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頭がおかしくてお金が欲しいイカれた精霊魔術師エルディア  作者: 無印のカレー
魔術学校学生

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14/73

13話 カトレア

一瞬の静寂とともに、観客席がゆっくりと現実を理解していく。


「魔力関係ねーじゃん!!!!」

誰かの叫びが、会場全体の思考を代弁した。


「それアリなのかよ!?」

「いやルールでは“ワンド使用”って確認していたけど!?」

「だからって殴るのは違うだろ!!」


次の瞬間、ざわめきが一気に爆発する。

教師は、遠い目をしていた。


「ルール上は問題ない!」

「問題しかねえだろ!!」


即座に観客からツッコミが飛んだ。



そして学生証に内蔵されたランキングシステムが反応した。

『ランキング算出』


ぴぴび


『エルディア121位』


それに伴い、121以下のランキングが繰り下がります。

カトレアのランキングが122になりました。





カトレアは、医務室で意識を取り戻した。


ゆっくり身体を起こす、その動作だけで“育ち”が見えた。


身体を起こした瞬間、長い金髪が肩から零れ落ちる。

そして彼女は無意識にベッドの皺を整えていた。

一度だけ小さく息を吐くと、その瞬間だけ年相応の姿に戻る。


「……アス……

なんでここに……」


「……気がついた?」


アスの声は静かだった。


「……そっか負けたましたのね、私……う……頭が……」


何か大切なものを穢されたような感覚。

思い出そうとすると、ひどく頭が痛い。


アスは答えない。


ただ、ほんの少しだけ目を逸らした。

その沈黙が、すべてを物語っていた。





決闘後。

カトレアは医務室へと運び込まれ、エルディアはランキング上昇の仕様について確認していた。


アスは静かに俯いている。

その姿は儚く、美しい。

揺れる白いカーテン。青春。


美人ってふさぎ込んでても絵になるのズルいなと思いつつ、エルディアは学生証を光に透かしていた。


ランキングの仕様が書いてあった。


『勝者は敗者の順位を継承するものとする。』


カトレアの順位が下がり、エルディアの順位は29程繰り上がった。


ただ数字動いただけ。


魔術ランキングの数値は自動で出る。

だから教師の贔屓も、貴族の圧力も通じない。

この学園で唯一、“嘘をつかないもの”


エルディアはその事実に震えていた。



──ま、まじか。


ランキング上がると、学食に割引効くようになるの?

さらに設備が開放!?

参考書の閲覧権が増える!?!?


な、なんて事!?!?


何このランキングシステム!?

上げれば上げるほど恩恵があるの!?


──な、なんで凄まじいシステム


生まれ。

血筋。

家格。


そんなものを絶対視しながら――同時に。


『這い上がれるなら来い』


そう言わんばかりに、報酬をぶら下げている。

なんという恐ろしく性格の悪いシステム。


生まれで全てが決まるなんて、誰が決めたのよと言わんばかりに競争心を煽ってくる。


「無理だ」と絶望させながら、

 「でも前例はある」と希望を見せる。

ランキングに強制参加されている生徒を傷つもあるだろうが、だが同時に、“傷ついた分だけ上へ行けるかもしれない”とも囁いてくる。

まるでギャンブル…


──勝てば奪える

──挑戦権は与えた

──欲しいなら奪え


競争による、努力の強制……


そしてランキング一覧。

三位。

アルト・ウィンドレイ。


ランキング上位専用演習場。

高位術式閲覧。

一部教師の個別指導。

購買部優待。


テラ羨まシス!!!!


エルディアが首をかしげて悶絶いると、カトレアが起きていた。


「……アス……

なんでここに……

う……頭が」


エルディアは、即座に振り返る。


「やっほ。カトレア。」


「げ。

エルディア……」


カトレアは、露骨に嫌そうな顔をした。




場所を変える事にした。

いつものカフェだ。


エルディアが案内したのは、街でも有名な静かなカフェだった。

木漏れ日や紅茶の香りが、彼女は驚くほど彼女達に馴染んでいた。


カフェの空気は柔らかい。

学院ではランキング制度によって切磋琢磨を求められるが、ここではただの少女達に戻っていた。


「あなたにしてはおしゃれな場所をしっていますのね。」

「いや、いつもつるんでるやつの趣味。

嫌味な奴でしょ?」


「……?良い趣味だと思いますが?」


「……」

アスは思っていた。


エルディアちゃん!?それ、アルト様の事ですよね!?!?


やがてテーブル。


「なんでアスをいじめてたの?」


「いじめてたわけでは……

いえ……そうですわね……

この学園は、貴族社会全般に言えることですが、魔術が扱えないなどの、いわゆる不能者への扱いは杜撰なものです。

アスは、魔力価値ランキングこそ高いですが、魔術不能者です。

だから、退学をすすめておりました。

そこにエルディアさんがきたというわけですね。」


「なるほどねー

余計なお世話だったのかもね。

根は深そうだ。

それに藪蛇も多そう。」


「言っておきますが、平民への態度もかなりひどいですわよ。

あなた、耐えられますかね。」


「え……今んとこ、この学園って結構いいとこだなって……」


「脳天気がうらやましいですわ。」


カトレアは肩をすくめた。



「1か月後、クラス別のクラス対抗戦があるんです。

そこで本格的に各生徒の格が決まります。

つまり扱いも。

退学者はそこですごく増える。

まるで振いにかけられるように。」


「なるほどねー

そうなる前にアスを。」


「ええ。退学を求めました。

ついてこれなければ、ひどいことになりますので。」


「ふーん。すれちがってんねえ……」


「かもしれませんね。

ですけど、状況は待ってはくれません。

貴族社会を生き抜く事は、それだけ厳しいことなのですから。」


「まあ、貴族のルールは興味ない。

まずは決闘の景品の話だね」


「ムードもへったくれもありませんわね。

全く、さすが平民……

謝ればよろしいんですよね。」


「うん。

さ。

早く」


「……急かされると、なんか恥ずかしいと言うか」


珍しく歯切れが悪いカトレアの姿に、、アスが慌てる。


「いいのよ。カトレア。別に

私は……」


「します!

しますけど!!」


なぜかキレ気味のカトレアは咳払いを一つ。

そして真面目な顔でアスを見て、頭をゆっくりと下げる。。


「アス……本当にごめんなさい。

私が強引でした。」


「ううん。いーよ。

私のこと思って言ってくれたんだよね。」


アスは困ったように笑い、決闘の契約は果たされた。




静かな紅茶の香り。


貴族としての誇り。

友人としての謝罪。

そして互いを認め合う和解。


空気は、どこまでも穏やかだった。


エルディアはメニューを見ながら思った。

高級カフェ。

上流階級。

優雅な紅茶。


お金がない。


水で。




長くなったんでわけました。

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