2話 エルディア
エルディア。
──再度、精霊契約の儀式。
静寂の中で彼女は祈りの姿を取る。
年頃の村娘らしい顔立ちではある。
祝福の空気の中で村人たちは期待していた。
この少女──エルディアが、どの精霊に選ばれるのかを。
栗色の髪が揺れる。
素朴な村娘の装い。
その美しい目が、精霊を捉えた。
──見えた。
(微細な風の揺らぎ!!
火の気配!!!
水の反射!!!!)
うおおお!!!!
そして精霊は逃げた。
「ぐぬぬぬぬ!!!」
地団太をふむ。
今日も駄目だったか。
村人たちは、はけていた。
精霊との契約がどうしてもうまくいかない。
何度やっても、寝ても覚めても、
禿げても
アルトは肩をすくめていた。
「お前、心がマジで汚れてるんだな。
普通、下級精霊くらい、ちょっと魔術使えればどうとでもなるからな。
逃げたからって投石しようとすんな!!
マジで寄り付かなくなるぞ!!」
「むう……」
石をしまう。
「いつかやってやる……」
「やるな。」
彼の周りには、ふよふよ下級精霊が舞っていた。
アルトは精霊魔術師としての才覚に溢れていた。
精霊との親和率が高い証拠だ。
「いいもん。
そのうちなんとかなるから。」
「無理じゃねえかなー……
そもそも精霊自体がお前に近寄らねえし。」
「いいし
そのうち捕らえて、強引にいうこと聞かすもん。」
「そういうとこだぞ。絶対……
で、今日は何やるんだ?
ダンジョンアタックか?」
すでに何度か二人はともに、ダンジョンアタックをしていた。
エルディアはサーチアンドデストロイを地でいくので、同行したアルトが引きつったのはまた別の話だ。
「それもあるけど今日は、むしろ私に懐く精霊を作る。
こんな話があるの。
ダンジョンマスターの少女とスライムの話なんだけどね。」
エルディアは話した。
『ダンジョンマスターの少女は、本来“効率”だけで魔物を作るべきだった。
だが初心者の少女は、最初に作ったスライムに名前をつけて、毎日話しかけていた。
戦闘力も低く、侵入者にすぐ倒される。
しかしダンジョン崩壊の日、最後まで瓦礫を支えていたのはそのスライムだった。
いずれダンジョンは、踏破された。
だけどそのスライムだけは、ダンジョンが踏破され、マスターが滅んだあとも毎朝ダンジョン入口を掃除して、マスター待ち続けた。』
「つまり、犬や猫と同じだよ。
精霊も生みの親に懐くでしょ。
それ。
つまり精霊を作成すれば、その精霊は絶対に逆らわない。
契約もできる。」
「いや、どこに参考になる点が?」
「飼い主が死んでもなお、忠誠を保って命令をこなし続けるところ。」
アルトは普通に引いた。
うわー……
「結構感動的な話だと思うんだが……クソみたいな事しか学ばないのな……
おまえ……」
エルディアは嬉しそうに怪しい魔導書を見せてきた。
──はいはい。それ読んだのね。
──ダンジョン
巨大な狼型獣魔。
毛皮は裂け、魔力が血管のように発光している。
獣魔が、エルディアへ飛びかかった。
「グルァアアアアッ!!」
「うわぁ!危なっ」
ドゴォッ!!
エルディアが吹き飛ぶ。
壁が砕けた。
「エルディア!!」
「痛ったぁぁぁ!!!
いやほら見てよ!!
普通に噛まれた!!」
彼女は立ち上がる。
服は破れていない。刻印魔術の防御が自動発動している。
つまり無傷だ。
誰もが“今の一撃で終わった”と思った距離で、
当の本人だけがいつも通り会話していた。
巨狼が再び唸り、とびかかる。
風となった一撃がエルディアへ直撃する。
次は確実に致命傷――
そう思われたその瞬間、エルディアは言った。
「よし。君は今からポチだ!!」
沈黙。
「は?」
「ほらお座り!!」
ドゴオ!!!
狼型魔物は潰れた。
「よし、契約成立ね」
君は今からポチだ
ほら骨!!」
エルディアは魔物のテイムを始めた。
アルトは思っていた。
──世の中ってままなならいもんだ。
なぜエルディアは、精霊魔術でお金を稼ぐなんてことになってしまったのだろう。
精霊術は、普通は心を通わせて契約するものだ
慈愛、共鳴、精神同調……
そして一切それがないエルディアは、精霊にはとにかく嫌われる。
(それ以外は全部、トップレベル)
「ねー見て。
アルト。
ポチが進化した!」
「なんでだよ!!!
うわあ……すごく大きい。」
「くすぐったいよー」」
はっはっはっは
エルディアは狼をゲットした。




