0話
「──惰弱が」
彼女は、吐き捨てるように呟いた。
崩壊した塔の最上階。
空は灰色に濁り、街並みは沈黙し、風すら鳴かない。
世界から“歌”が消えていた。
精霊魔術とは、本来、
心を通わせる術だった。
祈り。
共鳴。
感情。
信頼。
人と精霊が互いを理解し、世界そのものを循環させるための文明。
彼は「効率化」をもってそれを為した。
感情を排し、契約を規格化し、精霊を術式部品へ変え、世界から“揺らぎ”を消した。
結果魔術は、爆発的に発展した。
飢餓は消えた。
戦争は減った。
都市は空へ届き、人類は黄金時代を迎えた。
誰もが彼を讃えた。
救世主。
大賢者。
文明の父。
──だが、「彼は失敗した」。
終極。
世界そのものが、
呼吸を止めようとしていた。
遠くで塔が崩れる。
精霊炉の停止音。
文明の最期。
──精霊と人間のすれ違いは、決定的な破滅を生んだ……
彼女は、瓦礫の中に横たわる青年を見る。
世界を救えなかった男。
誰より賢く、
誰より努力し、
誰より世界を愛していた愚か者。
彼は、血を吐きながら笑った。
かすれた声で。
彼は笑った。
心底、安心したように。
「……お前なら、違う結末に、辿り着いていたよ。」
「なによ、それ。」
「だから──任せた。」
世界が崩れる。
光が割れ
空間がひび割れて逆流する。
最悪だった。
次の瞬間。
エルディアは、見覚えのある村の自宅の天井を見上げていた。
また、この夢……
腕の刻印の数が変わってる気がする
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