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頭がおかしくてお金が欲しいイカれた精霊魔術師エルディア  作者: 無印のカレー
地区予選

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59話 新規事業

ぺら。


紙は薄いのに、妙に重たく感じた。



『エルディア殿へ。


提出された案件について、特許区上級審査会にて協議を行った。

結論として、当該技術は現時点において前例がなく、また社会への影響が極めて大きい。

ゆえに通常基準による審査は保留とする。


代替措置として、貴殿が魔術師として十分な実績を示した場合、

本件を正式登録する方針とする。


以上。

王都特許区。』



うへへへへ

手紙を見て笑うエルディアがいた。


「ねえ、なんかエルディアがすごく気持ち悪いんだけど」


「ね。」


「そんなことないって。

うへへへへ。」


だめだこりゃ。

カトレアは肩をすくめた。




「特許区の老人?

魔術の鬼と呼ばれた王宮魔術師が有名ですけど、

まさかそんなはずはないでしょーね。」


「話のわかるじいちゃんだったよ。

偉い人にしては珍しく、いちゃもんつけてこなかった。」


「あなたの中の貴族の存在が知れる発言ですわね。」


「まーね。」


「褒めてない。

それ褒めてないからね。エルディア。」



3人は学校近郊の森の湖へ移動していた。


循環型温熱結界スピリット・サーマル・ネットワーク》の軍事転用可能性を指摘された。

ならば、誰かが悪用する前に、製作者のエルディアとしてはやらないわけにはいかないだろう。


──エルディアは精霊魔術の知識は豊富ではあるが、実際に精霊魔術は行えない。


カトレアもそこまでも魔術制御能力はない。


──魔術を行うのは必然的にアスの役目だ。



「へえ。これがエルディア開発した精霊の杖なんだ。」


「そゆことだね。」


術式も説明して、アスは軽く杖を振り、挙動を確かめるように精霊を扱う。

杖の長さは腕一本ぶんほど。先端には宝石も、派手な飾りもない。


「うん。

行けそう。」



数10分後。


湖が凍った。




「…………」


エルディア達は、湖を見た。


湖だったものを見た。

正確には巨大な氷原だった。


「いやー凍ったねー

うん。完璧だ。

さすが私が開発した術式!!

でも、私は精霊適性がないから全く使えないんだけどね

なははー!!!」


完全に空回りしていた、


「…………エルディア。」


アスが呼ぶ。

エルディアは誤魔化しきれないと悟ったので観念した。


「はい。」


「何か言うことは。」


「……どうしよ。これ。

特許区のじいちゃんに言われたことが、まじのまじもんだった……

使い方によっては軍事転用可能に……」


エルディアは、顎に手を当てて考える。


確かにこれを発展させれば、十分軍事的な脅威になる……

でもそんなのリリクラスの精霊操作技術がないとできない。

そしてアスクラスの精霊適正があれば……十分、今のままでも殺戮兵器にできると証明……


あ……


──やば。


エルディアは露骨に目を逸らした。


「ねえ、なんで今って目を逸らしたの!?!?

ねえ!?!?

エルディア!!

なんで!?!?」


「わかったよ!?

セキュリティを考えれば良いんだよね!?」


「何!?セキュリティって!?!?」


「今のアスは、数値入力し放題の環境デバック出力マシン。

これを特定の権限を持つものしか効果を持たせられない、魔法共鳴回路に改良する。

そうすれば、常識的な出力になるから。」


「はやくして!!

ねえ、エルディア!!はやく!!!」


エルディアは、首をがくがく振られていた。


カトレアは、遠い目をしながら言った。


「しかし、エルディアは最低ですわね。

まさか誰よりも心優しいアスを、

まさか杖と簡単な術式一つで大量殺人が可能なマシーンにレベルアップさせてしまうなんて……」


「いやーーー!!!」


アスは、走って消えた。


「……流石に悪いことしたなー」


「そう思うなら、一刻も早く安全回路を組むことね。」


「はーい。」





──1週間後。


「エルディア。アスに口をきいてもらえたの?」


カトレアはエルディアを見た。

エルディアがアスに挨拶をしていた。


「アス。おはよー。」


「つーん」


エルディアが挨拶するもアスは完全にしかと。

この1週間、幾度となく繰り広げられた光景。


カトレアは察した。

失敗してる……


エルディアは、関係なしに強く頷いた。


「じゃあ気を取り直して仕事の話をしようよ。」


「気を取り直すな。

早くその安全回路を開発しなさいよ。

そしてアスと仲直りしなさい。

アスが機嫌悪いと、私の学校生活がやりづらいのよ。」


「まずうちのショッピングモールですが、大体不要宝石8が金貨20なります。

これ、利益効率で言ったらすごいからね。

社会が崩壊する。」


「いや。聞けや。

まあ、利益は普通です……

相場価格です。」


「普通ならね。

でも私たちには、《循環型温熱結界スピリット・サーマル・ネットワーク》があるから。

ね。

アス。」


「つーん。」


「いー加減、機嫌なおしてよー!!

話が進まないじゃん!!」


「つつーん」


カトレアは首を傾げた。

──その術式があるから、なんだっていうんですか?




さらに1週間後


この1週間は実に平和だった。


エルディアも大人しかったし、湖も凍っていない。


ショッピングモールの建物も不自然に増えていない。

エルディアが誰かとトラブって、エルディアが誰も落とし穴に落としていない。


──素晴らしい。


平和である。

カラン。


扉が開いた。


「おはようございます。アス。」


アスだった。

機嫌は悪くないようだ。

だが何やら様子がおかしい。

挙動不審というか。


ごと。

そして小箱を教室の机に置いた。


「……できちゃった……ねえカトレア……できちゃったんだけど……」


アスは箱を開け、中には透明な結晶。

光を受けて輝いている。

綺麗だった。


不自然なほど、とても綺麗だった。

カトレアは数秒眺めた。


「……何ですの。これ。」


「ダイヤモンド。」


「……耳が悪くなった気がするのですが」


「人工ダイヤモンドができちゃったの……」


「……」


がらがら

エルディアだ。


そして机の上のダイヤを見て一言。


「ちーす。

あ、できたんだ。」


「できたんだ、じゃありませんわーーーーー!!」


机が揺れて、教室中が振り向く。

エルディアは首を傾げていた。





生成期間 七日


成功率 八十七パーセント


推定原価 金貨三枚


市場価値 金貨百二十枚



炭素

高温高圧

人工ダイヤモンド


研究結果のデータを見て、わなわなと震えるカトレアに気づかず、エルディアはどやる。


「てゆう。

一応、不純物の混入率も調べてあるよ。

品質は天然品に近いから、魔術的な事にも十分運用できる。」


「……」


「カトレア?どったの?

腹痛?」


「ちょっと静かにしてください。

これ。世に出したら駄目ですわ。

世の中がぶっ壊れる……」


「え?そんなすごいんだ。

やっぱやめようかな、セキュリティ作るの。」


エルディアは言った。

次の瞬間だった。


ぐえっ。


首を絞められた。


「はやく作れ。」


「ぐええ。し、死ぬ。」


「エルディア。

あなた、自分が何を作ったか理解していますの?」


「人工ダイヤモンド。」


「私達の友達を、

モルモットにされる前に、

早くそのセキュリティを

作りなさい。」


「わ、わかったって。術式はもうできてる。あとは最終調整だけ。」



さらに1週間後。


術が発動しても、効果は出ない。


どこまでも湖だ。


「よ、よかった。もうあんな出力は出ない……

良かったよー」


アスは安心して泣いていた。


「いや、なんかごちゃごちゃやってるうちに、

もうオズワルドやカイゼリオンとかにお願いして王都での作業を始めてるんだけどさ。」


「……」


「私からのアスとカトレアのお願いごとに、全然辿り着けなくてさー」


──誰のせいだ!!


2人は思った。



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