30話 竜葬のオズワルド
偉大なる闇属性魔術師。
《竜葬》のオズワルド。
伝説的な魔術師にして革命家。
彼は後の世でそう呼ばれた。
その彼は語る。
あの時、拙者達は確かに走っていたんだ。
かけがえのない刻の中を、抗い難い熱に浮かされて
Eクラスがトップ。
最底辺《Eクラス》が、個人ランキング首位。
──ありえてはいけない。
実況席ですら言葉を失っていた。
『こ、個人ランキング暫定一位……!
Eクラス所属……オズワルド選手です!!』
次の瞬間、Eクラスの観客席が弾けた。
「やったあああああああああああ!!」
「オズワルド貴様ああああああ!!」
「見たかこのやろおぁあああ!!」
「学食割引だああああああ!!」
もはや歓声ではなく、革命。
負け続けた者達が、初めて勝った時にしか出ない、理性を焼き切った熱狂。
だがその熱狂の、中心で──当のEクラス生徒達は、全員ちょっと青ざめていた。
(……やばい)
(これ引いたら死ぬやつでは?)
(今さら“間違いでした”とか無理だよね?)
(乗るしかない……! このビッグウェーブに……!!)
誰もが理解していた。
──ここで日和ったら終わる。
なぜなら相手は貴族社会。
勝者だけが正しい世界。
ならば──。
『勝っている間だけはこちらが正義だ。』
『オズワルド!!』
『オズワルド!!』
『オズワルドォォ!!!』
コールは一つの信仰のように広がっていく。
そしてその光景を見ながら、他クラスの生徒たちは完全に固まっていた。
「……誰?」
「オズワルドって……誰?」
「Eクラスにそんなやついたか?」
ある者は名簿をめくり、ある者は記憶を探り、ある者は現実を疑った。
──誰だ。
オズワルドさんって
Eクラスの観客席の最奥。
学園ヒエラルキーの最下層に位置するはずの空間にして、今や世界の注目が最も集まる場所。
その中心に彼はいた。
控え目にいって、単なる眼鏡デブ。
「デュフフ、
こんなものでござるよ!
拙者。
エルディアどのに心の目を開かされたのでござるよ。」
オズワルドは、静かにそう語る。
誰に向けるでもなく。
だが確実に、世界のどこかに向けて。
眼鏡。
脂汗。
猫背。
妙に早口。
──あれが、オズワルド・クロスノヴァ=ヴァレンシュタイン。
「あれがオズワルド……?」
「うそだろ……」
「単なるキモメガネデブじゃん……」
ランキングは現実。
結果だけは、真実。
学年1位。
一時的なものだとしてもそれは、「天才」と呼ばれる領域。
「くっ……拙者、ついに覚醒してしまったでござるか……」
「やめろその顔で覚醒すな」
「うるせえデブ」
「調子のんなデブ!!」
「死ね!!!」
「そんなああ」
後の闇属性界の、麒麟児。
その彼が、なぜそこまで闇との親和性を持つのか。
その理由は、驚くほど単純だった。
『こ、この緊張感のないやり取りはなんなんでしょうかァァ!?』
華麗なる級友達の手のひら返しに、悲鳴と笑いが同時に飛び交う。
実況席ですら耐えきれなかった。
答えは示されている。
そう!!
彼はネクラだった!!!!!
つまりオズワルドはネクラすぎた結果、闇属性の理想形になってしまっていた。
人と話さない
部屋が暗い
常に考え事をしている
感情表現が遅い
外界刺激を嫌う
その全てが、奇跡的に闇属性と噛み合ってしまったのだ。
故に生まれた、闇属性界の怪物。
Eクラスのスケルトンは、全て彼が用意した。
その点数をここに記しておく。
◼️オズワルド点数内訳。
第1種目 500(アンデッド支援により、Eクラス内の探索点の半分を彼が獲得。)
第2~4種目 0
第5種目 1500(アンデッド支援により、Eクラス内の討伐点数の半分を彼が獲得。)
最終競技競技:《大結界クラス対抗戦》
《FINAL EVENT》
《大結界クラス対抗トーナメント》
Eクラス入場
「来た……」
「……Eクラス……」
「あれがオズワルド……」
もはや“厄介者の集まり”ではない。
“既存の攻略を嵐のように薙ぎ払う破壊者”。
──間違いなく今大会における台風の目。
現状点数は、今をときめくトップ。
だが第2~4種目において低得点が響き、最終競技を残しているため勝敗はいまだ決定していない。
歓声の代わりに代わりに落ちるのは、ブーイングと、ざわめきと、警戒。
強いのは事実。
なんで勝ってるのか説明できない。
「寄せ集めだろ……」
「なんであれで勝てる?」
動きは相変わらずバラバラ。
戦闘集団というより、烏合の衆。
エルディアは軽く伸びをする。
「じゃ、ぶち壊そうか。
みんなの学食の割引のためにね。
……それと私の個人的な事情のために。」
「拙者。エルディアどのの崇高な志は理解はしておりませぬが、やるでござる。」
学年1位であるオズワルドも控える。
エルディアは思った。
いや、流石にそれはわかれよ。てめー。
おめーも、割引の効いた昼飯食いてーだろ




