36話 アシュレイン・エーテルヴァイス
長くなったんで分けました。
濁流は戦場を飲み込みながら駆け抜けていた。
小川だった場所は、もはや川ですらない。
ただの全てを飲み込む濁流であり災害だった。
EクラスもAクラスも関係なく流されている。
スケルトンなど特に酷い。
流木に引っかかったり、岩にぶつかったりしながら下流へ消えていく。
「拙者の戦力がああああああ!!」
オズワルドが叫んだ。
「エルディアからの伝言を伝えますわ!!」
カトレアは親指を立てた。
「『ダイジョブ。骨だから。』」
「全然大丈夫じゃないでござる!!!!」
実況席。
教師達が静まり返っていた。
「……。」
「……。」
「……。」
実況が震える声で言う。
「えー……Eクラス。
地形そのものを変更しました。」
解説が頭を抱える。
「大結界戦の歴史でもかなり珍しいですね。」
完全に固まっていた。
だが心の中では盛大に思っていた。
──おい。ここまでやるのか……
観客。
「穴だけじゃねーのかよ。」
「あいつら川をせきとめたのかよ。」
悪魔かよ……
――ゴゥ……。
背後で音がした。
濁流に翻弄されながらも、徒たちは反射的に振り返る。
そして誰もが息を呑んだ。
そこには、白く泡立つ水飛沫をまといながら、上流で堰き止めていたはずの丸太が流れてきていた。
エルディアによる第3堰である。
水、
土砂。
そして土木。
しかも真っ直ぐ大結界クラス対抗戦を切り裂くように。
森が牙をむくように。
「くっ!?
丸太だと!?!?
エルディア……これも貴様の仕業か……」
「身軽なのがうりだよね。無色の魔術師君。
さあ、高速アスレチックだ。
私の用意したエンターテイメントを楽しんでよ!!」
「破壊者か、貴様!!」
「味方からも最近よく言われるわ!!」
丸太は勢いよく突っ込んできた。
「避けろおおおおお!!」
絶叫を合図に全員が飛び散る。
「きゃあああっ!?」
「うわあああああ!!」
ゴォォォォォッ!!
暴走する獣の群れのように、丸太の群れが戦場を駆け抜ける。
「アシュレイン!!
そっち一本いったぞ!!」
悲鳴、回避、流転の中で丸太の一本はアシュレインへ向かって一直線に飛んでいった。
アシュレインは身体が流れるように回転し、無言で回避した。
紙一重でスタイリッシュにかわす完璧な動き。
あまりに美しい軌道。
それを見た生徒や観客が思わず漏らす。
「今のやば……見た!?」
「……完全に読み切った……」
「なんだあの動き……!」
さすが学年十五位。
その実力は伊達ではない。
避けた先。
そこに偶然、流されたスケルトンがいた。
さらに偶然、そのスケルトンがアシュレインの足首を掴んだ。
さらに偶然、そのスケルトンがバランスを崩した。
さらに偶然、絶妙な位置に別の丸太が来た。
ゴン。
直撃。
圧倒的ピタゴラスイッチ的な直撃。
戦場が静まった。
全員が何かが終わった事を理解した。
水飛沫の中から、アシュレインがゆっくりと立ち上がる。
銀髪は濡れ、額から雫が落ちていた。
無表情。
額に青筋が浮いている。
「……
今までの人生で、ここまでコケにされたのははじめてだよ……
お前はここで絶対に屠る。
覚悟するんだな……」
そしてエルディアは小声で呟いた。
──おもしろ。この人。
勝手に自爆したのに!!




