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頭がおかしくてお金が欲しいイカれた精霊魔術師エルディア  作者: 無印のカレー
クラス対抗戦

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42/73

41話 立ちふさがるもの

それが始まりだった。


『欠陥姫』と呼ばれたアスがまず先行した。


「みんな、行くよ!

道は私が作る!!」


その瞬間、膨大な魔力が解放された。


この戦いで誰もが知った。

彼女は『欠陥品』なんかじゃない。




「全軍前進。」


静かな声で数百のスケルトンが動き出す。

骨の波。

死者の軍勢。


今大会で、最もその評価を覆した男。オズワルド

まさに闇の如く深淵を作り出す闇属性の麒麟児としての、最後の炎だ。



カトレア。


「まったく……。

「最後まで手がかかりますわね!!」


彼女は戦いが得意ではない事は明らかだった。

だけど、多くの者が彼女のその声を張り上げる姿に励まされた。


支援術式。

防御術式。

だけど、その響く声が誰よりも全力で仲間を支えていた。



Eクラス全員が駆ける。


一直線に。

光の結界へ。



──Aクラスも迎え撃つ。


学年ランキング2位。

グランツ・バルドガルディオン

《崩拳の魔導士》

「ようやく、姿を見せたなEクラス!!!」

声とともに巨躯が前へ踏み出す。


学年ランキング7位。

ミレイユ・ラグナエルロード

「絶対に守り切る。」

金色の瞳が細められる。

彼女もまた光の結界石を守るために覚悟を決めていた。


魔術が飛ぶ。

衝撃が大地を揺らす。


だが。



エルディアはめざとく気づく。


戦場中央。

暴れていた十体のドラゴンゾンビ。


そのうち一体。


「よし。

あいつにしよう。」


「何がよしなんですの!?」


エルディアは指を差した。


そこには暴れるドラゴンゾンビ達。

その直線上に、AクラスとEクラスの混戦模様だ。


カトレアは数秒考え、

そして悟った。


「……。」


「……。」


「フレンドリーファイアーで勝とうしてますの!?!?

死人がでますわよ!!」


エルディアは真顔で答えた。

「戦場では、偶然もまた戦力だから。」


「絶対違う!!

意図してますから!!!

偶然じゃありません!!」


「でももう、シェイドがちょっかいかけてる。」


「最悪だこの人!!!

ばかああああ!!!!!」



『あっちだよ

ろうどうせよ

はたらけ』


そして次の瞬間。


ドラゴンゾンビが咆哮した。


戦場の誰もが振り返ると同時に世界が白く染まった。



《竜の咆哮ドラゴンズロア》。


その生なるものへと怨嗟と膨大な魔力に身を任せ、戦場を切り裂く光が放たれた。


轟音とともに音すら置去りにした白い奔流。

それがただ一直線に森を抉り取り、消し飛ばす。


光の結界へ向かって。




観客席。


教師席も。

実況席も。

審判も。

全員。

ただ見ていた。


巨大な光の柱が、ステージを両断するその光景を。



ビームの射線上にいたAクラス。

そしてEクラスも合わせて全力で逃げていた。


「避けろおおおおおお!!」

「ドラゴンが撃ったああああ!!」

「誰だヘイト買ったの!?決戦の最中なんだけど!!!」

「エルディアだ!!」

「知ってる!!」


ミレイユは結界を最大出力にしていた。


逃げ遅れていたからだ。

結界石を思い、わずかに反応が遅れてしまった。


光属性の魔力を限界まで注ぎ込む。

逃げ遅れたなら、結界石を守る。

守らなければ負ける。


だがミレイユは思った。


見上げた瞬間に理解した。


──これは無理かもー


真正面から災害そのものが飛んできている。

防御術をまるごと崩壊させる

対抗魔術などこの世に存在しない

ただの天罰の光。


「うわっ。死んじゃうかも……。」


そして。

《竜の咆哮ドラゴンズロア》がミレイユが展開した結界に直撃した。


世界が白く染まる。

誰も見えない

誰も聞こえない。


数秒。


いや永遠にも思える時間。

やがて。

光が消え煙が晴れる。

戦場の中央。

そこには。


巨大な一直線の更地ができていた。

森が消えている。

落とし穴も消え

炎も消え

地形ごと消え


そして、ミレイユの手にあった結界石は。

地面に半分埋まったまま、ひび割れていた。


Aクラスの結界石。

壊れていない。


あと少し。

本当にあと少し。


Aクラスの誰かが震える声で言った。


「……耐えた。」


光属性フィールド。


学年7位。


最後の意地だった。

その瞬間。

戦場の全員がミレイユを見た。


すげぇ。

全員が本気で思った。

ドラゴンゾンビの災害ビームを受けてなお残った。




──直後に、ミレイユの後ろから声がした。


「お疲れさま。

チェック。」


そこには煤だらけで、泥だらけのボロボロのエルディア。


「え。」


ミレイユは固まった。

エルディアはにっこり笑う。

その脇にはシェイドがうかんでいた 。


「ビームでみんな注意が逸れてたから。『イビルゲート』──つまり影空間を利用した疑似転移。

最後にものをいうのは執念だよ。Aクラス諸君!!」


「だめ!!!!!」


Eクラス最後の突撃は、英雄譚でも決戦魔法でもなく、影空間から現れたエルディアによる結界石へのダイレクトアタックで締めくくられようとしていた。



──エルディアのダークアロー。


誰もが終わったと思った。

その黒い闇の光は風に阻まれる。


「ちっ──

姿を見せないと思ったら──

ずっと監視してたんだ!!

この変態アルト!!」


「まあな。

絶対来ると読んでたよ。

やっぱそうくるよな。」


声がした。

静かな声だった。

だが。


それはエルディアの足が止まるには十分すぎた。


結界石の目前。

影空間から這い出した先。

そこに一人の男が立ち塞がっていた。


アルト。


煤一つついていない。

戦場のど真ん中だというのに、不思議とそこだけ空気が違った。

まるで最初から待っていたように。


──いや。実際待っていたのだろう。

エルディアを。



誰もがここまでやるとは思わなかった中で、アルトはずっと信じていた。


エルディアはここまでくる。

絶対に。


──俺はずっと見てきたんだ

こいつのあきらめないその姿を。


こんな程度で、止まるかよ。


お前が。


「エルディア。ここまでだ。」


アルトは笑った。


「決めようぜ。」



学年ランキング3位。

アルト・ウインドリィ



最後の壁として、彼が立ちふさがっていた。

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