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頭がおかしくてお金が欲しいイカれた精霊魔術師エルディア  作者: 無印のカレー
全国大会決勝戦

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112/168

111話 死闘

膝をついていたオズワルドの体が、ミノタウロス・オメガの、一振りで宙を舞っていた。

「ぶ、ぶも……?」


「な、なんで拙者を!? 味方でござるよ!?」


悲鳴と共に闘技場の壁際まで吹き飛ばされる、オズワルド。

会場が、一斉に、どよめいた。


「おいおい、召喚主を攻撃したぞ!?」

「制御、失敗してんじゃねえか!」

「これで、大丈夫なのか、アーカム……」


ロゼでさえ、あまりの、光景に、言葉を、失っていた。


「……あれ?」


エルディアが、目を瞬かせる。


「あの子、オズワルドに、傅いてる……?」


観客席が、一瞬、静まり返った。

一呼吸、遅れて――実況が、ハッと、気づいたように、声を、上げた。


「……!?ミノタウロス・オメガが、オズワルド選手に跪いています!?

これは、まさか……制御には、成功している、ということでしょうか……!?」


解説席からも驚きの声が、上がる。


「なら先ほどの、吹き飛ばされた一撃は……

まさか、オズワルド選手……振り返った、ミノタウロス・オメガの、動きだけで、吹っ飛んだ、ということか!?!?」


実況の、声が、上擦る。


「つまり――攻撃されたのではなく……巨躯が振り向いたその動作の風圧だけで吹き飛んだと……!?」


「オメガが傅いているということはそう判断するしかない!!

オズワルド選手の術式は、成功した。

……問題は、術式じゃなく、単純にオズワルド選手の耐久力が紙一重だった事だけだ!」


「過ぎたるは猶及ばざるが如しというやつですね!!非常に惜しい!!」


観客席が、一斉に、どよめいた。


「じゃあ、なんだ、あれは、ちゃんと、オズワルドの、指揮下に、あるってことか!?」

「制御、成功してんじゃねえか!! なんで、吹っ飛ぶなよ!!」


壁際で、へたり込んだままのオズワルドは、傅くオメガを、呆然と見つめていた。



「起きろ!! オズワルド、起きろ!!」

「そうだ、諦めるな!」

「立てー! 立てー!」

観客席から、いつしか、そんな、声援が、飛んでいた。


いつしかオズワルドは、観客を味方につけていた。

予想外の巻き込まれ具合と、必死さが妙な人気を呼んでいた。


「……拙者、頑張らねば、ならないでござるな……

エルディア殿の力になるために、力を振り絞らねばならねばならないででござる。」


壁際でゆっくりと体を起こしながら、オズワルドがそう呟いた。


その纏う気配が僅かに変わる。

荒々しい気迫が静かに膨れ上がっていく。


「――ッ」


ロゼが、思わず、身構えた。


(来るか……!)



そして――


彼は、静かに、立ち上がった。


「うおおおおおおお!!」


割れんばかりの、歓声が、闘技場を、揺らした。

観客席が、総立ちになる。


「立った! 立ったぞ!」

「やっぱり、あの選手、只者じゃない……!」



――そして。

オズワルドは、立ったまま、気を、失っていた。



「――そこまで!」


審判の、旗が、上がる。


「勝者、ロゼ選手!」



「……」


その、事実に、気づいた、観客席が、一斉に、脱力した。


「立っただけかーい!!」

「気迫、なんだったんだよ!!」


会場中から盛大なツッコミが飛んだ。


エルディアは、控え席で腹を抱えて笑っていた。





「な、なんだったんだ、今の試合……」

「アーカム側の、混乱っぷりが、すごかったな……」

「でも、あの、召喚術式は、明らかに、規格外だったよな……?」


困惑と驚嘆が入り混じったざわめきの中。


オズワルドは担架に運ばれながら、それでもどこか満足げな顔をしていた。


「拙者の術式が……まさかエルディア殿の、切り札の原型になっていたなんて……悪くない負け方でござったな……」


「ご、ごめんオズワルド……

笑い過ぎて腹が痛い。

ひぃーひぃーふぅー……

ひぃーひぃーふぅー……」


「すまぬエルディア殿……だが拙者はもう、無理でござる。もう、拙者、立てないでござる」


「もう、しゃべらないで……

死ぬ……オズワルドに殺される……」


壁際でへたり込むようにエルディアは腹を抑え、オズワルドはゆっくりと首を横に振った。


アスはそれを見ながら思っていた。


オズワルド楽しそう……

満足気に笑っている。

あなた、それでいいの?


地獄絵図なんだけど。


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