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頭がおかしくてお金が欲しいイカれた精霊魔術師エルディア  作者: 無印のカレー
クラス対抗戦

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26/73

25話 Eクラス躍進

数値が跳ね、数字がはじき出される。


続いて、内訳が展開されていた。



■Eクラス——総合順位1位


到達順位:0点

探索ポイント:910点

戦闘評価:30点

情報発見:240点


合計:1180点







先生のジト目。

圧倒的なジト目。


「なんですか?

先生♪」


似合わないエルディアのぶりっ子に担任は頭を抑える。


「何やったんだ。お前ら。」


「そもそも先生が言ったんですよね。

身の程を弁えろって。」


「大会が止まるぞ……騒ぎが聞こえるてるだろ……」


「みたいですねー

なら、もう一度やりましょーか。

──同じ結果になりそうですけど。

言っておきますけど、探索する場所とかギミックは全部覚えましたから、次はさらに点数取りますよ。私達。

それでもいいなら。」


妙な迫力があった。


だが、実際そうなるだろう。





『ズルだろこれ!』


その一言が引き金だった。


「そうだ!ズルだ!」

「Eクラスはイカサマをやってる!」


怒りは、すぐに“納得の形”を探し始める。

理解できない結果は、不正の形を借りるしかない。

監視係が必死に端末を操作する。


「一時中止しろ!」

「この競技は無効だ!」

「再審査を要求する!」


声は波のように広がり、収拾がつかなくなっていく。

ついには——


『クラス対抗戦、一時中止』

学校側の判断が下された。




そして休憩後。

闘技場中央。


会場の空気は先ほどよりも冷えているが、熱は消えていない。


そこに、エルディアが立つ。

周囲が一斉に視線を向ける。


エルディアはそれらの中心に立ったまま、周囲を見渡す。

別にエルディアとしては、このままでも良かった。


だが残念なことに皆さん理由を知りたいようだ。

なんか心無しか、会場が気持ち静かになってきている気がする。


「説明したという責任だけ果たす努力をしたいだけなので、別にみなさん聞かなくてもいいですよ。

一応説明はしますけど、別に話は聞かなくていいでーす。」


普通に最低で、普通に言ってることが終わっていた。

色々台無しにしている、本音がダダ漏れた呼びかけだった。


エルディアの意に反して。徐々にざわめきは小さくなっていく


やがて。


──え……

──何この連携……

──あんたら荒ぶってたじゃん……


責任感。

誠意。

やる気。


いずれも0。


呼びかけはマイナス方向に激しく全力だったのに、全部しかとしてマジで静かになりやがった。



エルディアは、少しだけ肩をすくめた。


「自己紹介は―」


エルディアは舞台袖の担任を見る。

しろってことらしい。


「Eクラス所属。

学園ランキング121位

──エルディア。

わたくしとしては、このまま対抗戦が中止されるのは本意ではありません。」


軽い口調。

周囲の生徒が眉をひそめる。


「中止が本意じゃない?」

「こっちは納得してないんだけど……」


そしてエルディアは、静かに周囲を見渡す。


「今回の結果をズルと認めて、みなさんに謝罪しろって言われました。」


──『ならいいか。』


一瞬。

本当に、一瞬だけ。


会場の全員が“謝罪会見”の流れを期待した。


教師陣ですら、少しだけ安堵していた。

ようやくこの問題児が空気を読むのかと。

そして騒ぎはおさまり、例年通り、滞りなくクラス対抗は進むだろう。


Eクラスをつるし上げ D~Aクラスにこうなりたくないと思わさせるためのカンフル剤。


そのためのクラス対抗戦。


エルディアは全力で頭を下げた。


完璧な姿勢。


「この度は、Eクラスがあまりにも効率良く攻略しすぎた結果、みなさんの精神に多大なる損傷を与えてしまい、誠に申し訳ありませんでした!!!!!」


最低だった。


「煽ってんのか!?」

「してるでしょ絶対!」

「謝罪文の構文だけ借りて中身全部ケンカ売ってる!」


観客席が爆発する。


「あと、“ズル”とのご指摘も大変ありがたく思っています!!!

ズルみたいな効率である事を認めます!!!

ルールブックに則って効率を上げていたため、一切違反をすることはできませんでした!!

なんなら、たぶんルールブック読んだ量だけなら、多分学年トップを自負しています!!」


「認めた!?」

「認めてねえだろそれ!」


「まず第3章第12項。

“探索戦において、踏破・情報回収・戦闘行動は独立加点対象とする”」


暗唱だった。


「そして重要なのが第7章第9項。

“他参加者との戦闘音・魔力反応・環境変化を利用した誘導行為を禁止しない”」


静寂。


「戦場で本当に生き残るのは、“強いやつ”じゃなく、“帰って来るやつ”です。

だからルールは、ちゃんと“弱者の勝ち筋”を残してある。

フェアであることがルール書いてありました。」


Eクラスの生徒たちを見る。


「まさにノブレス・オブリージュ!!

そして、それを証明するための、クラス対抗戦です!!」


観客席の空気が変わる。


「……」

「……あいつ」

「ちゃんと考えて……」


感動。

理解。

納得。


学園中が、ほんの少しEクラスを見直しかけた。


そしてエルディアが満面の笑みで続けた。


「なのでわたしたちは、“合法的に勝てる穴”を全力で探しました!!!!」


全部終わった。


「台無しだよ!!!」

「なんで締めで急に犯罪者みたいな言い方するの!?」

「言葉選べ!!!」


「だって、Eクラスが今トップなんですよ。

折角ランキングをぶち上げるチャンスなのに、みすみすドブに捨てる事はないでしょ。

だって結果はもう出てますし。」


一拍。

僅かな間だけ、空気が止まる。


──何をいいたい?


「それでもクラス対抗戦に納得ができないという事でしたら、みなさん棄権ということになります。」


ざわっ、と空気が動く。


「ふざけるな!!」


ついに誰かが叫ぶ。


「納得できないから棄権ってなんだ!!」

「勝手にルール作るな!!」


怒号が再び広がる。

だがエルディアは動じない。

むしろエルディアは、きょとんと目を丸くしていた。


「え?」


そして。

ものすごく嫌な予感を漂わせながら、それを諳んじた。


「第2章第4項。

“参加者は、競技進行に対し異議申し立てを行う権利を有する”」


「そこは普通だな……」


「続きまして第2章第7項。

“異議申し立てに伴い競技続行を拒否した場合、当該参加者は自主棄権扱いとする”」


静寂。


「……は?」


「さらに補足。」


エルディアは追撃した。


「“棄権者が発生した場合、残留クラスを対象として順位点を再計算する”」


監視委員。

震える手でページを確認する。


「あっ……」


書いてあった。


本当に。

書いてあった。


「なお第2章第8項。

“棄権判断はクラス単位で適用される”」


「待て待て待て待て!!!」


観客席が爆発した。


「つまり!」


エルディアは妙に良い笑顔で結論を述べる。


「“納得できないので競技しませーん”を正式にやると、ルール上は自主棄権になります!」


「そんなバカな話があるかァ!!!」


「あります。

書いてあるので。」


「お前なんでそこだけそんな嬉しそうなんだよ!!」


「だって。

Eクラスからすると、“皆さんが帰るなら優勝では?”って話なので。」


「煽るなァ!!!」


教師席。

運営本部。

審判団。


全員が超高速でルールブックを確認していた。


そして。


誰一人として。

反論できなかった。


本当に書いてあった。


そもそもこの条文。

本来は“敗色濃厚になったクラスが暴れて大会を止めないため”の安全装置だった。


歴代92回。


こんな使い方をしたバカがいなかっただけであった。


「えぇ……」


誰かが漏らした声は。

あまりにも正直だった。


「じゃあ、説明終わります。

先生に言われたから説明しただけなんで。

別に大したことじゃありませんでしたね。

誰だってわかることでした。


大体、なんでこんな事を生徒に任すんですか。

大会規定の仕様説明は、そもそも先生達の業務ですよね。

職務怠慢では?

では、失礼します。」


言いたい放題だった。




「ふざけんなーーー!!!」

怒号が会場に響くほど、空気が一気に爆ぜる。


「静粛に!!」

「静粛に!!」


「到達0点で勝って納得できるか!!」

「ルールが壊れてるんだよ!!」


感情がぶつかり合い、議論ではなく“騒乱”に近くなっていく。


《休憩時間:30分》


魔導放送がそう告げると、ざわめきは完全には消えないまま、散るように強制的に分断された。


会場に残るのは、怒りの余韻と、説明を待つ重たい空気。








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