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頭がおかしくてお金が欲しいイカれた精霊魔術師エルディア  作者: 無印のカレー
間章

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142/166

141話 表彰式2

エルディアの目が少しだけ真剣な色を帯びる。


「《循環型温熱結界《スピリット・サーマル・ネットワーク》》

アスがあんな大舞台で、あれだけの規模で披露した。仕組みも難しくないし、絶対に仕パクるやつが出てくるに決まってる。

その前に法的に完全に囲ってやる。

どんな金でも積み上げてやるんだから。

表彰式なんて、誰か適当にやってくれればいー。」


アルトはしばらく黙って串焼きを見つめていた。


「――先生が、表彰式は病み上がりで代わりに、立ってるらしいぜ。

優勝カップを一人で抱えて。」


「まあ、いいんじゃない?

私の名前すら最後まで覚えなかったくそみたいな顧問だけど、全国大会優勝チームの顧問っていうステータスを手に入ったんだし、それで煩わしい事全部やってくれるなら、全面的に支持するよ。」


「身も蓋もねーな……」


「アルト。

これでようやくスタートラインだ。

誰でも越えられる冬が手に入るためのスタートラインにこれで立てる。

それは優勝カップより、よっぽど価値がある。

二度と冬で人を殺させてやるもんか。」


くぅん、とポチが鳴いた。


「――さ、行こっか。」


アルトは肩をすくめた。


「付き合うぜ。」


「もち。

頼りにしてる。

そもそもアルトがいないと権力が足りなくて特許区は門前払いだ。

わたしゃー平民よ。」




意気揚々と向かった先。


――『本日、休業』


扉に貼り紙が一枚。


「……は?

え?

噓でしょ。」


「――ああ、それなら。」


通りがかった、職員らしき人物が足を止めた。


「大会期間中は、こちら休業なんですよ。

みんな警備とか、運営に駆り出されてまして。

再開は来週からですね。」


エルディアは激しくその場に崩れ落ちた。


「ぶっちした表彰式より待ち時間があるじゃんこれ!!!」


アルトは、そっとエルディアの肩に手を置いた。


「ドンマイ。」


「ドンマイじゃないから!!!!

きーーー!!!!

今すぐここの職員を拉致した後で頭の中に直接、私の発明の素晴らしさを叩き込みたいんだけど!!」


「犯罪だろ、やめとけ。

二度と話を聞いてもらえなくなるぞ。

それに多分、職員はここにはいねえ。

休みだから。」


くぅん、とポチがエルディアの足に頭を擦り付けた。

いつもの三割増しでポチをエルディアは撫でまくる。

アニマルセラピーだ。


「くっ……

――しゃーない。

待つしかないのか。

血の涙が出るけど、待てばいいだけのよね!!!!

たかだか数日!!

……死なない。

……絶対死なないから!

呼吸にしたら20×60×24×3=86400回くらい!!」


「せっかちすぎる……

いや、死なねーだろ。」


行くあてもなく、二人と一匹はなんとなく来た道を戻っていた。

気づけば闘技場の外周。

歓声が、また大きく聞こえてくる。


「終わりだな。見てくか?せっかくだし」


「折角だしね。

折角だから。

しぶしぶしぶしぶ。」


人だかりの隙間、遠目に見えた。

特設の表彰台。


杖を握りしめた顧問が優勝カップを両手で抱えたまま「顧問」は、カップを掲げようとして盛大によろけていた。


「うおっ……!?」


観客席から悲鳴とも歓声ともつかない声。


「大丈夫か先生ー!!」

「無理しないでー!!」

「先生ー!!」


エルディアが、足を止める。

それは、ほんの少しの間だった。ほんの少しの。


「エルディア。」


「ん?」


「優勝おめでとう。すげえよ。」


「……ん。

みんなのおかげだよ

……それより先生にはちょっと悪いことしたかな、って思ったけどあの様子じゃ追加の言い訳はいらなそうじゃん。」


「そもそもぶっちすんな。」


「だりーし。」


くぅん、とポチが鳴いた。

エルディアは顔をあげて『そちら』を見る。


人だかりの少し先。

控え室に続く回廊の入り口。


その扉の隙間から一瞬だけ、見えた気がした。

寄り添う二つの影を。


エルディアは、それを見て目を細めた。


「……ま。

それぞれがそれぞれで、いいんじゃない。

頑張ってね……」


「何の話だ?」


「別に。

――行こ。

特許庁がまだ開いてないなら、たまの王都だし、時間潰せるとこを探そーよ。」


背を向けて、歩き出す。



かかる声があった。


「あ、エルディアがいましたわ。アス!!

やらかしすぎて、罪状が限界突破してる、犯罪者がいましたわよ!!

アルトさんとデートしてる!!」


「う、うん。

デートなのかなー?

アルト様とエルディアって、いつもあんな感じじゃない?」


そしてアスはふらっとよろけた。

アスもまた、試合後の疲労で重症だからだ。

それをカトレアは支える。


「ほら!!

誰かの無茶振りで重症患者が死にかけてますわよエルディア!!」


「うるせー」


言いながらエルディアは笑っていた。


「行くのか?」


「うん。アルトも行こ。

みんなで王都をまわろうよ。」


「だな。」



表彰台では、頼まれた大人が。

回廊の奥では、寄り添う姉妹が。

そして雑踏の中では、優勝に興味がない優勝者が。


同じ日、同じ歓声を、それぞれの場所で聞いていた。



歓声は、まだ鳴り止まない。


――だがその音を背に、エルディアはもう次の場所へと歩き出していた。





王国魔術学院総合競技祭

優勝──アーカム魔術学院。 




数日後、エルディアはお礼参りを兼ねて、医務院を訪れていた。






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