表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
頭がおかしくてお金が欲しいイカれた精霊魔術師エルディア  作者: 無印のカレー
魔術学校学生

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
12/73

11話 アス

医務室。

教室でも家でもなく“一時的に世界から外れた場所”。


アスは医務室で寝ていた。


アスは、いかにも「貴族の娘」だった。

襟は一切乱れず、袖口もきっちり留められ、リボンも寸分違わず中央。

“ちゃんとしなきゃ”が、そのまま服装に出ている。


「アスとカトレア。

貴族の間ではわりと有名だな。」


医務室にくるなりアルトは言った。


アルトの着こなしには、妙な“慣れ”があった。

ブレザーの前は開けており、ネクタイも少し緩い。


ただ、ポチの口でくわえられてきたので、アルトは涎でべちゃべちゃしている。

非常に汚い。


なぜここにアルトがいるか。


エルディアは、アルトを呼んでいた。

ポチが拉致してきたともいう。


困った時に頼りになるのは、やはりアルト。


「はい。アルト。タオル。」


「……おまえ、これどこにあったタオルだ?」


「医務室の奴。

そこにかかってた。」


「ナチュラルに学校の備品を使うんじゃねー」

「お茶もいれよーか?」


それも医務室のやつだから。



結局お茶を入れた。


「アスは昔から有名だ。欠陥姫なんて呼ばれてる。

まあ、貴族連中が勝手につけた忌み名だな。

魔力総量はトップクラス。

でも魔術発動ができない。


カトレアは商売貴族出身。

魔力総量ではなく、魔道具でバフを掛けるタイプ。

どちらかといえば、人と状況を動かすタイプだな。


で、お前がアスを泣かせたと。」


「私が泣かすわけないでしょ。

校舎の壁や塀をぶち抜く算段をしていたところで、校舎の裏で彼女達がごたついてるとこに丁度出くわしたのよ。」


「校舎の壁や塀をぶちぬこうとするな。

そもそも。」


「せんせーも言ってたよ。そんなこと。

まあ、そんで介入してそっこー怒りを勝った。

ちょっとEクラスなのに貴族いるんだって質問したらクソキレた。」


「一種の才能だな。

地雷踏むのマジで得意だもんな。」


「ふっ。」


ふ、じゃねえから




「う……」


ほどなくしてアスは、起きた。

彼女は周りを見渡した。


そこにいたのは、アルトと、エルディア。


「アルト様?

あと……エルディアさん、でしたっけ。」


「どーも。

アルトって、アスと知り合いなんだ。」


「まーな。

これでも俺は魔術系貴族の名家だからな。

この学園の生徒は大体知ってるぜ。」


エルディアは完全に固まった。


「この爽やか優等生イケメンボーイがっ!!!」


アルトは思った。

なぜキレる。


「このアルトのできるやつムーブを、いつか許せる時が来るかな。私は。」


「来ないんじゃねーか。

まあ、そこはいいだろ。

話を戻そうぜ。」


「だね。

問題一つ。」


エルディアは言い切った。


「カトレアをどうやってぶち殺すか。」

「殺すな。

おめー本質的にズレてんだよ。」


「仲が良いんですね。」


「腐れ縁だよ。

見ろよ。ほっとけねえだろ。」


いつの間にか医務室に侵入していたでかい狼に、エルディアがよだれに涎でべちょべちょにされていた。


えらいなーおまえーポチー

よーしよーし

うおおおー


アスは遠い目をした。

確かに。



アスを屋敷まで送る。

屋敷の前で、アスは丁寧に頭を下げた。


「アルト様。

エルディアちゃん。

今日はありがとうございました。」


「体弱いんだから無理するなよ。

学校でなんかあったら俺のこと頼ってくれていいからな。

知らない仲じゃねーし。」


「お気持ちだけ頂戴しますね。」



アスが去る足取りには、確実に存在する“明日への緊張”があった。

はっきりとは話していないが、明らかに心配が解消できていない。


屋敷の扉が閉じる直前、ほんの一瞬だけ振り返っていた。


「……大ジョーブかな。

アスって、すごく、幸が薄そう……」


「てゆーかいいのか?

結局お前、明日決闘なんだろ?

なんも話してねーけど。」


「カトレアを合法的にぼこせばいーんでしょ。

単純な話だからいーよ。」

「そもそもボコすな。」


「どーでもいーけどアルト手伝って。」


「何をするんだ?」


「学校の塀に穴を開ける。」


「死ね。」




次の日。


決闘を控えて。

校舎裏の訓練場は、妙に静かだった。


「カトレア……だめだよ。

私が辞めるから。学校を辞めるから!!

決闘なんてやめて!!」


「アス。そこで見てなさい。

あなたがいるから、平民の未来が一つ消えるさまを」


「だめ……」


アスは手を伸ばす。

魔力を練る。

凄まじい魔力が一瞬だけ膨れ上がる。


だけど


「く……」


霧散してしまう。


欠陥姫。


「そこで見てなさい。

アス。

魔術ランキングが全てのこの世界で、低いものかどうなるのか。」



カトレア121

Eクラス内では、トップだ。

ランキングは、優しくはない。

それはただ一つだけを示す。


お前はどこに属しているか。


カトレアがその場を去っていく。

アスを残して。




みじめだった。

そして無力だった。


(どうして私は、……何もできないんだろう……)


誰かの枷にしかなれない自分が嫌いだった。


それでも、立っていることだけはやめられなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ