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閑話休題 もってけ!セーラー服。3

 後日。


 規制線の向こうで、粉塵が晴れた。


 先に戻ったツキとハナに続き、ユキが瓦礫の山から姿を現した。


 白い髪に埃がついている。頬にも少し。


 怪我はない。


 黒いセーラー服は、右袖が肩口から裂けていた。


「すみません、守さん。また……」


 守が裂け目を見た。


 口元が歪んだ。


 ユキの耳が伏せられかけたところで、その口が大きく開いた。


「ふははは! 謝るな! 今回はたった百円だ! 君は今、経費削減の成果を着て帰ってきた!」


 ユキが瞬いた。


 守は彼女の袖を指して、隣のツキを振り返った。


「見ろ、この清々しい破れ方を! 以前なら数万円だ。それが百円! 自動販売機で茶を買うより安く、社員が一人帰還した! これを経営努力と言わずして――」


「社長」


 ツキは救護バッグの隙間から、一枚の紙を抜いた。


「制服の尻尾用加工、一着二千円かかっています」


 守の口が、開いたまま止まった。


「……何だって?」


「お任せいただいた、必要な加工です」


 守はツキから奪い取るように紙を取った。


 上から読んだ。


 下まで読んだ。


 また上へ戻った。


 手が震えだす。


「三百着」


「はい」


「一着、二千円」


「まとめて頼んで、割引していただきました」


「穴だぞ。穴を開けたんだぞ! 生地を減らして、なぜ値段が二十倍になる!」


「開けるだけなら、ユキが無料でやっています」


 守が右袖を見た。


 請求書へ目を戻した。


「六十万円……」


「服代を合わせて、六十三万円です」


「足すな! 今ようやく六十万円を受け止めたところだ!」


 ハナがその肩越しに覗き込んだ。


「ボス、安物買いの銭失いって知ってる?」


「君が安ければ安いほどお得だと言ったんだろう!」


「うん。店主さん、お得だったね」


「黙れぇぇぇぇ!!」


 守はその場に膝をついた。請求書を握り締め、天を仰ぐ。


「三着でよかった! なぜ私は店の通路まで救ってしまったんだ!」


 規制線のそばにいた警察官が振り返った。


 ツキは軽く頭を下げ、それから続けた。


「それと、残りの箱ですが。事務所の通路を塞いでいます」


「俺の部屋に置け!」


「もう置いてあります」


「では解決だ! これ以上、問題を発見するな!」


「布団が敷けません」


 ユキの耳が、ぴんと立った。


「でしたら、守さん。私の部屋へ――」


「まず百円で右袖だけ買えるか聞け! 尻尾の穴は無事なんだ! ここを捨ててたまるか!」


 ユキの耳が、また伏せられた。


 ハナはとうとう、ツキの肩に掴まって笑いだした。


 その日の帰り、守は一着二千百円の制服を着た三人を車に乗せ、六十三万円分の在庫に寝床を奪われた事務所へ戻った。


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