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頭がおかしくてお金が欲しいイカれた精霊魔術師エルディア  作者: 無印のカレー
全国選抜戦

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47話 村の越冬問題

魔術学校に入る前からの長年の研究もあり、村の越冬問題の構造そのものは、すでにエルディアの中で定義づけていた。


冬は長く、寒い。

お腹もすくし、温めるための薪も運べない。

魔法を扱える人も足りない。


強い 魔法があれば

あるいはすごい 精霊がいれば解決する。


だけど強い人は少ないし、すごい才能もみんながもっているわけではない。


──だからそれでは村は救えない。



必要なもの⇒冬を越える熱・食料・安全

制約⇒燃料不足、魔力資源不足、輸送困難


──つまりエネルギー供給が追い付かないから、冬にいいようにやられる。



リリのダンジョン。

エルディアの家の近所の森。


「ただいまー。」


「あ、お帰りなさい姉御

姉御の家じゃないっすけどね。」


「冗談よ。冗談。

……ねえあなた……何それ?」


「え?

何がですか?」


そこは、一目みてわかる“異常”であった。


「なんでこんな可愛いもの万博博覧会になってんのよ!!」


「えへへ可愛いでしょ。

可愛いは正義っす。」


クッション

ランプ

ぬいぐるみ

毛玉精霊カイロ


「なんかダンジョンモンスターも可愛いの一杯いるよーな……」

「そーすか?」


光る茸型精霊(ぷるぷる動く)

毛玉みたいな火精霊(寝てる)

小さな結界獣(丸まってる)

謎のぬいぐるみ系召喚体(増殖中)


──すげえ、集めてる……

すげえ集めてんだけど。


頭が痛くなる量だった。


「そういえば森の入り口のお店、なんか街みたいになってたけど……」


「お願いしちゃったっす。

アルト氏に。」


リリ……、私の幼馴染を活用しすぎでしょ……





リリは地面に膝をつき、指先で円を描く。


「第一試行。循環結界、縮退モデル。」

「はいっす。」


小さな魔法陣。

だが目的は大規模干渉だ。

彼女たちは“全体を一気に温める”という発想を最初から捨てている。


代わりにやるのは、熱を、要素として切り刻む分解だ。


リリは、火精霊を呼び出す。

だが強力な個体ではない。

むしろ弱いものを三体。


「役割分離。」

「ほいほいっと。」


一体目は吸熱。

二体目は変換。

三体目は再放出。


精霊は一瞬だけ戸惑うように揺れた。

だがリリは契約を強制せず、誘導だけをして“この村がお前たちの仕事場だ”とだけ示す。


すると次の瞬間、地面の温度がわずかに動いて、冷えていた土がほんの数度だけ緩む。

だが同時に、別の場所が冷えている。


「駄目っすね。

熱の総量は維持されていますけど、分布が破綻してる感じっすね。」


「失敗ね。

次へ行くわ。やりなおしましょう。

悪いね。リリ。つき合わせちゃって。」


「いいっすよ。

働いた分、アルト氏にたかるんで。

第二試行はフィードバック構造追加でしたね。

十体召喚しまーす。」


「よろしく。」


「ぬいぐるみ一個くらいたかっていーかなー。

えへへ。」


それでいーんだ。




実験

失敗。


──実験

──失敗。


────実験

────失敗。


2人はあきらめず、辛抱強く、手を変え品を変えて続けた。


ある日。

ほんの少しだけ土が暖かくなった。


「……越冬は可能かもしれない……出力や、運用者の問題をなんとかすれば……」


「私ならよゆーっすけどね。」


「あなたみたいに100も200も精霊を同時運用出来りゃ、そりゃ苦労ないから。」


エルディアは、そして少しだけ視線を上げる。


村ではなく、その向こう。

この仕組みが完成したとき、必要になるのは魔術師ではない。


運用者だ。

そしてそれは魔術師でなくてもいい。


彼女はそこで初めて、この研究の本当の完成を理解する。


――これは魔術ではなく。

──環境の設計であり、インフラ整備だ。


「ふふ。」


「姉御なんか楽しい事あったすか?」


「ううん。なんでも。」


風が吹く。


インフラ整備も、捨てたものではない。




『強い火魔術を作る。』

『新しい精霊を召喚する。』

『高性能な結界を作る。」


これらは、一瞬で越冬問題を解決できる。

できるのだが。才能、血統、精霊の好悪が関わってくる。


つまり成果の属人依存の側面が強く、出来ない者は永遠で行う事ができない。


この問題を回避するため、弱い精霊を大量に召喚し、役割分担させることで、誰でも安定供給を実現する仕組み作りを行うわけだ。


一言いえば、精霊を“個体”ではなく“群体インフラ”と扱うことで、仕組みによる熱の安定共有を行う。



循環型温熱結界スピリット・サーマル・ネットワーク

村全体を覆う極々弱い結界を形成し、地熱・人体熱・魔力を回収し、精霊が“温度差”を媒介して再分配する。



村人が理解できる必要はないし、

維持が簡単だし、

壊れてもすぐに復旧できる。


──原理は、ほぼ完成。


「誰でも再起動できる簡易呪式」

「冬季だけ稼働する限定契約」

「燃料ではなく“魔石”による制御」


などに落とし込めれば、落とし込めさえできれば──


リリは気づいた。


「姉御……泣いてるんですか?」


「だめ。止まんない。

これなら……

これなら時間をかければ……きっと……」


「涙なんてあったんすね。」


空気よめー。




とにかく、これらを最速で実現させるためにはダンジョン機能を使うのが一番手っ取り早い。


ダンジョンとは、環境・魔力・生態系を“再現”できる、擬似世界生成装置。


言い換えれば現実を試す前に、世界を一個作れる機能。

モデルケース的な。




──あとは、やっぱ金が必要か。


特許システムがあるから、変にパクられて、魔術使用に金がかかるとかになったら、村が滅ぶ。


そのためには金が必要。

金の仕組みを整えて、それなりの金額を用意しないとならない。


それを聞いたリリは首を傾げた。


「金っすか?」


「まーね。

早めに特許取って制度化しないと。

誰でも使えるようにしたいの。

だから変にパクられて金稼ぎとか使われないようにしたい。

術式保護のために、その魔術を誰もが使える仕組みを整える。

才能だけが全てを決める世界の、仕組みそのものを変えてやる。


……村の越冬に関する部分だけ!!

そのために──」


──そのためにはリリのダンジョンを最強最悪なダンジョンに改良する!!!!



──リリは思った。


なんで?

なんでそうなったの?




そしてエルディアに聞こえない所で一言。


『いやー、今回の姉御はおもしろいなー……

予想もつかないや。』


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