1話 精霊契約失敗
お金は最高だ。
お金があればなんでもできる。
愛も地位も友情も、お金があれば買える。
村も貧しく無くなる。
冬の食料不足
薪不足
薬代不足──etc
よって彼女は、精霊魔術師を目指し、勉強を始めた。
彼女の名はエルディア。
どこにでもいる村の少女A。
──ファーストターン。
精霊契約。
光は確かに降りていた。
どこか冷たい、均一な光。
精霊側からの、観測。
静寂が生まれる。
とはいえそれは“失敗”の静寂ではなかった。
──「観測が続いている。」のだから
エルディアは契約者として、申し分のない外見をしていた。
むしろ過剰なほど“適合していた”。
その立ち姿そのものが、彼女の肉体に刻まれた刻印の輝きと呼応している。
風の精霊を想起させる揺らぎが、彼女の輪郭をなぞっていた。
私のチャートは完璧。
さあ、精霊よ。
私の前に跪いて働け
そして彼女は、誰もが簡単に通るはずの精霊との契約の儀式で、盛大に失敗した。
少女は首を傾げた。
──本来なら、そこで立ち止まるはずだった。
精霊に拒絶された魔術師は、己を省みる経過をえて力ではなく心を磨く。
自然への敬意を知り、対話の術を学び直す。
それが「正しい敗北」であり、「美しい再起」。
だが、エルディアは違った。
──なるほど。
(精霊は“自然への理解度”で契約者を評価しているってわけね!!!!)
その美しい姿のままに、彼女はより大きな魔力とサンプル数を求めてダンジョンアタックを開始する。
何かに導かれるままに。
彼女は頭がおかしかった
残念ガールだったのだ。
ある日、幼馴染のアルトがエルディアに聞いた。
「お前さあ、なんでそんな生活してんの?」
「何が?」
「いや、何がって、そんな傷だらけでよ。」
「え……?刻印のこと?
いや、好きでやってるだけだけど。」
「そ、そうなんだ。」
事実だった。
別にエルディアは悩んでるというわけではない。
子供ながらの、浅はかな思考で考えただけだ。
暴力的とも言える魔力で精霊の精神状態を麻痺させ、その隙に強引に契約を取ってやると。
ちょっと指先が焼けても気にしないし、魔力回路が裂けて吐血しても記録を取るし、睡眠は並列演算の練習にすぎない。
よくある。
「次から俺もダンジョンに行くよ。
心配だし。」
「え。いーよ。
だってアルト虚弱だもん。
これしないと戦えないでしょ。」
刺青を見せるエルディアにアルトは、普通に頬を引き攣らせた。
「それは嫌だ。」
「わがまま言わないでよアルト
私たち子供なんだから。」
「いや、絶対嫌だ。
待て。近寄るな
アー――っ!!!」
そしてアルトはそれを刻まれた。
彼は泣き叫んだという。




