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頭がおかしくてお金が欲しいイカれた精霊魔術師エルディア  作者: 無印のカレー
魔術学校学生

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16話 Eクラスの勉強合宿

森のあちこちで、小さな精霊達が飛び回っている。


火。

風。

土。

水。


最初は怯えや、戸惑いがあったEクラスの生徒達も、少しずつ笑うようになっていた。


「うお、浮いた!!」


「見ろ!

火ついた!!」


「ちっさ……」


「でも成功だろ今の!」


わいわい騒ぐ声が、森に響く。


最初に怯えていた空気は、もうどこにもない。

代わりにあるのは、ぎこちない成功と、くだらない失敗と、それを全部笑い飛ばす熱。


アルトは、指導していた。


「悪くないが、魔力を押すな。流せ。

精霊魔術は精霊を支配することじゃない。指示でもない。

だが当然、こちらの言いたいことは伝えないとダメだ。

通り道を作る感じだな。

こっちであれこれもやろうとしなくてもいい。」


「む、むず……」


風属性の下級精霊が、ぷんすこしながら生徒の周囲を飛び回る。


「あまりに束縛するとこうなる。

ある程度の距離感は必要なんだ。

適切な距離感は精霊によって違う。

恋と同じだよ。

恋をしたことは?」


「ねーよ!!!

みんなお前と同じと思うな!!」


「ははっ。

俺もだよ。

同じだな。」


指先で術式をなぞる。

すると、ふわりと暴れていた精霊が、一瞬で落ち着いた。


「うお……」

「え、なんで?」

「すご。」


周囲がざわつく。

アルトは淡々としていた。


「敬意と、共感だな。

魔力に感情を乗せるのは非論理的かも知れねーが、精霊魔術のその本質は対話だ。

一方通行じゃ駄目なんだよ。

怖がらせちまう。」


「精霊って怖がるんだ……」


「普通に嫌がるぞ。

あと雑音も嫌いだな。

一応覚えとけ。」


「ざ、雑音?」


「無駄な緊張とか焦り。」


参考になる。

非常に参考になるんだが


いちいち何もかもが、イケメンなのなんとかしろよこいつ。


Eクラス面々は、学年3位の恐ろしさを改めて思い知ることになったという。



アスは風属性だ。


無事風精霊と契約できたようだった。

小さな風精霊が、彼女の周囲をくるくると回っている。

アスの魔力適正値は驚くほどに高い。


明らかに精霊達の姿が多い。


アスはそっと手を上げると、風精霊がその指先に呼応するように揺れる。

ほんの一瞬。

紙をめくる程度の風。


「……できた」

声が少し震えていた。


何度やっても風は起きなかった。

起きなかったのだ。




魔力発動に問題があるとはいえ、アスも精霊を経由すれば、魔術を扱うことができる。


それが『共鳴』。


そもそも共鳴は、術式も回路も不完全であるが発動する魔術理論では説明が不能な現象。


人間は魔術回路を通して魔力運用を行うが、精霊は共鳴して魔術を使う。

よって魔力不能の魔力発動問題は、回避できる。


アスの魔力は強い。

だがが発動だけができない。

だから周囲は、アスの事を「欠陥姫」と呼ぶ。


人前で魔術を使うのが怖かった。

期待され、そして失望されるから


術式は正確で、理論も完成されていながらも魔術が発動しないという、その根本的な解決にはならないが、時間稼ぎにはなる。


それでもアスは、少しだけ泣きそうな顔で笑っていた。

初めて自分の意思で、こんなにしっかり魔術を発動できていたから。


本当に初級の初級。

火花みたいなものだ。


魔術ですらないのかもしれない。


それでも。


その小さな光は、どれだけ手を伸ばしても決して届かない光景そのものだったのだから。


「すごいな。エルディアって。

きっと私だけだったら、まだ悩んでたと思う。」


「そうでもないでしょ。」


「私、普通の魔術使えないからさ。」


「でも精霊はやってきてるから、他の属性の魔力もあるっぽいけど。」


水、火、土の気配すら、薄く彼女の周囲に滲んでいる。

祝福するように小さな精霊達が輪になっていた


「そうかな。」


「うん。そのうちもっとすごくなると思う。

でさ、アスにはお願いがあるの。

アルトの精霊魔術をアルトから教わって、そのアルトの魔術を丸裸にして。」


アスは固まった。



神妙な面持ちで、なんか言い始めたエルディアに、アスは聞き直すことにした。


「何?

エルディアって、今さ、すごく変な事いわなかった?」


「私は、ずっとアルトにけちょんけちょんにされてきた。

子供の頃から、けちょんけちょんに!!

結構努力してきたのにまるでかなわない。

全然かなわないの!絶対私の方が努力してるのに!全然!

こいつは天才なんじゃないかと思ってきた。

そして学校に入ったら、学年ランキングも3位。

魔力価値ランキングも3位!

凄まじい。

だけど精霊は普通!!

よってその術式を全て詳らかにして対策を練ってやる!!


それにはアスの力が必要!!

風属性だから!!

アスは、アルトの下位互換だから!!」


「ひど」


「ふふふ。

面白くなってきたわね。

アス!!」


「ねえ、まさかアルト様にみんなの先生たのんだのって……」


「当然、クラス対抗の対策を練るためにきまってるでしょ!!

絶対本番までにハメてやるんだから。

それまでにアルトの魔術を全て詳らかにして、全部対策立てて完封してやる!


それには風属性の精霊術使いが必要!!

風属性に詳しくないとできないの!!!」


「エルディア……あなたって……まさか……」


アスはそれを理解した。

ガチで恩を仇で最初から返す気しかないぞ……この人


「だって私から逃げるんだもん!!

アルトのシルフも!!

解析したいのに!!


逃げんな!!」


エルディアの呼吸が荒い。

エルディアは本気だった。


途中から、もはや会話ではなかった。

エルディアの思考の垂れ流し。

戦略と執念と被害妄想が、混ざったまま放出されていた。



はあっ、はあっ。


アスは、そんな彼女を見つめる。


──めちゃくちゃだ。

本当にめちゃくちゃ。


でも。


「……うん。」


アスは、小さく笑った。


エルディアは、1人でも歩き続けてきたのだろう。

ずっと誰にも理解されなくとも。


(エルディアは、カトレアと似てるな。

太陽みたいに……周りの人を巻き込んで

一点だけをみて、がむしゃらに進んでいく。)


うおおおお

ポチーいいこー


いつのまにか出現していた巨大な狼に、エルディアはべちゃべちゃにされていた


「……」


いや、やっぱ似てない。

混沌の太陽って感じ



長くなったんでわけます。切りがいいとこいいとこまで次で

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