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頭がおかしくてお金が欲しいイカれた精霊魔術師エルディア  作者: 無印のカレー
地区予選

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61話 新規事業3

カトレアは資料を閉じる。


「……一つ、よろしいですか。」

「アンデッドは却下です。」


「なんで?」


「なんで、ではありません。」


商売貴族の目になっていた。


「エルディア。

あなたは実用性しか見ていません。」


「みてるよ?

骨の形状とか。

これは大腿骨だなとか

丈夫そうだなとか。」


「ゾンビが荷車を押し、

スケルトンが商品の搬入をし、

リッチが笑顔で『いらっしゃいませ』と言う市場に、誰が買い物へ来ますの?」


静寂。


エルディアは想像する。


買い物袋を持った親子。


その横を、荷車を押すスケルトンが通る。


子供が泣く。


母親も泣く。


店員も泣く。


──そして売上も泣く。


「……。」


「……慣れるかなって」


「馬鹿ですか!?!?

慣れませんから!!!

商売とは安心を売る仕事です。

便利だから売れるわけではありません。

安心できるから、人は来るのです。」


しぶしぶエルディアはそれを言った。


「しょうがない。アンデッドは裏方。

マスコットは別に用意にする」


「まあ、そこが落としどころでしょうね。」


資料の端に、小さく書き加える。

アンデッド部門──バックヤード配属。


能力に問題はない。

見た目だけが問題だった。


──絶対、能力に問題はないのだ


──etc




──次の休み。


エルディアは、ぞろぞろと魔物を引きつれていた。

休みの日に魔物探索を実行したからだ。


探索は完了。


新規魔物47体を取得した。





すでに、慣れた様子で品評会の目をしているアスとカトレアも、だいぶ染まっている。


「言っときますけど、私の目は相当に厳しい。

覚悟することですわ。」


「この子にしようと思うの。

スライム──」


「採用。」


「はや。」


カトレアは真剣な顔で頷く。


「素晴らしいです。

テイムされ、訓練を受けたスライムは、多くの役割をこなす事ができます。

荷物運び。

掃除。

ゴミ処理まで」


「安いしね。」


「最後だけ夢がありませんが、それも理由の一つです。

評価もここに記しておきましょう。」


名称:スライム


維持費:1

人気度:7

労働適性:8

繁殖性:9

総合評価:A


──思ったより本格的だなとアスは思った。




品評会を進んだ。


アスは今更ながら思っていた。

一体どこで、どうやってこんな種類の魔物を集めてきたんだ。


エルディアは神妙そうな様子で腕を組んだ。


「なるほど。

やっぱり可愛い系が人気なんだね。」


「そういうことですわ。」


そして『それ』が姿を現した。

それは一見すると、女子だった。


カトレアの労働能力チェッカーが一瞬で答えをはじき出す。


人気度:95

維持費:12

労働適性:7

総合評価:????


※スライムの維持費を1とする。


ことこと。


歩いてきたのは、とても綺麗なお姉さんだった。

いや、『綺麗すぎた』。


アスが青い顔をして、カトレアは非常に嫌な予感がした。


「子供が寄ってくるくらい。

絵を描きたくなるくらい。

抱きつきたくなるくらい。

そういう子を用意した。」


カトレアは静かに目を閉じた。


「確かに、それならお客さんも怖がらない……

コンセプトの理論値に近い。

……で?その方は?」


「でしょ?考えたんだ。

サキュバスがいいかなって。」



……


…………


………………


「却下!!!!!」


えっ?



エルディアはあわあわ説明を始める。


「いや、でも接客能力は高いから。

愛想もいいし

可愛い。

うん。決定。

サキュバスをたくさん雇って、一大美女空間を繰り広げよーよ。」


「却下です!!

絶対却下ですから!!!!」


「なんで?」


「なんで、ではありません!

どこからつれてきたんですか!?!?

早く野に返して来さい!!!」


「ひどっ!!」


「ひどくありません!!

おとーさんがかえって来なくて、

おかーさんが激怒するでしょうが!!」


カトレアは勢いよく立ち上がった。


「ここは!

ファミリー向け商業施設ですの!!

子どもが遊び!

家族が買い物をして!

安心して利用する場所ですの!!

そこへサキュバスを立たせる商売人がどこにいますの!!

一発閉店です!!」


「優秀だよ?

リリ言ってた。」


「優秀な人材と、マスコットに向いている人材は別問題です!!

方向性が違うんです!!

いいですか。利益を算出しますから!!

住民トラブル発生率

家庭崩壊リスク

訴訟リスク

風紀委員会襲来確率を加味してください!!」


スライム

維持費:1

トラブル率:0.1%

利益:+5

期待値計算。年間利益:+1825


サキュバス

維持費:12

トラブル率:87%

利益:+20

期待値計算:年間利益:-4360


「むう……」


──しょうがないか

さすがに駄目そうだ。


「君は私の家の畑行きだ。

サキュバス君。

カトレアの許可が降りなかったから。

強く生きろよ。

畑にはカカシ(リッチ)がいるから、奴に面倒見てもらえ。」


しゅんとして彼女は消えた。



その日の議事録には、大きく一行だけ書き加えられた。


『サキュバス案――商業上の理由により全会一致で却下(主にカトレアが全力で反対)』



品評会は終わった。


「それにしても、よくここまでの魔物を集められましたわね?

テイムモンスターってなかなか見つからないのに。」


「いくつか、マスコット用の魔物をリリに言って用意してもらったからね。」


「……?

ちょっと待ってください。

なぜリリさんがそんなものを用意できるんですか?」


「あれ?言ってなかったっけ。

リリって魔族だから。」


「は……

え……?」


「じゃなきゃ森にあんなゴスロリがいるわけないでしょ。

さすがにみんな気づいてたよね?」



「アス。気づいてました?」


「いや、全然。

趣味合うなーってそれくらい」


「へー」


へーじゃないから。


言えや。






後日。王都圏。

土木工事中。


「オズワルド聞いて。

なんかサキュバスを大量雇用しようしたら、カトレアやアスに止められたの。

なんでかな。」


「それはさすがに拙者でも止めるでござるよ。

男性客しか来なくなるでござる。」


「……」


エルディアは少し考えた。


「だめかな?」


「人によるでござろうな。」


カタカタカタカタ。




さて、新規事業における予定地の土木工事だ。

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