44話 決着後2
──職員室。
扉は静かに開いた。
そして静寂は維持されなかった。
「え、ちょ、待っ──」
エルディアは、速攻で職員室に行って先生を拉致すると、引きずるように応接室へと連れ出す。
机と椅子。
落ち着いた照明。
先生をそこに座らせる。
そしてエルディアは逃げ道を塞ぐ位置へ。
そこはすでに「査問室」だった。
エルディアはにっこり聞いた。
「先生。
学年ランキングが私だけ下がった理由、説明してもらえる?」
先生もにっこり答えた。
「──いや、なんのことだか。」
ばきっ!!
机が壊れた。
エルディアが手をついていた部分。
刻印魔術。
夥しい魔力を彼女は纏っていた。
「えっ……?
もう一度伺ってもいいですか?
先生♪」
「……」
こわ。
とっても。
先生は観念した。
溜息をつく。
「お前のランキングは、ルールに則って推移した。
このルールは魔術で自動制御され、操作はできない。」
「クラス対抗戦は、100%ルールに則って勝ちましたけど?
私。」
「そのルールも問題にあがっていてな。
とはいえ、今回の大会については、改稿前のルールに則り、処理された。
そして既存の成績採点に従い0点だ。おまえ。
なぜなら撃破数0だから。
何度も言うが、決められたルールに従って。」
「……」
エルディアの眉がぴくりとも動かない。
はっきり言ってすげえ怖い。
「何度も言うが、これはルールだ。
感情でも評価でもなく、ルール。
決められた基準に従った結果だ。」
「洪水とか、森を燃やすのも、全部私がやったのに?」
「ああ……逆にそれで点数が入ると考える方がおかしいだろうが。」
「逆に言えば、そうでもしないと戦えなかったんだけど!
《魔力位相同期網》は!?
支援術式でしょ!!立派な!!」
「残念なことにルールにない
同期魔術を扱える学生がいると、学園は想定していない。
時代が早すぎたな。」
「《五芒領域・探索戦》における探索点は!?」
「おまえ土木工事ばっかやってただろうが。
ログ見たが。
地形改造だろうがそれ。
あと罠作り。
それに、その他競技も棄権だ。」
「落とし穴でドラゴン倒したじゃん!」
「落とし穴は評価点にないんだ。
おまえは後ろで指揮していただけ。
一切手を出していない。」
「いや,指揮してたじゃん!
指揮官の重要性は授業でも、先生たまに言うじゃん!」
「評価点項目にはない。
全てルール通りだ。」
「んなーー!!!!」
声が跳ねる。
いっぱい働いたが、仕事の名前が仕事表に一切ない。
『切り捨てられていた』。
ぐうのねも出ない程、綺麗に『切り捨てられている』。
大人の世界ではたまにある。
「みんなで勝ち取った勝利じゃん!!」
「悪いが、ここは《アーカム魔術学院》。
クラスに属していたから、ランキングが上がる
そんな甘い場所じゃないんだ。
得点内訳は出ている。」
「つ、つまりどういうこと!」
──つまり、他のEクラス面々がランチを割引で食べてる中で、なんということでしょう、私だけが……
私だけが……
満額ってこと……!?
「先生のばっきゃろーーー!!!!」
エルディアはダッシュで消えた。
台風のように去った後の応接室。
エルディアが怒りに任せて壊した机の前。
──納得してくれたか……
してないかもだが、なんとかそのうち矛をおさめてくれるだろう。
多分
悪い子ではない。
最強にいい子まである。
──学園長の指示だ。
今回の評価はかなり学園でも割れた。
──正直、控えめに言ってエルディアの点数は異常だった。
他の生徒が、年間を通して稼ぎ出すような点数を今回の対抗戦だけで叩き出してしまっていた。
──やりすぎたんだ。おまえ。
出る杭は打たれるんだ。
『その紙』を、先生は火魔術で燃やした。
『エルディアは、ルールに則って、学年ランキング1位が望ましい。』
それが通らなかったのは、学園長の指示だという。
大人には大人の事情がある。
食堂は、いつも少しだけ騒がしい。
Eクラス。
割引が聞いたご飯。
うまうま
もぐもぐ。
パンをほうばると、安いはずの食事がなぜか少しだけ勝利の味がした。
「ところでエルディア。
あなた、ランキングの方はどうだったの?」
「だ、ダメっ
カトレア!!」
「はい?」
アスの制止に、カトレアは少しだけ首を傾げた。
「ああん?半額のランチはうめーか!?!?」
カトレアは、何事もないようにスープを一口すする。
「普通ですわね
私って貴族なので、割引があってもなくても対して変わりませんけど。
とこで……なんであなたそんなにやさぐれた顔を……」
「ばっきゃろー!!!」
昼飯をかき込むとエルディアは、叩きつけるようにお代を払って消えた
残されたカトレアは、ぽかんとしたままスプーンを止める。
「な、何?
そんな変なこと聞きました?私」
「エルディアってランク下がっちゃったんだって。
150位に」
「へー。びりですわね。
……え?
そうなんですの。
それであんな泣いて
割引がない程度で心を取り乱すなんて、やっぱり平民は醜いですわね。」
「うわ。
今のカトレアって、エルディアばりにひど。」
「そもそも、気にすることもないですわ。
だって、学年ランキングなんて、そんなちんけな枠に収まる女じゃありませんもの。
今度みんなで奢ればいいでしょう?
そのうちまた馬鹿なこと言い出します。」
「うん。
計画しよっか。」
ばっきゃろー
走って彼女は消えた
悲しみが導くままに。
悲しい時は走るのが一番だ。




