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頭がおかしくてお金が欲しいイカれた精霊魔術師エルディア  作者: 無印のカレー
王都ダンジョンあれこれ

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162話 もう一人の私 全部すっ飛ばす

とにかく、その一言に場の空気が一気に冷えていた。

実際冷えてもいた。


「とにかく!色々、もろもろ考えるために一分もらうから!!」


『そうは持たないから。

私が死ねば世界崩壊を止められない!』


白いエルディアの声から、余裕が消えていた。

向こうの爆心地では、紅蓮と極寒が今も押し合っている。


「リリ!!

聞いてたわよね!」


声に応じてリリからの念話が入った。


『もちろんっす!!

彼女は、大袈裟に言ってるわけじゃないっす。

この階層の座標保持体――つまりカインは、王都直轄ダンジョンの中心座標そのものと同期してる。

オメガ粒子収縮率が今までの比じゃない。

ダンジョン全部の制御が連鎖的に崩壊する。

というか、すでに何が起きるかわからないっす!!』


「王都ダンジョンが連鎖的に崩壊って何!?」


『オメガ粒子のメルトダウンにおける連鎖崩壊っす。

大陸ごと絶対零度になりかねない規模だと試算では出てます!!』


「へえ。つら。」


『それにカインも、どうやら時間隔離存在みたいなのよ!!

ごめんね、会話に入るわ!!』


「……ん?」


エルディアは、眉を寄せた。


「……ああ、リリの念話の回線を勝手に借りたのね……

回線は秘匿されてるのに、器用な真似を……

いや、待って。今、なんて言った?

白い私。

もう一回言って」


『あんま余裕はないんだけど……

冬律術式《ニブルヘイム》は、今より遙か未来で開発される術式なのよ。

私が用いてる不冬律術式《ムスペルヘイム》と同じ。

というか、おそらく私よりもかなり未来の術式だ。』


「つまり……?」


『イレギュラーなのよ!!カインも!!

「あなた」と同じように!!!』


『――は、はい……?

え、カインさんもイレギュラーって、どういう……』


「リリ!!

今は後にして!!

つまり今この場で最強は私ということを証明しなければ世界は滅ぶってことよ!!

考察や感傷は後回し!!」


『……その意気よ。

私が前衛。あなたは崩す。それだけでいい

でも私のデータにない数と、意図の読めなさで、あいつの計算を狂わせて!!

タイミングは任せる。』


そして念話は切れた。


『どうするっすか?』


「――なんか、腹立つけど、理屈は通ってる。

そこがまた腹立つ。

いいわよ。介入してやろうじゃない……!!」


ゴルドが、やり取りに割って入った。


「儂も入ろう。全て魔王様には報告するからな。エルディア。」


「もち。ゴルドにも死線をくぐってもらう。

帰れたらいくらでもして。」




──領域魔術。

《戦術迷宮《タクティカル・ラビリンス》・冥府耕作結界《ラストハーベスト》》


ずらりと立ち並ぶ、無慈悲なる案山子の列。

それが通路の壁と天井に沿って幾重にも連なり、空間そのものをぐにゃりと湾曲させていく。


「リリ!!

潜入ルートの提示を!!」


『目標はカインさんの背後っす。

一番やばくて速いのは正面突破!

時間かかっていいなら姉御の畑を、爆発の地下に繋げるのが妥当っす!!』


「待てエルディア。潜入ルートはいい!!

ただ、たどり着いた所で具体的には何をする気だ!!」


「そこは大丈夫!!今めちゃくちゃ気合入ったから!!」


『どうするっすか!?』


「決まってるでしょ!?

よーわからんから、全部ぶっとばす!!」


場が固まった。


「「え?」」


エルディアが、吠えた。


「シェイド、きなさい!!」


虚空に、亀裂のような闇が走った。


ぷるぷるぷるぷる


「虚数領域展開。

虚数演算を意図的にエラーさせることで、現実へフィードバックする!!」


「――はい?」


「つまり、ここら一帯、吹っ飛ぶ!!!」


「ちょっと待て!?さっきの潜入ルートのくだりは!?!?」


「雰囲気に決まってるじゃない!!!」


ゴルドが、剣を放り出しかねない勢いで振り向いた。


「待て待て!!

お主それ、ただの必殺技のノリで言っにしては内容がおかしいだろが!!

ささがに儂は耳を疑ったぞ!!」


「は?

普通だし!」


『普通じゃないっすよ!!

現実に虚数演算のエラーをフィードバックするって、理論上、この階層どころかダンジョンが崩壊するっす!!』


「でも、もう、止められないから。」


「嘘っすよね!!

それ単なるイビルゲートっすよね!!

普通に止められるっすから!!」


シェイドは既に虚空に無数の亀裂を刻み始めていた。

空間が悲鳴を上げるように明滅する。


『――警告。未知権能を検知』

『階層存在確率、急速に低下中』

『――これは――』


ダンジョン管理システムの声が乱れはじめた。


『ほら見るっす姉御!!

システムまで狼狽えてるっす!!』


「近所迷惑だしね!!」


「近所迷惑で済むレベルの話じゃないっす!!」


「――小娘!!

そんな無差別な力、使えば、ここにいる全員、道連れだぞ!」


「大ジョーブ!!!」


エルディアが、親指を立てて叫んだ。


「なぜなら今までノリで乗り切ってきたから!! ノリだけに!!!」


「今、ダジャレ挟む余裕はない!!」


「今回もいける!!!」


「いける根拠が『今まで乗り切ってきたから』だろうが!!」


「そういうわけでいきまーす!!!! シェイド!! いくよ!!!!」


「待て!?止めてるだろうが!!!」


ゴルドが首根っこを掴もうと手を伸ばしたが、一瞬遅かった。虚空の亀裂が、先ほどよりも早く、深く走る。


『――再警告。存在確率、再び低下』

『――なぜ、もう一度』


リリの耳に届く管理システムの声には、もはや隠しきれない疲労が滲んでいた。


『システムまで白目剥いてるっす!!』


「大丈夫大丈夫! 加減はする! 多分!」


「絶対嘘っす!!

このダンジョン魔力の減り具合、今までで最高っす!!!」


シェイドが、闇の中から輪郭を露わにする。その矛先が、戦う2人へと真っ直ぐ向けられた。


気づいた白エルディアが、初めて明確な焦りを声に滲ませた。


「――待って、それは」


「はい、いっけええええ!!!」


エルディアの号令とともに、シェイドの纏う闇が一直線に放たれる。

虚数の亀裂が空間そのものを軋ませ、着弾の瞬間、爆発ではなく――"存在そのものが揺らぐ"ような、異様な現象が巻き起こった。




そしてダンジョンは崩壊した。


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