49話 ダンジョン改良編2
──なんかもうDPが、姉御が作業を始まる前の量を大幅に越えている……
「なんで……。
とても貧乏だったじゃん……」
エルディアは当然のように答えた。
「第一階層を拡張したの。
森の入り口のアクセサリーショップのところまで。
お客が来て、買って帰る。
すると、撃退扱いでDPになる。」
「……」
「……ふう。あなたの入れた紅茶美味しいわね。」
「いや待つっす。
なんでナチュラルにくつろいでるっすか!?
それ、侵入者が普通にお買い物してるだけっすから!!
それに極悪ダンジョンじゃなかったんすか!?」
「極悪ダンジョンよ。」
「入口にアクセサリーショップあるっすから。
極悪ダンジョンっすよ?
なんでそんなファンシーなものが!?!?」
「馬鹿ね。リリ。
極悪ダンジョンだって、来訪者向けサービスは必要でしょう??」
そーかな!?
「いくら危ないものを作ったところで、見てくれないと意味がない。
いくら危なくて気になるものを作ったって、1人で悦に入ってちゃ単なる趣味じゃないの。」
エルディアは、続け様にダンジョンコアの魔導モニターを操作する。
《ダンジョン収支》
・アクセサリー売上
・飲食売上
・宿泊売上
・見学料
・素材買取
リリの顔色が消えた。
「姉御。
これダンジョンDP推移じゃなくてショッピングモールの決算報告っす。」
「え?
エルディアよくわかんない
子供だから。
16歳だもん。」
「DP計算機能を、勝手に経理会計ソフトに改造しないでもらえますか!?!?」
「やだ。リリったら、こわーい。
なんか、難しいこと言うのね!!」
こわーいじゃねー。
よくわかんないのそっちじゃーい。
彼女達が移動していた。
ダンジョンの入口。
──ショッピングモール
リリは唖然としていた。
いつの間に街に……
そこは、少し昔にウィンドリィ家がリリのために作った小さなカフェだった。
でも今は違う。
席が増え、窓も増え、お店も広くなっている。
「いらっしゃいませ!」
リリは周りを見渡す。
みんな笑顔だった。
「……」
「リリ。そこの席に座りましょーよ。
突っ立ってないで。」
ここも、大きくなってる……
紅茶とパンケーキが用意された。
「まあ、アクセサリーショップと食堂しかなかったところに、多くのプティックを作成したあなたのアイディアに感銘を受けたのよ。
あとはダンジョンコアにデザインをぶち込んで、建造物を一気に作成。
そんでアルトにいって、お店経営をお願いしてる。」
「お店経営ってことは、従業員にお給料払ってるんすね。」
「売り上げからね。
だから実質無料。」
「へ、へー
よく考えてる
確かに可愛いお店をお願いしましたけど。」
可愛いものをショッピングしたいという欲望に駆られて、ちょっとおねだりしただけのものが、ものすごい発展している……
エルディアは続ける
「そもそもDPは流通量で決まる。
それは人の流れであり、人の流れは金の流れを意味する。
金の流れは、必要性、ないしは興味や期待によって生まれる。
つまり需要があるところに金の流れは集まる。
ようは楽しいところに人は集まる!
つまり制するべきは経済!」
すでにリリは白い目をして聞き流していた。
哲学的すぎる!!
──ぜ、全然ダンジョンが、別物になっている……
第一層《癒し区画》
アクセサリーショップ。
食堂。
さらにそこに
宿泊施設。
温泉。
広場が追加されていた。
「ほら見て。
学生でありながら、街経営のタスクに追われる商売貴族の姿を。」
カトレアが鬼の形相で働いていた。
両手には仕事。
頭の上にも仕事。
目の前ににも仕事があった。
彼女のタスクはあまりに多い。
新たな店舗のアイディア出し
相談会
商品開発
──etc
アスもそこにはいた。
広場で炊き出しを行い、付近の村人に振る舞っているのだ。
祭り、集会、炊き出し――共同体の中心としての機能を持たせていくことで、さらなる人の流れを作る狙いがある。
その中心人物である。
「さむいひとはスープをどうぞ!!
あたたまっていってください。」
「ねえアス!?
この仕事量で炊き出しとか無理だと思いますけど!?!?」
「カトレア働いて。
お祭りの企画や、村の相談会の段取りもしないとならないんだから!!」
彼女達に隙はない。
ちゃんと給料は払っているし
──以下繰り返し。
つまり研究、実験、生産などの時間がかかる事はダンジョンでこなし、資金は別で稼ぐ。
そういう事なのだろう。
「極悪ダンジョンとは!?!?
何この人類共存型ダンジョン!!」
「経営側がブラックって意味ね。今んとこ」
「お友達よく付き合ってるっすね!?!?」
売上は全部渡してる。
第二層以降はまだ穴掘り中である。
作成予定の実験場における実験はカイゼンリオンに全ぶり予定である。
「そこはまだ、なんすね。
なんか安心しました。」
「まあ、オズワルドや私も学校あるしね。
全部リッチとかにやらせてもいいけど、これは自分の夢だし、自分の手でやりたいから。
あとはこの精霊シミュレーターが完成すれば、学生活がてら、魔術的な課題をなげておけば、形にしてくれるはずってわけ。」
リリは、とりあえずうなずいた。
完全に私物化してるけど、この私のダンジョンなんだけどなー
ピコン。
《DP+32》
ピコン。
《DP+18》
ピコン。
《DP+25》
エルディアは満足そうに頷いた。
「よし。」
「第二地下区画の掘削予算ができた。
当然全ツッパで!!」
「だからなんで収益出た瞬間に全部再投資するんすか!!!!」
うへへへ
姉御、完全にやばい顔になってるっす。
──みんながいつでもあったかい世界にしたい。
山も。
森も。
川も。
雪国でも。
どこにいても子供が眠れる夜を。
どこにいてもおばあさんが凍えない冬を
どこにいても誰かが『ただいま。』と言える世界を──
むにゃむにゃ。
絶対やってやるんだから……
「姉御。お疲れ様っす。
姉御は、これが成功したらどうするっすか?
研究終わりっすよね?」
エルディアはペンを持ったまま寝ていた。
目の前には
紙。
設計図。
計算式。
魔法陣。
──
「あ、寝てるっすか。
器用な寝方っすね。
起きてるかと思ったっす。」
そこには殴り書きのように次の計画が書かれていた
《広域精霊熱供給網構想》
《対象地域:北方全域》
《想定利用者:二百三十万人》
『村一つで成功しただけじゃ。
サンプル数が足りない。
もっとたくさんの人を救ってやる。
災厄を私に献上しろ
全部救ってやるから』
リリは引いた。
多分、そのうちサンプル欲しさに自分から災厄を起こすようになるだろう。
──この人、村を完璧に救いたすぎて、世界をインフラにしようとしてるっす。
そしてそのダンジョンに、1人の男が訪れた。
DP +300000。




