える。
この魔の森が、金の山に。」
「それは大分、目がやられているようでござる。」
「ふふん。まーね。
でもそれに付き合うオズワルドや、カイゼリオンも大概よね。」
「どーせいつもの悪巧みでござろう?」
「もっと人の多い物流圏にお店を構えたいのよ。
空いている土地がここしかなかった。
まさか今あるお店を物理的に退かすわけにもいかないし」
「そもそもここは、未開発の魔境なのでござるが。」
「同じ、同じ。」
「同じではござらん。
む。エルディア殿。
熊でござる。」
ドゴオ
待機していたカイゼリオンの長距離収束射撃が、熊を貫いた。
──敵の数が多すぎるな。
魔力が持たねえぞ。
紅蓮狙撃杖を整備しながら、カイゼリオンは思う。
「流石ね。」
「エルディアか。
そうでもねえさ。
魔力切れをなりかけてる。
すげえ魔物か多い。」
カイゼリオン。
オズワルドに引き続き、Eクラスの悪ノリ仲間だ。
休日はエルディア達に付き合う事が多い。
「なんか変なふうに森を整備してない?」
「まあそうだな。オズワルドには話してある。
でもこっちから削る。
やるなら俺は、こっちからいきたい。」
エルディアは首をかしげた。
「効率が相当悪いけど。」
「わかってる。」
カイゼリオンは静かに笑った。
「朝日が見えるだろ
完成した道を歩いた奴が、一番最初に見る景色だ。
山の向こうから朝日が昇る。
それがいい。
だから迂回するように開発したい。」
エルディアはカイゼリオンを見る。
照れくさそうに彼は笑った。
「俺には何もない。
才能も。
家柄も。一応貴族だが、最下位だ。
誇れる過去も。
だから。」
──だからせめて、自分が作った景色くらいは、綺麗だって思えるものを残したい。
「それが、俺の足掻きだ。笑うか?」
「……わかるよ。」
エルディアは紙を取り出すと、さらさらと新しい図面を描き始める。
「何描いてる?」
「展望施設。」
「……は?」
「高さ百二十メートル。
名称は──」
エルディアは誇らしげに書き込んだ。
『カイゼリオン・サンライズ・プレミアム展望タワー』
やめろ。
王都近郊の森は、魔力ある森だ。
倒れたものは、通常よりはるかに早いサイクルで腐葉土・栄養・菌糸ネットワークに回収され、苗床となる。
その速度は通常の森のおよそ20倍。
条件を整えれば、さらに早まる。
すごく早い。
「俺は引き続き後方で待機でいいのか?
後方支援位置の。」
「大型魔物が出た時は、合図するよ。
まあAクラスの連中に魔術当てるよりかは楽でしょ。」
「そりゃあな。」
「それに火力が足りなかったら最悪森を燃やせばいいでしょ。
私たちの得意技だし。」
「お前の得意技だろうが。
一緒にすんな。」
「よし。
オズワルド。
引き続きいけ。」
「了解でござる。」
「おーい。森を燃やすなよー。話を聞けー。」
そしてアンデッドが再度放たれた。
乾いた音とともに、一本、また一本と大木が倒れていく。
だが数十分もすれば無数の菌糸が這い寄り、倒木を根元から枝先まで覆い尽くしていた。
魔の森の再生速度があまりに速い。
リリも同行していたので前へ出る。
ゴスロリのファッションを、今日もビシッと決めている。
「リリどの。
危ないでござるよ。」
「そうだぞ。
あぶねーぞ。」
「……?」
エルディアは首を傾げた。
あ、そーか。
みんなリリが魔族って知らないんだ。
「大丈夫っすよ。お任せてください。
──『侵食開始。ダンジョン領域を展開。』」
その瞬間、リリの足元に漆黒の魔法陣が広がり、倒木の跡を中心に黒い光が染み込んでいくと菌糸が、その境界の前で止まった。
「オズワルド。
熊の死体はアンデッド化しましょう。
アンデッドの魔力成功判定に必要なのは魔力適正、
つまりオズワルドに失敗はない。」
「ほんとでござろうか……
スケルトンでも自分には、不相応だとすら思っているのに。」
やがて
ぶおーーーーー!!!!!
それは“熊”ではない。
骨と闇と魔力で構成された、巨大な労働用アンデッド。
「できたでござる。
どうするでござるか。
こんなの。」
「当然森を薙ぎ払う。
いけ。
他のめぼしい獣も見つけ次第、アンデッドにするよ。オズワルド。
開拓運用ユニットを増産する。」
「エルディアどの。
あなたは完全に生態破壊者でござる。」
「目指すは、世界よ!」
やがて夥しい熊を、手にかけ、罪という血でその手が汚れかけたころ、それは現れた。
千触魔角鹿『ディア・ウロボロス』




