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頭がおかしくてお金が欲しいイカれた精霊魔術師エルディア  作者: 無印のカレー
王都ダンジョンあれこれ

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160話 未来エルディア 積み重ねた回数

深淵のエルディアの悲鳴じみた叫びと共に、暴食黒色狼が、再び牙を剥いて突進していった。


(ダメージはそこそこ。

悪い癖が出た……死んだら、やり直せるって思ってしまった……)


──初めての攻撃は、一度食らっとけ的なね。


震える膝をまるごと無視して白いエルディアは立ち上がる。




超重力空間の領域の中心で、髑髏の王が静かに嗤っていた。


ふぉっふぉっふぉっふぉ(……ワシの空間は、烏すらたまに捉える。

慣れぬ者には、少々きついかもしれぬぞ。)


リッチが杖の石突きで、地面をひとつ突いた。


白いエルディアは、その雷と重力の嵐を縫うように進む。

落ちる場所と落ちる順番を、最初から知っているだけだ。


「あなたのことは、よく知ってる。その癖もね

……畑のことは、知らなかったけど……

遊びはおしまい。悪いけど、そろそろ終わりにするよ。」


深淵のエルディアの拳が、リッチの顎を正確に捉える。

骨の巨躯が、為す術もなく吹き飛んだ。


ふぉっふぉ……(がふっ……ネギの、無念が……)


「リッチー!!

ただ私が召喚しといてなんなんだけど、無念のクオリティが低すぎる!!!」


続けて、ポチへと視線を向ける。

狼が唸り、飛びかかろうとした瞬間には、既に深淵のエルディアの姿はその懐に潜り込んでいた。


「ごめんね。」


一言だけ告げ、掌底が叩き込まれる。ポチの巨体が、ものの見事に地面へと沈んだ。


「――ポチ!!」


エルディアが悲鳴に近い声を上げる。


「リッチも、《暴食黒色狼《ドレッド・ウルフノワール》》も、確かにSランクと呼ばれる災厄個体だけど、今の段階では私の敵ではない。」




「……くっ。」


エルディアの顔から、余裕が完全に消えていた。


──まじで強い。


(魔王様にも引けをとらないんじゃないの!?これ。)


「言ったでしょ。」


白いエルディアが、ゆっくりと歩を進めながら、静かに告げる。


「積み重ねた回数だけは、譲らないって。」


先ほどまでの珍妙な攻防、噛み合わない理屈、笑えるほどのちぐはぐさ――それら全部を吹き飛ばすように、圧倒的な"地力"だけが、今、静かに戦場を支配していた。




拳が、エルディアへと迫る。


刻印を再発動させる間も、ポチ達が割り込む間も、もう残されていなかった。


「――エルディアァッ!!」


ゴルドの絶叫が通路に響いた。



その瞬間だった。


「――そこまでだ。」


低く、掠れた声が闇の奥から響いた。


エルディアの鼻先、指一本ぶんの距離。

拳が、届かなかった。


白いエルディアの一撃は、割り込んできた何かの"腕"に、正面から受け止められていた。

金属と肉が融合したような、異形の右腕。


エルディアは壁に背を預けたまま、風圧だけがその前髪を揺らす。



「……ちっ。

出てきやがったな『イレギュラー』。」


白いエルディアは拳を引かず、受け止められた姿勢のまま、視線だけを右へ滑らる。

強さに関しては、表情を動かさなかった彼女の眉が、はっきりと寄る。


次にその視線が、『彼』の肩越しに壁際のエルディアへ移った。


「あなた。

『これ』とは別口みたいね。

だって――弱すぎるもの」


「は?」


エルディアの声が裏返った。


「私に対抗するにはあまりに弱すぎる。

それに、動きに何の意図もない。だから、別口」


「ちょっと待って、それただの悪口じゃん!?!?

そもそも意味が!?」


エルディアは、壁に手をついて身を起こしながら、ふと思った。


――こいつ、すげえ口悪いんだけど。

――あ、私だからか。そりゃそうだ。


「納得してる場合じゃないぞ小娘!!」


ゴルドが横から叫んだ。


「そうだけど!

でも今妙に腑に落ちちゃって! 私、口悪い自覚あったから!」


「今はどうでもよい!!」


エルディアは壁合いのその場から飛びずさる。

エルディアとゴルドが言い争う間も、白いエルディアの視線は、もう二人を見ていない。


『彼』は、白いエルディアの拳を受け止めたまま、振り返りもしなかった。


「……もういい。もう、十分だろう。

いい加減、諦めて死ね。

貴様は何もできない。

何もな。」


「あはは。何それ。

化け物なのに、言葉を理解する振りをするんだ。」


言葉とは裏腹に思考を進める。


――つまり、こういうことだ。


(私のこの174回目のループ。

イレギュラーは、カインだけじゃない。

この私の若いころみたいなエルディアも、ここまでの百七十三回のループには存在しない変数。

でも、カインみたいに"意図を持って"介入してきたわけじゃない。)


──ただ今は……


「言葉が通じないなら、手で話そうか」


エルディアが放っていた攻撃を遥かに超える衝撃が白いエルディアを襲った。


それに対し白いエルディアは『それ』で迎え撃つ。



領域魔術

『不冬律術式《ムスペルヘイム》』




──ダンジョンコアルーム。


リリの視線が、その影の輪郭を捉えた瞬間、呼吸が止まった。


鎧は肉に食い込み、右腕は剣そのものと化し、かつての面影は、もうほとんど残っていない。それでも――


「……嘘、っす。

「カイン、さん……?」


震える声がこぼれ、画面の向こうで、白いエルディアの全身から白い光が溢れ出す。




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