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頭がおかしくてお金が欲しいイカれた精霊魔術師エルディア  作者: 無印のカレー
地区予選

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54話 選抜打ち合わせ

Aクラスにエルディアが現れた時、

そのクラスはざわついた。


静まるAクラス。

その中を切るように歩き、エルディアは『彼』の元へ。


颯爽と。


「アルト。

ちょっといい?。」


「お、おう。

すげえ度胸だなお前。

完全にアウェイなんだが……」


「昨日の敵は今日も友でしょ?

AクラスとEクラスは友になったのダ。」


「……」


アルトは真顔で首を傾げた。


──そーかな。


案の定というべきか、エルディアを呼び止める声があった。


「まちなさい。

アルト君は、私たちとこの後、課題をやるんです。

あなたに使う時間はないです。」


「あ、ミレイユさん。ちーす。

なんか用?」


「なんか用?

じゃありませんから!!

アルト君はこれから、私たちと用事があるんです!!」


「あ。一緒に行くってこと?

いーよ。」


「ひいいっ!!!

ひっつくな!!

去れ!!悪魔よ!!!

なんでこいつ、あれだけのことをしておいてこんなフレンドリーなの!?!?」


「ミレイユさんも、一緒に今度ご飯いこーよー」


「いや!!!

絶対にいや!!

きゃーー!!!

近寄らないで!!

誰かー!!」


「おい。ミレイユを助けろ!!」



身の危険を察したシェイドがエルディアの影からとび出してくる。


ぷるぷるぷるぷる


普通に退避した。

契約にないからだ。

『喧嘩は

ダメだよ。』


アルトは思った。

教室に来て数秒で阿鼻叫喚の渦を作るのはやめよーか。




学食。


「疲れた……で、なんなんだよ。」


「Aクラスって思ったより、騒がしいんだね。

うちのクラスよりうるさいや。」


「お前のせいだよ。

いつももっと静かだ。」


「アルトは魔王って知ってる?」


「御伽話に出てくるやつだろ。」


「リリのダンジョンに来た。」


「は……

はあ!?」


この手のことはこいつは冗談は言わない。

ありのままを言う。

『今日は雨だよ。』

『ご飯できたよ。」

ただ今回は、その内容が冗談みたいな内容だっただけだ。


「カミラさんから報告がなかった?」


「そういや数日前にすげえ魔力を感じだって言ってたな

地面が揺れるほどの……

まさかお前。」


「魔王に喧嘩売って、ぼこされた。」


「はああああ!?!?!?」


「でさ。

ちょっと厄介な事になって、手伝ってよ。」


「絶対ちょっとどころじゃねえだろ。


よく見ればボロボロだった。

首筋には紫色の痣。

腕には、回復魔術では消えきらなかったのか包帯がミイラのように無数にまかれていた。

高位の存在と真正面からぶつかった者だけが浴びるような魔力汚染。


「よくその前振りでちょっととか言えたなお前。

とりあえず場所を変えよう。」


「学校は?」


「早退でいいだろ。

俺から言っとく。」




リリのダンジョン。

第一階層のカフェ。


窓の外では学生や街人たちが行き交う中、エルディアは椅子に座っていた。


向かいでは、カミラが静かに回復魔術を展開する。

淡い緑色の光が、傷口をゆっくりと包み込んでいく。


「……傷思いのほか深いというか、回復魔術が効かないんだけど……

ねえ。エルディアちゃん馬鹿なんですか。

あなた馬鹿なんですか!?!?」


カミラがエルディアに浄化を試みるたび、緑色の光が黒い靄に弾かれていた。

さすが世界最強の魔王様の魔力汚染だ。


カミラはアルトの護衛であり、ウィンドリィ公爵家専属の魔術師。

回復魔術は専門ではないとはいえ、その魔術がまるで歯が立っていない。


「いや、ダンジョンに来客来たらそりゃ対応するでしょ。

すげえ強いリリみたいな感じだった。」


「忘れてるみたいだけど、リリ・ヴァルフェリアも大悪魔だからね!?!?」


「──とにかく、時間がない。

王都のダンジョンと、このリリのダンジョンを繋ぐ事になった。

すぐにでも王都ダンジョンの全体像の把握を,進めないとならない。

あと《循環型温熱結界スピリット・サーマル・ネットワーク》の特許をとらないとならない。


そんで金集め」


「さらにあとは、全国大会か……

おまえやる事多くねーか?

終わんのか?

それ?」


アルトは心の中で続けた。

(ぜったい無理じゃない?

あとツッコミどころが多すぎる。

あまりに。)



「明日はあれだっけ。

選抜大会メンバーの顔合わせ。」


「俺も同行できるようにしとくわ。

嫌な予感しかしねーし。

トラブんなよ?」


「大ジョーブだって。」


「不安しかねーよ。」


「今日は、久しぶりにカミラさんの焼肉定食食べたいなー

よろしく。」


「今それ言うんだ……

ウィンドリィ家に全部報告するからね……

どうすんのよこれ……」


「大変だね。」


ホントだよ!!!!

作るけど!!!




次の日。

学校選抜の集まり。

会議室へ足を踏み入れた瞬間だった。


「Eクラスの貴様に席はない。

出ていけ。

アルト・ウインドリィ。

なぜそのゴミを連れてきた。」


選抜チームの、顧問だ。


「選抜チームの顧問である私の判断に口を挟むな。

ここは選ばれた者だけが立つ場所だ。

努力では届かない者と、選ばれた者には決して越えられない壁がある。

Eクラスは、その壁の向こう側だ。

帰りなさい。」


アルトが一歩前へ出ようとした。


「エルディア、ここは俺が──」


「いーよ。大丈夫。」


エルディアは頷いた。


怒っているわけでもない。

困っているわけでもない。


ただ、いつもの調子で。


──ポチ。

──おいで。


会議室の壁に、蜘蛛の巣状の亀裂が走る

次の瞬間。


どがしゃーん。


壁の向こう側から、黒い巨体が静かに姿を現した。




漆黒の毛並み。

底知れない黄金の瞳。


──『黒霊暴食狼ドレッドウルフ・ノワール』。


教室の壁をぶち抜いた後は、ただ、そこにいるだけ。

唸らない。

吠えない。

牙も剥かない。


ただ静かに、エルディアの隣へ歩み寄る。

顧問の額から、一筋の汗が流れ落ちた。


エルディアは首をかしげる。


「お座り。」


ポチは小さく首を傾けると、そのまま会議室の床へ伏せた。


――ミシ。


床が悲鳴を上げる。


――メキ。


柱が軋む。


――ゴゴゴゴゴ……


教室全体が、ゆっくりと傾いた。


「…………」


「…………」


「…………」


エルディアは「あっ」という顔をした。


「ごめんポチ。

ここもろかったや。」


そして教室は破壊された。




崩落に巻き込まれ、顧問は白目をむいたまま崩れおちていた。

エルディアだけが、困ったように頭をかいた。


「ごめんね、先生。」


顧問は返事ができない。

気を失っていた。


エルディアは続ける。

もの悲し気に。


「私って、ランキング百五十位だからさ。

だから、先生は私の事を舐めたんだよね。大したことないって。

数字の向こうには血の通った人間がいるのに……

だからランキングって……意味なくないかな?

私は先生みたいな犠牲者を、もう出したくない。」


その表情は、どこまでも真剣だった。


「ランキングだけ見て相手を判断すると、こういうことになるんだ。

ほら。」


顧問は瓦礫の中で気絶している。


沈黙。


重い沈黙。


そして、その場にいた全員の心が一つになった。


(((((いや、お前がやったんだろ!!!!!!)))))


加害者なのに何を言ってるんだ、この女。

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