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頭がおかしくてお金が欲しいイカれた精霊魔術師エルディア  作者: 無印のカレー
全国大会決勝戦

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123話 アステル戦3

アステルが視線を逸らした。

そこには、やっちまった的なバツの悪さがあった。


「……祭りの、案山子……。」


「そう!! あの一体一体に、村の人たちの想いが込まっていた!!

おねーさんが気持ちよく吹き飛ばしたリッチだって、隣町の民芸品コンテストで入選してた個体だし!!」


「リッチが民芸品コンテストに、入選……?」


「入選くらいするよ!!

本当にリッチにしか見えないだから!!

案山子として鳥よけの効果は、通常の案山子の比じゃない!!

最近の案山子コンテストはガチなんだから!!

バカにしないで!!」


「……それは知りませんでした。

でもあれ……本当にリッチだったよーな……

案山子じゃなくて……」


「シャラップ!!

知らなかったで済むと思うの!?思うのか!?

ペットに命なんてないって言ってるようなもんだからね!!

それ!?!?

動物愛護団体が飛んでくるから!!」


アステルの持つ杖の先、光の密度が僅かに揺らぐ。


「実況席。

確認だが……エルディア選手の発言、事実確認は……」


「――取れません!!

というか案山子コンテストの真偽より、今、両者の攻防そのものが止まっていることの方が問題です!!

これ試合として、大丈夫なんですか!?」


「大丈夫では、ないな……。」


観客席から、ぽつぽつと笑い声が漏れ始めていた。


「――エルディアー!! 案山子の話もういいから続き!!」

「がんばれー!!」

「アステルもそろそろ許してあげてー!!」


観客の野次に、エルディアがぐっと拳を握る。


(――よし、流れはこっちだ……!!)


「聞いた、おねーさん!?

みんなおねーさんに言ってるよ!!

『そろそろ許してあげて』って!!

だから、全面的におねーさんが悪い!!

世論が完全にそういってる!!!」


「……なぜ、私が悪者に……」


アステルの声に、初めて明確な戸惑いが滲んだ。

もはや水掛け論。


だがエルディアの心中は穏やかではない。


(……今戦闘したら終わる!!

──なんとか引き延ばすしかない!!)


「――いい?おねーさん。

今年のお祭りに出すはずだった案山子を壊したということは、地域経済を破壊したに等しい!!!!」


エルディアが、流石に厳しいかと思いつつ。地面に転がる焦げた案山子の残骸を指差す。


「案山子が壊れることで、お祭りの目玉がなくなり、観光客が減る。

つまりそれは最終的におねーさんが村を滅ぼしたことになる!!!!

それにそれ、そもそも村のお祖父ちゃんが作った、最後の一体の形見なんだよ!?

今年のお祭りに出すの、ずっと楽しみにしてたのに。」


「……え。それは4体目の案山子ですよね……

それは28体目……」


「細かいことはいい!!!

そうやって状況がそうだったからって、気にせず人の想いを軽く扱う事を、私は問題にしているんだ!!

知らなかった、では済まされない!!」


観客席から、即座に野次が飛んだ。


「な訳あるか!!」

「今作った設定だろそれ!!」

「さっきまでお前が試合に持ち込んだカカシだぞ!!」

「平気で嘘つくのやめろ!!」


「――!!違いもん!!ちゃんと思い入れがあるもん!!」


「無えよ!!」

「数分前に爆発させてたよな!?」

「自分で盾にしてたのお前だろ!!」


アステルは普通に動揺していた。


「そ、そうなんですか……ご、ご遺族に、ご迷惑を……」


「アステル選手、信じちゃだめです!! 完全に嘘です!! みんな分かってます!!」


観客席のツッコミ。


「アステルだけ気づいてない!!」

「真面目か!!」

「そこは疑えよ!!」


「え、嘘なんですか!?」


アステルの声が、震えるすがるような響きが混じっていた。


「うっさい観客席にいる外野は黙ってろ!!

それに実況!!事実確認取れてないって自分で言ったばかりじゃん!!

適当なこと言わないで!!

嘘じゃない!!嘘じゃないよおねーさん!

横からちょろちょろ、安全な位置で口を出すやつと、今まさにあなたに、真剣に向き合ってるやつ。

どっちの言葉を信じるの!?」


「そ、それは……」


アステルの瞳が、揺れる。


観客席が、静まり返った。


「いや明らかに違うだろ!!」

「距離感の話にすり替えてんじゃねえよ!近くにいれば嘘も本当になるわけねえだろ!!それ詐欺の常套句だぞ気づけ!!」


「――なんでみんな、そんな事言うの!?

私は真実しか話してないのに!!!

ひどい!!」


「バレバレだからだよ!!」


会場、全員の声が揃った。


「そんで、おじさんの奥さんが実は、死んだ後じいさんか浮気していたと――」


「――アステル!!」


鋭い声が、グランディア控え席の一角から、割り込んだ。

アステルのチームメイト、ロゼだった。

身を乗り出し、必死の形相で叫んでいる。


「魔力、回復されてるぞ!! アステル!!」


「……え。」


アステルが、瞬きをした。


「時間稼ぎだよ!!

エルディアのそれ全部、時間稼ぎ!!

いい加減、気づけ!!」



観客席は、変わらず冷めた目のままだった。


「今更かよ」

「律儀か」


実況席も、平然としていた。


「――ええ、こちらとしては、開始早々段階から、時間稼ぎである可能性を、指摘しておりましたが。」


「古典的な手だな。

エルディア選手の話の途中で既に魔力の回復傾向は観測できていた。」


アステルだけが、はっと、我に返る。


「……え。時間稼ぎ、だったんですか。」


エルディアが、ポチの背の上で、ぼそっと呟いた。

。

「――最低限の魔力回復成功。

おねーさんのことが、ちょっと好きになってきたよ」


ちょろくて




エルディアは懐から、一枚の装飾の施された豪奢なスクロールを取り出した。


金の縁取り。

複雑な紋様。

一目で、量産品とは違うと分かる異様な存在感。



実況席、解説が、目を、細めた。


「……あれは。」


「どうしました?」


「――スクロールだな。それも、かなりの上物だ。

いや、上物どころの騒ぎじゃないぞ!?!?

王侯貴族御用達の、臨時領域魔術のための特注スクロールだ!!!」


「あ、あの、詳しく教えていただけると……」


「相場で言えば――金貨、1万枚ほどする。」


会場が、凍りついた。


「……は?」



「――これは事前に、領域魔術を刻んでおけるっていう極めて高度な機能がある。

『形見』だからね。」


観客席が、爆発した。


「もはや『形見だから』をつければいいみたいになってるぞ!!」

「万能の呪文かよ!!なんだよ金貨1万枚って!!」

「『飛べるのか』『形見だから』で説明終わりそう。」



「――領域魔術。

夢幻百貨店《ファンシー・ショッピングモール》!!」


スクロールが、光を放った。


刻まれていた紋様が、瓦礫の下から一斉に展開する。

闘技場の地形が、急速に書き換わっていく

カラフルな看板、噴水、通路、天井、まるで、どこかの、賑やかな商業施設のように。




エルディアが、静かに告げる。


「私と関係のある、とある魔術師のダンジョンと繋いだ。

効果は単純だよ。

この領域内では、ショッピングモールのご主人様《リリ・ヴァルフェリア》を満足させるように、あらゆるものがファンシーになる。」


アステルは、固まった。


「――は?」


何それ

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