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頭がおかしくてお金が欲しいイカれた精霊魔術師エルディア  作者: 無印のカレー
全国選抜戦

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53話 話し合い2

「覚悟はきまっているというわけか。

ようこそ。魔なる領域へ。

歓迎するよ。ゴミムシ。

人間の脆弱なるその身で、よくぞその闇の領域までたどり着いて見せた」


それは戦いではない。

交渉の空気だった。

値踏みするような静かな興味があった。


エルディアは、ほうほうのていで頷く。


「どーも。」


魔王が手をひらりと動かす。

ぴかーっ。

大きな魔導画面が現れた。


固有空間を作成して、その空間をコアルームに反映したのだろう。


──規格外すぎる……


エルディアは一瞬で悟った。

魔王様ってチートなんだ。


努力とか才能とか、そういう話じゃない。

魔王様は、最初からルールの外にいた。

目の前の現実がそれを肯定している。


そこには、巨大な魔導ディスプレイ。

青白い光が空間を埋め尽くし、その中心には、幾重もの階層を持つ巨大なダンジョンが立体映像として映し出されている。

つまり、これがリリが管理していたダンジョンなのだろう。


「えーと。

なるほど。

これを理解しろと。

リリ。

ミノタウロス。とらえてきて。」


「何するっすか?」


「当然、飯。

長くなるわよ。

多分夜通し」


エルディアはもう一度、巨大なダンジョンを見る。

すでに笑えるくらいカオス。


現代アートかな?



「狩りに行くっす。」


リリは飛び出していった。


部屋に静寂が戻る。

エルディアが苦笑する。


「意外だったわ。

魔王様ってくそみたいな人間の話なんて絶対きかないと思ってた。」


「お前が死ぬまで、せいぜい数十年だろうからな。

その程度なら、実験期間としては瞬きにも等しい。

気まぐれも悪くはないだろう。使えないなら殺すが。

現場は人手不足。

異物空間は拡大。

監視役は逃亡。

今さら感情論をぶつけても利益はない。

貴様、人間を辞める気はないか?

歓迎するぞ」


エルディアは思わず笑う。


「やめてよ。

どこの管理職よ。」


「……不本意だがな。

好き勝手やる部下ばかりな以上、使える手駒を探していてな。

ギリギリで、命を拾ったな。ごみ虫。」


「……私は死地にいるんでしょ。

何度も言わなくてもわかってるわよ。」


「ふ。」


なんか変に気に入られてない?

別の意味で狙われてるよーな、





夜は更けていた。

リリは説明をがんばっていた。


「ここが 壊れてるっす。」


「ここもっす」


「ここはもっと大変っす。」


ポチ


ポチ


ポチ


魔導ディスプレイを慣れた様子で拡大と縮小を繰り返しながら、リリはダンジョン構造を説明する。


侵食地点。

境界の歪み。

魔力流。


エルディアが質問するとリリが答える。

魔王が補足する。

気付けば数時間。


そしてエルディアは資料を静かに机へ置いた。


「……なるほど。

これ。

無理。」


リリは勢いよく立ち上がる。


「ほらぁぁぁぁ!!

だから言ったじゃないっすか!!

これ無理なんすよ!!

私、一回壊れたっすからね!?」


エルディアは両手で頭を抱える。


「いやいやいや。

広すぎ。

管理対象、多すぎ。

巨大なダンジョンが100くらい集まったところに、毎日ダンジョンが追加してるって感じゃん!!!

しかも世界の 外からどんどん工事が はじまる。

そんなの管理できる人いる?」


魔王は優雅にティーカップで紅茶を飲んでいる。

肘ついて。


こいつ、ずっと紅茶飲んでんな。


つーかどっからそんな豪華な椅子もってきた。


「だから管理者を置いている。

その管理者も逃げたがな。」


「ぐっ……。」


リリにクリティカルヒットした。

効果は抜群だ。


エルディアは天井を見上げた。


「……。」


長いため息。


「やるしかないけど。」


もう一度、資料を見る。

もう一度、地図を見る。

もう一度、侵食範囲を見る。 


この規模を前にして、「無理だ」と言い続けても何も始まらない。

減りもしない。


魔王は静かに紅茶を飲む。

「順調に世界が滅びかけてるな。

良かったなゴミムシ。執念の見せどころだぞ。」


エルディアは額を押さえた。


「……。」


まー魔王様としても、ぶっちゃけ手づまりだったのだろう。


世界の危機。

資料見る限り予算無し。

人員無し。

情報共有なし。

属人化の極み!


大変だこりゃ。





数日後。


長かった休みが終わる。

エルディアは学園の門をくぐった。


「……密度の濃い休みだった。

……忙しい。」


魔王が直々に乗り込んできて。

世界の危機レベルの案件を抱えることになるとは、誰が予想しただろう。


エルディアは遠い目をした。


クソスパルタ魔王め。

容赦なく虐めやがって。


体中が痛い。

魔力酔いが治らん。



そしてエルディアは、職員室に呼ばれた。


「なんですか先生。

今日は眠いんで、すぐに帰って昼寝したら課題の研究したいんですけど。

終わらないんですけど。」


もちろん、世界救済の課題が。


教師は一枚の書類を取り出した。


「全国大会の選抜だ!

お前、学園代表に決まったぞ!!」


しん――


時間が止まる。

エルディアは書類を見た。


「……え?」


「おめでとう!

全国大会だ!

アーカム学園代表だ!

期待してるぞ!」


エルディアは、ゆっくり空を見上げた。

職員室の天井があった。


職員室だからだ。



「世界の危機」と「全国大会」を同時進行で抱えることになった。



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