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頭がおかしくてお金が欲しいイカれた精霊魔術師エルディア  作者: 無印のカレー
全国大会決勝戦

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111/166

110話 先鋒オズワルド

「先鋒――アーカム魔術学院より、緊急交代選手。

オズワルド選手。」


その名が呼ばれた瞬間、競技場全体に、何とも言えない空気が流れた。


「……誰?」

「聞いたことない名前だな」

「え、あの子、大丈夫なの?」


対する先鋒、ロゼ・キャンベルは、実力者らしい鋭い眼光で、対面のオズワルドを見据えた。全身から立ち上る覇気だけで、並の相手なら竦み上がるほどの圧だった。


「……よろしく」


短く、しかし油断のない一言。

対するオズワルドは、震える声で、エルディアの方を振り返った。

ボディーランゲージである。


『え、エルディアどの。流石に、無理ではござらぬか』


『いけ。かましてやれオズワルド。Eクラス魂を見せろ。」


『拙者、断じてそのような自信はないでござる。てゆーかEクラス魂ってなんでござるか。』


『オズワルド。ぶっ潰せ。

あんたは、私たちの中で一番"化物"に近い素質を持ってる。自信持って』


エルディアが、両手で大きく丸を作り、次に力こぶを作るポーズ。

実況が、困惑した声で割って入った。


「おーっとオズワルド選手。しきりに控えメンバーとコンタクトをかわしている!!作戦会議か?!」


観客席が、ざわつく。


「今の、何のジェスチャーだ……?」

「わかんね、暗号か何か……?」


解説も、戸惑いを隠せない。


「……身振り手振りだけで、複雑な意思疎通を図っているなら……

ギリギリ……高度な連携作戦ともとれるが……」


キモデブメガネと、覇気を纏う実力者。あまりに不釣り合いな対面に、観客席からは、失笑にも近いどよめきが広がっていた。


対するロゼは、その様子を静かに、しかし油断なく見つめていた。


「……随分と、変わった連携をする学院だな」


彼女の中で、警戒のレベルが、静かに一段階、引き上げられていた。


審判の合図が響く。

「――試合開始!」


「……行くしか、ないでござるか」




「いけ。オズワルド。世界に見せつけてやれ。

あんたの闇属性の才能。

この私をして深淵を思わせるその才覚を。」




ネクロマンス。

「――サモン、スケルトン」


展開された魔法陣は、これまで大会が見せてきたどの術式よりも、緻密で、深いものだ。


「……え」


実況は、思わず目を見張った。

魔法陣から、次々と、白骨の兵士たちが姿を現していく。


一体。

十体。

百体。

千体。


「な……!?」


観客席が、どよめいた。


競技場を埋め尽くさんばかりの、白骨の軍勢。

その圧倒的な物量に、対峙するロゼでさえ、一瞬、明確な動揺を見せた。


「こ、これは、一体……!」


実況官の声が裏返る。


「せ、先鋒戦、開始直後にして……ア、アーカム魔術学院、オズワルド選手、召喚数、既に数百体を突破……!」


「な、なんだこの数は……

予選の資料には、この生徒は名前すら記載がなかったははずだ……」


「ノーマークだったということですか?」


「そうとしか……いや、それにしても、この術式の精度……並の闇属性術者では、あり得ないレベルだ。

もしや、これが……アーカム魔術学院の、"隠し玉"だったのでは……

こんな光景……大会始まって以来、見たことがない」



エルディアは、どや顔で続けた。


「誰もがオズワルドの召喚には二度驚く。

まずはその召喚数。

そして二度目の驚きはさらにすさまじい。」



一体一体のスケルトンは、召喚数の多さに反して、恐ろしく脆かった。

統率も連携もほとんど機能していない。

ただ闇雲に押し寄せるだけの、烏合の衆。


「はぁッ!」


ロゼの一閃が、まとめて数十体を薙ぎ払う。


二閃、三閃。


千体の骨の軍勢は、あっという間に、次々と崩れ落ちていく。


「……なるほど。数だけ、か」


ロゼは、静かに構えを取り直した。



エルディアは強く頷く。


「そう。数だけ!!!

召喚できても、制御の才能が致命的にかけている!!それがキモデブ眼鏡!!オズワルドの真骨頂!!」


「ね、ねえエルディア。エルディアってさ、なんでそんなに楽しそうなの?」


「いや、ぶっちゃけ勝てるとは思ってないし。

オズワルドってさ、基本ギャグ担当だし。

にぎやかしっていうか」


「こいつ、まじでひどい。」



オズワルドが、悲鳴のような声を上げる。


「な、なんで!? 拙者の最高傑作なのに!?」


「量産しただけで、質が伴ってないんだろう。……そもそも、それだけの数を、まともに制御できているのか?」


ロゼの冷静な指摘に、オズワルドはぐうの音も出なかった。


「で、できてないでござる……」


最後の一体が崩れ落ちるまで、大した時間はかからなかった。


「終わりだな。オズワルド。

貴様の召喚数には驚いたが、それだけだ。

次は制御を覚えて来い。それだけでも相当上にいけるだろう。」


「まだでござる……

『亡骸に二度目の目覚めを。

朽ちた器に新たな意志を。

拙者が繋ぐ、糸の導きに従うがいい。』」


「……」


低く、紡がれる、詠唱。

ロゼは油断なく構える。


ロゼはそのままオズワルドの秘儀を受け止めるつもりなのだろう。

まさに王者の貫録。


崩れ落ちたはずの骨片が、地面の上で微かに震え始めた。


「『起きろ。我が眷属よ。』」


それは一つの、巨大な輪郭を形作っていく。


地響きと共に姿を現したのは、漆黒の巨躯。

生前を遥かに、凌駕する禍々しい圧を纏ったアンデッドの牛頭


「ミノタウロス・オメガ《召喚》」


「な……!?」


ロゼが、思わず、後ずさった。




エルディアは、その巨躯を静かに見上げていた。


「甘く見たね。

私の術式はオズワルドの術式を模倣したものだ。

つまり、オズワルドがいなかったら――ミノタウロス・オメガは生まれてない」




漆黒の、巨躯が、緩慢に、動いた。


その、巨大な、腕が――



オズワルドを直撃した。



「おおっと!!オズワルド選手が、吹き飛ばされたぁぁぁ!!?」


実況の、絶叫が、闘技場に、響き渡った。




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