43話 決着後。表彰式
静寂が落ちていた。
誰も動かなかった。
結界石の破片が、光の粒となって空へ舞い上がっていく。
――結界石は、静かにその役目を終え、それは宣告を示した。
『終わりました。』
そういっていた。
戦場は滅茶苦茶だった。
洪水の跡。
焼け落ちた森。
落とし穴だらけの地面。
骨だらけの惨状。
暴走したドラゴンゾンビ。
もはやその疑似オープンフィールドは競技会場の原型が残っていない。
その様子に、教師たちは顔を見合わせていた。
誰も口を開かない。いや、開けない。
口を開けば「現実」が確定する。
それでも彼は言った。
「……修復作業に、どれだけかかるんだろう、このフィールド」
問いへの答えは一つ。
彼らは、綺麗に合意していた。
――今はまだ、考えない。
だって考えると、お腹痛い。
そして。
実況席。
実況者である教師は震える手で魔導拡声器を握った。
何度も確認する。
審判。
判定結晶。
運営席。
全員が頷いた。
あるいは、事実を示している。
実況者は深呼吸をおこない、そして会場全体へそれを告げた。
「――勝者。Eクラスです。」
そして。爆発した。
「うおおおおおおおおおおおおおおお!!」
歓声。
悲鳴。
笑い声。
拍手。
全部が混ざった。
誰もが立ち上がる。
──あり得ない。
本当にあり得ないのだ。
Eクラスという存在は、最初から“自然発生した最下位”ではない。
貴族派閥。
王家直轄派。
魔導学院運営評議会。
それぞれが、別の思惑で“押し込んだ結果”の集積体という側面がある。
Aクラスもまた単なる上位クラスではない。
王家派・貴族派・学院中枢の“象徴戦力”。
それを破った手段は常軌を逸するとはいえ偶然ではない。
だが、ただ一つとして生半可な手段ではない。
洪水。
火災。
落とし穴。
狙撃。
ドラゴンゾンビ。
最後は混戦に団結して乗り込んで。
何一つ教科書に載っていない。
誰も予想でいない方法で。
見方によれば明らかに舐め腐った方法で。
みんなは思っていた。
『あれでいいの?』
「……これは、荒れるぞ」
誰かが、低く呟いた。
祝福は誰かにとっては敗北であり、それは否定を生むのだから。
オズワルドはその場に膝をついていた。
「勝った……。
勝ったでござるよ……」
もはや単なるキモデブ眼鏡であった。
泥まみれや泣き顔でさらにひどい。
だが本気で泣いていた。
でもとても嬉しそうだった。
アスは、その場に座り込む。
──もう立てない。
魔力も体力も空っぽだ。
カトレアも同じだった。
貴族としての姿勢を保とうとして、途中で諦めるように崩れた。
「信じられませんわ……。」
「うん。」
「本当に勝ちましたの?」
「たぶん。」
──表彰式
のまえに一悶着あった。
そして学園長は静かに言った。
──被害総額金貨10000枚
「修繕費はEクラス持ちにできるか?」
「無理です。」
その日、Eクラスは歴史に名を刻んだ。
栄光の勝者として。
そして学園史上最悪の被害額を叩き出したクラスとして。
後片付け。
まだ屍竜がぎゃあぎゃあやっている。
エルディアは、手早くアルトの服の裾を掴む。
「なんだよ。
お前らも早く帰れよ。
誰かが放ったドラゴンゾンビばっかりで危ないんだから。」
「魔力切れ。
送ってって
あと立てない
死んじゃう。」
「……」
学年7位。ミレイユは一歩下がったまま、エルディアを見ていた。
洪水。
山火事。
落とし穴。
そしてドラゴンゾンビ。
それら全てを“戦術”として成立させた存在。エルディア
(こんなの……人間じゃない)
理解したくないと思う先で『彼女』は、アルトと話していた。
「なー流石に、やりすぎだと思うんだが……」
「アルトみたいのが30人いるAクラスの方がずるいから。
常識的に考えてさー
ねー。ミレイユさんもそう思うでしょ?」
──え……“そう思うでしょ?”
──は……?常識的に考えて?
この状況で、なんで私に同意を求めるのか。
なぜこの女は、あの戦場を作り上げた張本人でありながら、まるで“被害者側”のような顔をしているのか。
ミレイユは身体が先に拒絶し、理性が追いつく前に、ラベルが貼っていた。
「ひいいっ!!
は、話しかけないで悪魔!!」
「なんもしないよー
もう終わったんだから」
「ひいいい!!
よるなー!!
アルト君!!
その悪魔をそのへんに捨ててきて!!
竜の近く!!なんなら口の中がいい!!」
「ミレイユ。それしたら流石にこいつも死んじゃうからさ」
「いやーー!!!!」
「これがスポーツマンシップに則った戦いの後かて育まれる絆か……
青春だね!!」
「おまえの頭を一回かち割ってやるよ。」
こんど
最終的にはAクラス
及び、観戦していた生徒及び、教師全員で後片付けに追われることになった。
──そしてクラスランキング表彰式。
優勝、Eクラス。
92回学年別クラス対抗戦始まって以来の快挙。
だが、表彰式に誰1人 Eクラスの姿はない。
全員病院送りであった。
異様な雰囲気の中でその表彰式は完遂された。
──そしてランキング。
魔導ディスプレイ前。
内部処理は一つの結論に至ってた。
それは嘲笑でもなく、ミスでもない。
Eクラスのランキング推移。
オズワルド 47位 100位 UP
カイゼリオン 68位 80位 UP
アス 100位 50UP
カトレア 92位 30位UP
他生徒。平均20位UP
俄かに沸き立つEクラス達
沈む他クラス達。
──エルディア 150位 29位ランクダウン!!
「ね、ねえこれどういうこと!?!?!?
これ、絶対間違ってるーー!!」
エルディアはそっこーでクレーム入れた。
だがディスプレイは答えない。
機械はいつも正直だから。




