48話 ダンジョン改良編
必要な人に必要なものが届かないのが許せない。
魔術を再定義し、世界構造そのものを見直す必要があった。
強い魔法を作るのではなく
すごい 精霊をひとりじめするのではなく
みんなが使えて。
誰にも奪われなくて。
壊れてもすぐ直せる。
──そんな仕組み。
──《循環型温熱結界》
長いのでリリは、覚えるのをやめた。
──『《循環型温熱結界》普及計画』。
これを実現させるための、実験区画として。
またあらゆるフロチャートの圧縮手順として。
リリのダンジョンを最強最悪の極悪ダンジョン化を行う。
これは実益を兼ねていた。
──そしてエルディアの趣味であった。
エルディアは指先でダンジョンコアをなぞる。
薄い魔力のUIが浮かび上がる。
《ダンジョン・プロトコル:起動可能》
《環境条件入力:最強極悪ダンジョン》
リリは思った。
──あれ?
なんで姉御、私よりダンジョンコアを使いこなしてるっすか?
「……最速で検証するなら、現物調整よりモデルケースの方が絶対に早い。
ここに《精霊配置シミュレーター》を作成する。
すなわち実験区画。」
「へ、へー……」
──なにそれ!?!?
「まずは計画書を作成する。」
「け、計画書。」
「──そして、まず森を消す。」
「いや、姉御。
落ち着いて。
姉御の村の景観を損なうっす。
それにそれ、なんかやばすぎて村人住めなくなるっすよ!?」
「それは第二フェーズで解決する。」
「第一フェーズでぶっ壊して、第二フェーズで直すのやめるっす!!」
──次の日。
「基礎工事として、地下五百メートルまで掘削を行う。
これほどの土木工事はやはり、単体では不可能。なので彼を呼んでおいた。」
デュフフ……
「……」
闇属性の麒麟児がそこにはいた。
彼は友達がいないので、休日暇らしいので、呼んでおいただけだ。
眼鏡を光らせながらどやる。
「ふ。
この程度造作もないでござる。
エルディア殿。このオズワルド。
掘削作業のノルマ、容易くこなして見せましょう。」
──さすがはオズワルド。
「この私も、彼の闇属性適正の前には、さすがに後塵を拝するでしょうね……」
リリは紅茶を入れていた。
へー。
お友達であるオズワルド。
彼は言った。
「掘れぬなら
ほれるまでやるござる
お任せを。」
カタカタ言いながらスケルトンが土を運び出す。
その仕事量は、驚きのバケツ1、5杯/分。
──それが1000体
5m半径の円柱直線なら、たかが500mなど22時間でおわる計算になる!!
複数階層
通路
実験区画
倉庫
──etc
等も作成予定なので、その仕事量は直線の10倍~30倍ほどか。
ダンジョンには工事用オプションともいえる便利な機能が存在する。
崩落防止。
通路自動整形。
構造補強。
搬送短縮。
──エルディアは迷わなかった。
「買う」
ポチ。
《DP消費:500》
「買う」
ポチ。
《DP消費:1200》
「買う」
ポチ。
《DP消費:800》
リリはモニターに表示された残高を見る。
《DP残高:3》
「姉御。
DPが破産してるっす。」
「なんで!?!?」
そしてDPはそっこーで枯渇した。
1週間たった。
──《DP残高:10》
「増えてるっすね。」
「一日1DP。
工事完了まで必要なDPは約3万。
計算すると82年。
おかしい……理論上は完璧だったはずなのに!
──なぜ予算がない!?」
「そりゃ姉御が使ったからっす。」
ずずずず……
リリは紅茶をたしなんでいた。
さらに一週間後。
リリのダンジョンは、静かだった。
いつも通り、スケルトンが巡回し、ダンジョンコアが低く唸っている。
ピコン。
《DP+12》
ピコン。
《DP+7》
ピコン。
《DP+15》
リリは固まった。
「な、なんで!?!?
ええ!?!?
なんで!?!?
なんかもう姉御が作業を始まる前の量を大幅に越えているですけど……」
「いや、そりゃ収益モデルくらい組むでしょ。
逆に何言ってんのよ。
リリ……」
そーなの!?
──しらない間になんか
ダンジョンで経営学がはじまっている!?
こうしてエルディアの世界温暖化計画は、お金を稼ぐフェーズに突入した。




