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頭がおかしくてお金が欲しいイカれた精霊魔術師エルディア  作者: 無印のカレー
間章

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143/166

142話 お礼参り

 医務室。


 ベッドの数は、変わらず多かった。

 けれど空気は、あの日とは違う。


 うなされる声も、荒い呼吸ももう聞こえない。

 穏やかな寝息と、時折交わされる軽口だけが響いていた。


「――あ。

 来た来た。」


 リリアが、松葉杖でリハビリをしていた。

 エルディアに気づき、手を振った。

 包帯はまだ取れていない。

 けれど顔色は、あの日とは比べ物にならないほど良かった。



 医務院の食堂。


「リリア先輩。

 元気そう。

 肉、食う?」


「元気に見えるか、これが。

 歩けないんだぞ。華麗なるこの私が。

 それにまだ、肉は食わねーよ。

 というか、またやるのかこのやりとり。

 ……あとその花、誰の見舞い?」


 リリアは気づいた。

 エルディアの手には、大量の串焼きの包み。

 それから、なぜか花束が一つ。


「もちリシェル先輩。

 そろそろ死んだかなって。

 追悼の花。」


「そのナチュラルに喧嘩売りにいくスタイルやめよーね!!!」



エルディアは、串焼きの串をくるくるとこれでもかというくらい高速で指先で回していた。

それをピタッと止めたと思ったら、今度は指揮棒みたいにびしっとリリアに向ける。


「学院、儲かるよ。

今回の優勝で。

その金と評判は全部、私という『規格外のEクラス』を生かした結果として生まれた。

つまり私を無視したり差別してきた連中が、これから私の名前を都合よく使い始める。

――『我が校の誇る、優勝校の一員』ってね。」


「急に何の話よ!?!?

あと串が近い!!」


「まず、寄付金。

次に、生徒。

それに、国からの助成金

その金と評判、全部。

――優勝したことで手に入る、あらゆる『信用』を、私は私の目的のために使う。

さあ、お金の奪い合いだよ。

リリア先輩。」


二本目の串を、勢いあまってリリアの鼻先すれすれに突きつける。


「近っ……鼻!鼻に当たる!!」


「それに、大会も終わったし、そろそろ決着をつけないとね。」


エルディアは強く頷いていた。


「全校ランキングに意味があるのか、ないのか、うん。

これでまた話し合えるね!!」


「……は?」


「人格。

 協調性。

 責任。

 全国大会の代表を決める基準として。それらは必要ない。

 私は、すでにここまでは意見を提示してる。

 それら人格等が赤点の私が、今回、大会で結果を出したことで、改めて話し合わないとならないと思うの。

 今後のアーカム魔術学院の未来のために。

 ランキングの在り方について。」


「今はナーシ!!!!」


 リリアは顔の前にバッテンを力強く作った。


「それを蒸し返すのは今はナーシ!!!!」


「え!?

 なんで!?!?

 例外的に全国大会に出たけど、そもそもEクラスで全校ランキングのドンケツだよ私。

 でもなんか優勝したんだよ!!

 恰好の議論対象でしょ!!!さらにそれはお金にも関ってくる!!!」


「だから煽るな!!

 わざとでしょ、絶対!!!

 ただでさえ、E クラスのドンケツに手柄を搔っ攫われてランキング上位の貴族達は立場が微妙なんだから!!!」


「貴族って大変だね。」


「お前がいうな!!!!!

 元凶!!!!」


 エルディアは立ち上がる。


「――さ。

 リリア先輩が元気な事はわかったし、次、行こっと。

 リシェル先輩をからかってくる。」


「帰れ!!!!」


こいつ、マジで爆弾すぎる!!!

メンタル劇弱なリシェルが今からかわれたら、憤怒の余り傷が開いて死ぬわ!!




医務室、奥のベッド。


リシェルは、上体を起こし本を読んでいた。

包帯は、まだ手首と額に。

けれど、その目つきの鋭さだけは健在だった。


「騒がしいですね……?」


遠くから声聞こえた。


「帰れ!!この危険人物が!!」


「離してリリア先輩!!

私にはやらないとならない事があるの!!

リシェル先輩をからかってぶち殺すという、何よりも大事で崇高な役目が!!!」


「殺害なのか、お見舞いなのかせめてはっきりしなさい!!!」


非常に騒がしい。


「きっと気のせいですね……

ここは医務院。

あの爆弾女がいるとは思えませんもの。

きっと幻聴ですね。疲れているようです。」


リシェルの優雅な午後は、リリアの巧みなフロアディフェンスによって守られたという。


そしてリシェルは、アフタヌーンティーをオーダーした。


優雅に。







王国の地下収容施設。

ひんやりと湿った空気。

水の滴る音だけが、暗闇に響く。



監獄。

使われていない独房の一つに、円陣が描かれていた。


黒い粉と、蝋燭の灯り。

オズワルドの手が、迷いなく紋様をなぞっていく。


「――正直、あまり勧めたくはないでござるよ。

死者を降ろすのは器にも、術者にも負担があまりに大きい。」


「でーじょうぶでーじょうぶ。

わかってる。

それでも、やる。」


「エルディア殿は、いつも怖いもの知らずござるな……ホントに。」


エルディアの、声は静かだった。


「アルトの手引きや、サキュエラの記憶操作魔術で無理やりここまで通してもらってる。

表向きは、記録に残らない。

というかバレたらマジにやばい。」


「……すいません。エルディア。」


「気にしないでアステル。私達の仲でしょ。」


エルディアが、軽く肩を竦める。



そこにはアステルがいた。



オズワルドが書いた円陣の、中央。

アステルが座っている。


「それより、私でホントにいいんですか。」


「うん。

トゥーラより、アステルの方が、適合率が高いからね。」


さあ、はじめるよ。


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