22話 レベル上げ
火精霊なら火山。
水精霊なら深湖。
風精霊なら高空。
精霊は存在に適した環境で強くなる。
また、もう一つの精霊の存在強度をあげるメジャーな方法は、契約者が魔力を与えること
人々が祈るほど存在が安定するなんていう説もある。
精霊は、そもそも曖昧な存在だ。
世界を維持しているとされ、善悪や人間倫理では測れない。
未完成の神と呼ぶ地方ある。
ならエルディアにとって、精霊とは?
すなわち
『労働力』。
ずる……ずるずる……。
大量の鉱石が、影の中へ沈んでいく。
シェイドは泣きながら労働していた。
「ぴ……」
シェイドが泣く。
少なくとも、カトレアからは泣いているように見えた。
「あなた、精霊をもっと大事にしたほうが。」
「契約範囲内。ローテーションしてるし。
やれやれカトレア。あなた貴族でしょ。
全く、人の上に立つ貴族が何を言ってのさ。」
カトレアは思った。
──怖。
よってその目標はタスク的というかノルマ的になる。
──影移動。
接続距離:30m
積載量:5kg
連続稼働:20回
的な感じだ。
──影縫い固定。
──夜間警備。
──影の異空間を利用した採掘補助。
『ぷるる。』
「あとはそうだなー超広域索敵5㎞。並列思考32。大量の触手20本を同時運用する訓練。──etc」
ぴた。
シェイドが止まった。
「……嫌?」
『ぷるるるるるるる!!!!!!』
そして彼は逃げた。
「カトレア!!!!
シェイドが逃げた!!!」
カトレアは遠い目をした。
いや、そりゃ逃げるだろ。
お前何言ってんだ。
『ろうどうは』
『いや』
地下深度第三層。
薄暗い坑道のようなダンジョン。
魔導ランプの明かりが、岩肌を鈍く照らしている。
その一画の壁の隅に彼はいた。
ぷるぷるぷるぷる。
シェイドは震えていた。
エルディアは優しくしゃがみこんだ。
「大丈夫だよシェイド。」
ぴ……
「最初はみんな嫌がる。」
ぴ?
「でも労働は人を成長させるから。」
ぶるるるるるるる!!!!!!
シェイドは全力で拒否した。
影が床に張り付き、絶対に動かない意思表示をしている。
「なんで?」
「ぴぃぃぃぃ!!!!」
「いや、でも研修は必要でしょ。」
「ぴ!!!!!!」
「そうよね。でもシェイド。安心して。
私もひどかったなって。
今回は先輩同行だから。」
エルディアが指を鳴らす。
──ドン。
巨大な影が着地した。
漆黒の毛並み。
山ほどある牙。
黒霊暴食狼ポチ。
バウバウ『お、久しぶりだなチビ。』
ぷる……。『先輩。久しぶりです。』
バウバウ『しゃーねぇなぁ。新人研修ってやつか。ま、オレに任せとけ。』
シェイドは少しだけ尊敬の眼差しを向けた。
ポチは満足げに鼻を鳴らす。
バウバウ『へっ。ま、オレも最初はマスターにビビってたからな。今じゃ深層じゃ顔パスよ。
社会ってのを教えてやるよ。オレの影の中なら安全だ。乗れ。』
ドォン!!
そしてポチはダンジョン深層へときえた。
脇で見ていたカトレアは思っていた。
なにこれ。
──そして数日後。
深層ダンジョン。
そこでは異変が起きていた。
「おい……まただ……」
「深層の魔物が消えてる……」
「しかも素材だけ綺麗に回収されてるぞ……?」
巨大な狼の足跡に冒険者たちが青ざめる。
倒された魔物が、ありえないほど効率よく解体されていた。
「なんだこの処理速度……」
「熟練解体師でもびっくりの切り口だ……」
「しかも採掘跡まであるぞ!?」
そして誰かが見つけた。
壁に残された文字。
『ろうどう』
沈黙。
冒険者の一人が震える声で言った。
「……深層に、“働く魔狼”がいる。」
そして翌週。
正式に討伐依頼が貼り出された。
《深層の狼》
危険度:特級
やがて。
クラス対抗戦が始まる。




