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頭がおかしくてお金が欲しいイカれた精霊魔術師エルディア  作者: 無印のカレー
アステル奪還戦

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134/169

133話 決勝後3

「この下衆が」


「え……

下衆……!?

なんで!?!?」


エルディアはうろたえた

まじかよ。普通に引かれたんだけど!!!!


リリはそっと目を伏せた。


そのベルクの声には、笑いを許さない何かが滲み出していた。

怒りよりも、もっと深いところから絞り出ている。


「30年前、俺は星属性の才能を持った子供として、国に見出された。

『彼女』との絆を利用すれば、浄化の力を戦力にできると。

『もっと強くなりたい』『彼女を守りたい』、そう思って、未熟なまま強制同化実験に及び、そして30年前の悲劇は起きた。」


「――」


「それをやり方がぬるいだと?ふざけているのか貴様!!!

アステル計画とは聖星獣の力を完全に再現し、三十年前失われた星聖獣を、完璧な形で蘇らせる計画だ!!!!

扱いの難しさは、文字通り神を降ろすに等しい!!!」


「そもそもそれが矛盾してるんだ、

技術者なのに研究結果に私情をはさむなんて、結果を歪める最たるもの。

ベルク。私は常日頃から思ってるよ。

研究者は、クソであればあるほどいいって。

どこで足を踏み外したの?」


「足を踏み外しているのは貴様だ!!!!」



イラッ


記録用の水晶板の山。

日付ごとに几帳面に並んでいる。


エルディアは歩み寄ると、躊躇なくぶっ倒した。


ずざああああ!!


「貴様!?!?

何を!!」


「……研究記録に、こんな日記なんていらないんだよ!!!

『本人、恐怖の兆候あり。

鎮静よりも対話を優先』とか。

子守りか!?!?

なあ、研究は子守なのか、お前!?!?

研究結果に何、思い出積み重ねてんだ!!!!

ああっ!?!?!?」


次に、間髪入れずに培養槽へ突撃。


「なんで技術は本物なのに、「切り捨てる」という一番簡単な効率化だけを、頑なにやってないのよ!!!

この培養槽の数で、全部稼働痕がある!!

栄養剤の減り方も均一!

つまり――全部、ちゃんと個別に世話してる。

効率考えろ惰弱が!!!!」


そして今度は椅子を蹴りつけた。


流石にリリも思った。


(こわっ

姉御こわっ!?

なんで椅子とじゃれ合ってるんすか!?

流石に引くっす!!)


「極め付けはこの椅子よ!!

子供が座るには少し大きい、けれど大人が座るには小さすぎるサイズ。

埃はかぶっていない。

定期的に、誰かが座っている!!

どうせ新しいアステルが目を覚ました時、話をするための椅子でしょ!!

技術は天才!!

判断は素人以下!!

律儀か、お前!?!?」


「くっ……」


(――こいつ。

やってることはめちゃくちゃなのに、妙に指摘だけは正確で微妙に突っ込みづらい!!!!)


「……」


「今度は無言で静止か?

言いたいことは終わったようだな。」


数秒の沈黙。


「……別に。」


何が!?!?






22の瞳が、揺れることなく、ベルクを見る。

けれど、ほんの一瞬。

視線が、アステルの方へ、流れた。


「……アステル姉さん……」


アステルの声が、震える。


「駄目……お願いを聞かないでトゥーラ……

継承なんて、あなたまで――」


「父さんが望むなら……」


「あなたは、あなただよ。

わたしが、そう思う。」


22の瞳が、初めて大きく揺れた。


「……姉さん……」



「あなたは、あなただよ。」


トゥーラは声の方を見て、その一言だけで『その日』から積み上げてきたものが崩れた。


トゥーラの拳が、震えていた。


寝台の上のアステル。

目だけは、まっすぐこちらを見ていた。


――それがただ、妹を見る目だったから。


(……トゥーラ、って。)


名付けたのは、この人だった。


研究員も、父も、誰も彼女を「次の個体」としか呼ばなかった夜。

アステルだけが、こう言った。


『……ずっと、そう呼びたかったんです。トゥーラって。えへへ。』


トゥーラ。

それが、父以外の誰かから与えられた、『初めて』。


ベルクを止められなかった、あの、いつかの夜の事を思い出す。


ベルクの書斎の灯りが、朝まで消えなかった夜。

書類を破ろうとして、破れなかったベルクの手を扉の隙間から見ていた夜。


あの時、トゥーラは何も言わなかった。


止めて、と。

ただ一言、言えばよかった。


けれど、言えなかった。

言葉にした瞬間、全部が崩れてしまう気がした。

自分が要らなくなる気がした。


だから、黙っていた。

ずっと、黙っていた。


「……姉さん……

……私、父さんを、止めたい。」


トゥーラの拳が、震えていた。




ベルクの動きが、止まった。

遠くから規則正しい足音が近づいてきたからだ。

一つではない。


何十もの足音が。


「……ちっ。

よくやるな。王国のものを巻き込んだか。」


「まーね。逃がさないよ。ベルク。

研究だけじゃない。

それにダイコンヌの話もまだ終わってないしね。」


(姉御……

まだ大根の話をしてる……)




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