表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
頭がおかしくてお金が欲しいイカれた精霊魔術師エルディア  作者: 無印のカレー
お金儲けしたい

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
2/70

1話 精霊契約失敗

お金は最高だ。

お金があればなんでもできる。

愛も地位も友情も、お金があれば買える。


村も貧しく無くなる。


冬の食料不足

薪不足

薬代不足──etc


よって彼女は、精霊魔術師を目指し、勉強を始めた。



彼女の名はエルディア。


どこにでもいる村の少女A。




――春。


雪解け水が村の石畳を濡らし、長い冬の終わりを告げる頃。

エルディアは今日も、壊れかけた石段を登っていた。


「……寒。」


吐いた息は白い。

指先も赤い。

靴は安物で、ちょっと水が染みる。


彼女は、その儀式場へ向かって歩く。


村の誰しもがそうしてきた。

村の誰しもが。

皆が通ってきたように崩れた石段を登り、風の中で、村のみんなから教わった歌を彼女も口ずさむ。


毎年、村のみんなで掃除を行い、儀式場と一緒に手入れをしてきた。その道を。


落ち葉を払い、

苔を削り、

崩れた石を直す。


エルディアも毎年掃除した、その道を。




──ファーストターン。

精霊契約。


光は確かに降りていた。

どこか冷たい、均一な光。

精霊側からの、観測。


静寂が生まれる。


──私のチャートは完璧。


《祈りの言葉ブレスワード


『さあ、精霊よ。

私の前に跪いて働け。


これで開かれる国家資格への道。

夢にまで見た高給取り。

都市部では超人気職。


上位資格持ちは貴族からスカウトされ、王都勤務なら年収は家が建つレベル。


その栄光の為に


わたしこそが勝ち組となるために


──さあ、跪きなさい。』



そして彼女は、精霊との契約に盛大に失敗した。




精霊たちが散っていく。


精霊とは“概念生命”。


『深淵がいるぞォォォ!!』

『いやあああああ!!」

『目を合わせるな!!働かされるぞ!!』


『この資本主義の化け物が!!!』


『俗世!!

俗世!!

俗世ェェェ!!』



え──?


そして儀式場は爆発した。




村長

近所のおじさん。おばさん。

村の子供達も、全員が沈黙していた。


儀式場の中央には、巨大なクレーターが出来ている。


春の風が吹く。

“災害現場”の中央で、エルディアは首を傾げた。


──あれ?おかしいな。


精霊ごとの個体差に関する運用方法は十分に策定したはずなのに。


接続形式が違うのかなー

でも、精霊側の自由意思に依存してる時点で、システムとして脆弱だし……


村人の一人が震える声で言う。


「エルディア……

お、お前……精霊に何を願った……?」


「何って……

普通に、“安定雇用”と“長期契約”と“福利厚生”を……」


その場にいた最後の精霊が、泣きながら逃げるように消えた。




この日の為に、エルディアは必死に努力していた。


精霊学。

契約術式。

レベル上げ。

熟練度上げ。

──etc


精霊が欲しい。

理由は簡単だ。


『金になるから。』


稼げば冬に飢えない。

井戸だって

道だって

薬も


だから欲しかった。


『ただそれだけだ。』



契約したいほど精霊が好きなわけじゃない。

自然が好きなわけでも。

世界を愛しているわけでもない。


むしろ寒いし。

雪は邪魔だし。

冬は嫌いだ。

自然は思い通りにならない。


それでも。

精霊がいれば村は豊かになる。



村の儀式場が爆発四散してから三日後。

彼女は村の倉庫に引きこもった。

村人達は言う。


「努力家だねぇ……」

「あの子は頑張ってる」

「きっと立派な精霊術師になる。ちょっと失敗しちゃったけどねえ。」


──違う。


“愛”とか“ロマン”とか“詩”とか、フワフワしすぎ。


全部、理論。

全部、設計。

全部、演算。


必要なのは、再現性。



壁一面に数式。

床に魔力回路。

紙束。

古代文字。

術式図。


その中でエルディアは笑っていた。


『一番性能が良い媒体は人体。』


──刻印魔術。


これは古代文明由来の魔術体系。


──泣くほど痛いけど


『コストゼロ』


投資効率インフィニティの直観にしたがい、エルディアは狂気じみた積み上げをはじめる。


鏡の前で立つエルディア。

手には刻印針。

床には大量の設計図。




ある日、幼馴染のアルトがエルディアに聞いた。


「お前さあ、なんでそんな生活してんの?」


「何が?」


「いや、何がって、そんな傷だらけでよ。」


「え……?刻印のこと?それともダンジョンアタックのこと?

いや、好きでやってるだけだけど。」


「そ、そうなんだ。」


事実だった。

別にエルディアはそこまで悩んでるというわけではない。


子供ながらの、浅はかな思考で考えただけだ。

暴力的とも言える魔力で精霊の精神状態を麻痺させ、その隙に強引に契約を取ってやると。


ちょっと指先が焼けても気にしないし、魔力回路が裂けて吐血しても記録を取るし、睡眠は並列演算の練習にすぎない。


エルディアの執念に比例するように刻印も増える。


「次から俺もダンジョンに行くよ。

心配だし。」


「え。いーよ。

だってアルト虚弱だもん。

これしないと戦えないでしょ。」


刺青を見せるエルディアにアルトは、普通に頬を引き攣らせた。


「それは嫌だ。」


「わがまま言わないでよアルト

私たち子供なんだから。」


「いや、絶対嫌だ。

待て。近寄るな


アー――っ!!!」


そしてアルトはそれを刻まれた。

彼は泣き叫んだという。




『さあ、精霊よ。

私の前に跪いて働け。


これで開かれる国家資格への道。

夢にまで見た高給取り。

都市部では超人気職。


上位資格持ちは貴族からスカウトされ、王都勤務なら年収は家が建つレベル。


その栄光の為に


わたしこそが勝ち組となるために


──さあ、跪きなさい。』


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ