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頭がおかしくてお金が欲しいイカれた精霊魔術師エルディア  作者: 無印のカレー
決勝トーナメント

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103/168

102話 グレイス戦3

これは、ただの召喚ではない。


仲間を人形にした呪い。

その呪いを解析し。

欠陥を取り除き。

自らの意思を残したまま、力だけを引き出す術式へと昇華した。


その果てに現れた、Sランクの死霊。


だからこそ聞くべきなのか、


いや、否か。


僅かな逡巡とともに、グレイスはとうとう観念した。


「の、農作業の人手不足とは?」


「過疎化が進む村は、農業の担い手がどんどん減っていく。

高齢のお婆ちゃんが一人で、大きな畑を守ってたりする。

朝も夜も関係なく、腰を痛めながら……

でもこの子がいれば違う。

疲れないし、腰も痛めないし、文句も言わない。

お婆ちゃんが休んでる間に、代わりに畝を耕しておいてくれる。」


リッチが、律儀にコクリと頷いた。

骨だけの首が、カタリと鳴る。

よく見ればクワを持っている。


グレイスは思った。


いい話なんだが、非常に反応に悩むんだけど!!!




実況は普通に静まり返っていた。


「こんな……

こんな事がありうるのでしょうか。

エルディア選手。これだけの獣魔を従え、まだ余裕があるように見えます。」


解説者の、指先が、震えていた。


「……一度だけ。 リッチと戦場で出会った事がある。

あの時は、二つの陣営――両方とも、壊滅的な打撃を受けた。

味方も、敵も、関係ない。 リッチという存在は、戦場そのものを、等しく、蹂躙する

本当にあれを使役しているというのか?

信じられん……」



Sランク。

またSランク。


震えた声が、あちこちから漏れる。


「Sランクってそんな簡単にポンポン獣魔にできるものなのか?」


「いや、都市を単体で破壊できるのが、Sランクだ。」

「騎士団が壊滅した知らせでもAを超えることがまずない。」


誰もが、その少女から、目を離せずにいた。





エルディアは。腕を組んでいた。

そしてエルディアは、繰り返した。

まるでそれが、この闘技場で最も重要な情報であるかのように。


「……うーん。やっぱり、農業かなー

世の中の農地を全部アンデッドに任せればいいと思うんだ。」


グレイスは、目を閉じた。


(何故だ。)


何故、そこに戻る。

とゆーか、さっきから準決勝に全然戻ってこない。


グレイスは慎重に言葉を選んだ。


「――Sランクを一体使役できるということは、軍事力の再定義。

魔術師の戦闘体系。

従魔契約の常識。

国家間のパワーバランス。

くらいは考えられるはずだ。

本当にリッチを使役していると言うのであれば。」


「農家の人手不足が解決するだけじゃなくて、騎士団の人手不足も解決するってこと?」


「違う!!

貴様は労働そのものの概念をひっくり返す気か!?!?

もしその技術が再現可能なら、国家が保有する軍事力そのものが変わると言っているんだ!」


「畑が変わるね。」


グレイスは、戦慄した目でエルディアを見る。

そして気づいた。


(こいつSランクを、マジで農業用のお手伝いとしてしか、認識していないのか!?)


規格外。

理解不能。

そんな言葉と共に、グレイスは杖を握り直す。


先ほどエルディアを貫いた《穿鉄》は貫通のための技だ。 だが今まで放ってきたそれは、まだ、"人を殺さないための"《穿鉄》だった。


殺すつもりで撃った一撃など一度もない。


だが目の前にいるのはその"当然"が通じない何かだ。


ならば――答えは、一つしかない。


指先から、余計な迷いが音もなく削げ落ちていく。


(全力だ。

行くよ。

見ててみんな。)


呟きとともに。


「――ッ!」


グレイスの踏み込みの速度が変わる。


実況席で、実況が思わず声を上げた。


「グ、グレイス選手動いた!!速い!!今まで1番速いんじゃないか!?まだ、速度が上がるのか!?」




エルディアが、その様子を見て、にやりと笑った。

杖を、肩へ担ぐ。


「戦闘リソースに刻印を振り分けるよ!!

お待ちかねの、フィーバータイムだ!!」



領域魔術。


《戦術迷宮《タクティカル・ラビリンス》・冥府耕作結界《ラストハーベスト》》




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