↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
頭がおかしくてお金が欲しいイカれた精霊魔術師エルディア  作者: 無印のカレー
アステル奪還戦

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
132/167

131話 決勝後

「――勝者、エルディア選手!!

アステル選手。起き上がりません!!

――医療班!!

至急、医療班をお願いします!!」


実況の叫びに応じ、救護担当の職員が、何人も、闘技場へと駆け込んでくる。

担架が、慌ただしく運び込まれた。


歓声が上がりかけて、そのままざわめきに変わっていく。


「おい、あれ……大丈夫なのか……」

「意識ない、って言ったよな、今……」


「アステル選手の容体を鑑み、表彰式は一旦、保留とさせていただきます。

容体が確認され次第、追って、執り行われる予定です!」


場内アナウンスが、繰り返しそれを告げた。



エルディアは、ポチの背に乗ろうとして普通によろけた。

膝に、力が入らない。


「……っと。」


「大丈夫ですか?

担架で運びましょうか?」


「大丈夫、大丈夫。

余裕でーす。」


係員の視線は、勝者への称賛、戸惑いと、そして心配が、入り混じった目だった。


頑張ってポチの背に乗ると走り出す。


(急ごう。)


──試合中にリリからの念話があった。


◆


──リリからの念話


『――姉御。聞こえてるっすか。』


(――今、それどころじゃないんだけど!

おねーさんをゴリ押しで煙に巻くので必死なんだけどっ!?!?)


『煙……?

手短にいくっす。

地下で、ちょっとした収穫があったっす。

『アステル計画」。

闘技場の真下にベルクの隠し研究所があったっす。

『アステル』は、量産されてるっす。

今戦ってる相手は、多分何代目かの器っすね。』


(……へー。

便利じゃん。いいね。何人もいるんだ。)


『便利って姉御……

詳しいことは、また後で。

ただ、代替わりはかなり速そうっすね。

とりあえず、頭の隅に、置いといてほしいっす。』


◆


ポチの背に、力なくまたがったまま医務室へと続く通路を進んでいく。


「――エルディア!!」


聞き慣れた声。

角を曲がった先、アルトが、こちらに向かって、駆けてくるのが見えた。


「そんな傷だらけでどこ行くんだお前!!

死ぬぞ!!!」


「アルト。

うわ」


エルディアは、顔だけ向きを変えようとしたら、ポチの背から普通に落ちた。

アルトが普通に支える。


「――っと。

無理すんなよ。」


「わかってる。

だけど時間がない。

アルト『例の件』は!?」


「カミラを通して、監査長には通してあるが……」


「おっけ。

急ぐよ。乗って。

移動しながら説明する。」


ていうか、乗せて。



「――珍しいな。

お前がそこまで、人の為に急ぐのは」


「いつも人の為に動いているよ。私は」


「まず自分のことで、他人は次に余裕があったらだろ。」


「……いや、まあ、人でなしな自覚はある……」


気まずい感じでエルディアは頬をかいた。

医務室へと続く、通路。

エルディアの、頭の片隅で、ずっと、引っかかっていることが、あった。


(――来ると思ってたんだけどな。ベルク。)


決勝。

勝った方が、総取り。

魔王直々の、裁定付きの代理戦争。


あれほど、執着していた研究の集大成。

アステルが、崩れかけていた瞬間なんかは、普通なら、なりふり構わず何か仕掛けてくる場面だった。


別のアステルコピーの、投入。

審判への、横槍。

同化そのものへの、妨害。


手はいくらでも考えられるが、何もなかった。


(動かなかった理由がある?)



──サキュエラ。聞こえる?


『サキュエラ。教えて。

ベルクは何してた?

決勝の間。』


『あ、ご主人様お疲れ様です。

観客席から、ずっと見てましたよ。

動かずに。」


「今は?」


『医務室から移動中です。

追跡はしてますけど。一応。』


まずい。

先手を打たれた。



『静かなのは、魔王様の裁定を律儀に守ってたんじゃないんですか?

言い訳は認めんって、魔王様おっしゃったんですよね。

考えすぎじゃないでしょうか。』


『おそらく『逆』なんだよ。

ベルクは、魔王様からの指示があってアステル計画があったんじゃなくて。

アステル計画が、魔王様の命令よりも先にあって、それが最上位にあったんじゃないかな。」


サキュエラは止まった。


──やっべ。わっかんねえ。

頭いい人はこれだから!!

私サキュバスだもん!!

肉体労働が専門だもん!!


「ベルクが、あの場で動かなかった理由。

律儀にルールを守った、じゃなくて。

『継承』が発動する事自体が、あいつの目的の一部だったなら、勝敗なんて最初からどうでもよかった、って話になる。

私が勝とうが、負けようが。

あの子が、意識を失おうが、失うまいが。

そもそも"継承"のスイッチが入ことが最上位だとしたら、魔王様の裁定なんて実はあいつにとって、二の次だったんじゃないかって。」


サキュエラは思った。


へー!!!!


『――だとしたら、ご主人様。

急いだ方がいいかもしれません。

リリ様が言ってました。

継承の所要時間。

かなり短いっておっしゃっていました。』


『……急ごう。』


エルディアの、ポチの足を速めた







その部屋は、静かだった。


歓声も、実況の絶叫も――ここには届かない。

消毒液の匂いと、微かな魔力灯の唸りだけが、部屋を満たしている。


ベッドの上、アステルは眠るように横たわっていた。


「――魔力枯渇による意識不明。

命に別状はありません。

ただ、因子との同化状態が、まだ完全には解けていません。」


「ほう、それだけに惜しいな。

因子との同化は、想定より早い接触だった。

個体の耐用は――長くはもたないだろう。可及的速やかに、次を急ぐ必要がある。」


ベルクには、一瞬だけアステルに『彼女』の面影が重なって見えた。


「……30年前の悲劇を繰り返させるわけにはいかぬ。」


「……ん……」


アステルの瞼が震える。


「――目が覚めたようだな。

アステル計画・第21世代個体、意識回復を確認。」


「……ベルク。

もう次の準備、してるんですか。」


「因子との同化は、個体への負荷が大きい。

次の受け皿を並行して準備するのは、当然の措置だよ。」


君の『妹』に全てを渡す。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。