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頭がおかしくてお金が欲しいイカれた精霊魔術師エルディア  作者: 無印のカレー
全国大会決勝戦

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109/169

108話 急増メンバー

医務室。


ベッドに横たわる選手たちの容体は、思っていた以上に、深刻だった。


「熱、まだ下がりません……」


医療班の一人が、額の汗を拭う。


「毒の反応、想定より、強い……強力な解毒用の魔術やポーションを使用しているんだぞ。こんな短時間で、これだけの人数を同時に無力化するなんて――普通の神経毒じゃ、あり得ない。」


うなされるリリアの額。 荒い呼吸を繰り返すリシェル。 目を閉じたまま動かないディオン。

他の生徒も同様だ。意識が戻っているのは、まだ誰一人としていなかった。


「顧問の先生も……」


医療班の一人が、視線を、隅のベッドへ、向ける。


顧問もまた、意識を失っていた。

普段選手たちを統率する立場の、その人物までもが同じように倒れている。


「引率の教師まで、無力化するなんて……これは生徒相手の悪戯なんてレベルじゃない。本気で、アーカムを、潰しにきてる」


エルディアは、医務室の面会に来ていた。

顧問の先生の前に、立つ。


「……先生。

……せっかくだから、言わせてもらうけど。先生、ろくなことしなかったよね。

まず、学校の方が私を全国大会選抜に召集しといて、いざ来たら『Eクラスの平民は帰れ』。

大会始まってからも、フォローどころか、空気だったよね。困ってる時、一回でも助けてくれた記憶ある?

予選で36万点叩き出した時も、褒めるどころか『規定違反じゃないのか』って一番最初に疑ってきたの、先生だからね。」


寝息だけが、返事だった。


「あと、これは今更だけど。名前、何回も間違えられた。

エルヴィアとか、エルミアとか。選抜になって、もう結構経つんだけど。

だから私は常日頃から思っていた。

先生、はやく死ねばいいって。

とりあえず今はそんなところかな。」


踵を返しかけて、思い出したように、振り返る。


「そういえば先生、最後にいい仕事したよ。

それは、敵の毒を喰らったこと。

これで、私が先輩達の変わりに選ぶアーカムの選抜メンバーに、余計な茶々を入れられずに済む」


満足げに、頷くとにこりと笑った。


「まあ、勝つよ。

起きた時には全部終わらせといてあげる。」


――一連のやり取りを、隣のベッドの付き添いで聞いていた者、通りがかった医療班、皆が、同じことを、思っていた。


(ひでぇ……

こいつ。何しにきたんだ。)



エルディアは、リリアのベッドの前に、立ち止まった。


汗ばんだ額、荒い呼吸。 うなされる、その顔を、じっと、見下ろす。


「リリア先輩。肉、食う?」


「食わねーよ。」


うっすらと、目を開けて。 声は、掠れていたが、ツッコミの勢いだけは、健在だった。


「私の姿、見ろや。」


「あ、それもそっか」


エルディアは、素直に、頷いた。


「まあ、また今度で」


「今度もいらねーよ……」


小さく、笑おうとして、リリアは、また、咳き込んだ。


「……エルディア。

決勝、出るんでしょ?」


「うん」


「誰、連れてくの」


「まだ秘密」


「……」


リリアは、呆れたように、息を、吐いた。 それでも、その目には、僅かに、安堵の色が、浮かんでいた。


「……勝てよ」


「勝つよ」


即答だった。


「起きた時には、全部、終わらせといてあげるよ。

あと、先生にぼろくそ言ったのだまっててくれない?

いや、リリア先輩起きてたとは不覚だった。

全部聞かれてたよね?」


「全部ね……」


「あちゃー」


あちゃーじゃねえから。


「リシェル先輩起きてるかな?

ついでにからかってこよっと」


やめろー。

本当に死んじまうー。




決勝戦。控室。

エルディアは、並んだ四人の顔を、順に見渡して、強く、頷いた。


「最強の、メンバーを、揃えた。

これなら、いける」


「いや、絶対、いけないと思うでござる」


特徴的な、語尾の返答が、あった。


オズワルドだ。

露骨に、渋い顔をしている。


「拙者たちが、決勝戦の急造メンバーでござるか?

弱小魔術学院のEクラスでござるよ?

しかも相手は、あの、王立グランディア魔術学院でござる。舐めてかかっていい相手では、ないでござる」


「大丈夫大丈夫、なんとかなるから。」


「その『なんとかなる』を、拙者は、何度、聞いたでござろうか……そして、その度に、とんでもないことになる場面を、何度、見てきたでござろうか……」


オズワルドが、遠い目を、する。

カトレアが、急に真顔になった。


「……待って、ねえ、そもそも待っていただけますか?」


「何?カトレア」


「ねえ、この流れまさか、わたくしが出場するんですの!?!?」


「……今ごろ、気づいたの?」


エルディアが、半眼で、見返す。


「聞いてません!!!!」


「いや、言ったし。今。

それにさっき、ちゃんと言ったよ。『先輩たちが倒れたから、ちょっと来て』って。」


「それ、説明になってませんから!!」


カトレアが、頭を抱える。


「役割の説明とか、対戦相手の情報とか、何一つ、聞いてません!!

いきなり『来て』の一言で、召集されて、気づいたら、闘技場の入場口ですのよ!?!?」


「まあ、細かいことは、いいじゃん。」

「良くないですから!!」


アスが、おずおずと、手を、挙げた。


「エルディア……まさか、私も……?」


「いや、そりゃアスもだって。

状況、カトレアやオズワルドと同じじゃん。そうだよ」


「……あ、やっぱり」


アスは、特に、驚いた様子もなく、小さく、頷いた。


「アス」


カトレアが、真剣な顔で、詰め寄る。


「このクソ女に、言いたいことがあったら、言っておいた方がいいですわよ?」


「いや、あの……そんな……」


アスが、目を、泳がせた。


「今、言わなきゃ、一生、言えませんわよ。決勝終わったら、また、うやむやにされます」


「え、えっと……

もう少しだけ……私の話をちゃんと最後まで、聞いてほしいかなって……」


「わかった!!今度ね!!」


……




エルディアが、満足げに、頷いた。

「よし、綺麗に、まとまったところで、行こっか」


一同は、揃って、思っていた。

(どこが?)


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