第29話 ラッキースター
「必ず、ですか。大きく出ましたね、アステラくん。今回は『建物を一個建てる』レベルでは収まりません。となると、民族自立助成金本来の国の管轄ですね。これは地方貴族の一判断で決定出来るものではありませんよ?」
腕利きの商人は言う。しかし、俺は知っている。彼とマギストスさんが「助成金通らない訳なくなーい?(意訳)」と話していたのを。
なんだろう? 確認作業でもしたいのかな、イルマーさんは。
「何が言いたい、イルマー?」
「助成金は降りるでしょう。ここは疑っていません。しかし、国の役人を通して、幾重の審査を通して、それでやっと支払われるようでは……早くて一年後ですか。致命的に遅いんですよ、アステラくん」
アステラが口を歪め、イルマーさんが微笑む。
「大商家か」
「流石。アタシの危惧はまさにそこです。これほどの優良投資物件はそう遅くなく嗅ぎ付かれます。彼らの情報網を甘く見てはいけません。大商家がスポンサーとなる。すると、ドワーフ自治区がドワーフの望まぬ形に発展する可能性が高い」
「あくまでもお前は『ドワーフが復興した自治区』にしたいのだな。『ドワーフを観光資源にした商業地区』ではいけない、と」
「イエス。主体はドワーフでなければなりません。ああ、君は物分かりが良くて喋るのがとても楽ですねえ。アステラくんはアタシを嫌いかも知れませんが、アタシはアステラくんの事が心底気に入っていますよ」
商人はニコニコと。対する青年は憮然とした表情のまま、人差し指で額を何度も叩いていた。アステラくんの気持ちが分かるなあ。俺の雇い主、ちょいちょいこうやって素直に褒めてくるんだよ。やりにくいよね。
「そりゃどうも。で? 俺にどうしろと言うんだ。イルマーの事だ、その辺りも考えてあるのだろう。聞かせてみろよ」
「ええ。そこは領主様でなくアステラくんが来てくれて助かったところですね」
「おい、それはどういう意味だ? ……お前、まさか」
「はい、恐らく君の思い浮かべた裏技で合っているかと」
ええと? ごめん、話が見えない。モルトさんに視線をやると、彼もお手上げのポーズを俺に返した。ふむ?
「手続き、ショートカットしましょう」
「……やっぱりそうなるか」
「ちょ、ちょっと待って下さいお二方! 正式手続きを飛ばすとはどういう事です!? 場合によっては帝国法に則って私はお二人を止めねばなりません!」
マギストスさんが慌てて声を上げる。あー、この人はお役人さんだから、横紙破りは看過出来ないよなあ。頭が固い訳ではないだろうけど、それにしたって立場が有るだろうし。
俺としては文官のそれは真っ当な意見だと思ったのだが、しかしイルマーさんとアステラくんはどこ吹く風と言った様子だった。
「別に、法的に問題が有るような事をしようってんじゃありませんよ、マギストスさん」
「そうだな。どっちかと言えば問題になりそうなのは俺の父上だ。帝室に借りを作るのは絶対に嫌がるぜ?」
帝室? ん? そんな話いつ、どこから出てきたの?
「帝室ではなく、そこは殿下個人になるように話を持っていって下さい。アステラくんも、何も馬鹿正直に『金を出せ』と言う必要は有りません。『こういった面白そうな事が行われている』と、殿下の情報源になりさえすれば事は運びますから」
「どっちの殿下だよ、イルマー」
「そこはどちらでも。二人とも抱き込んでしまうのがもっとも話が早そうですが、生憎とアタシはご本人を直接は知りませんので。そこの判断は君に任せますよ」
俺の分からないところでどんどんと話が進んでいる感覚が有る。ドワーフ自治区に来てからこんなんばっかだな、俺。
「そこは分かった。それで、父上はどうする?」
「まあ、そこは背に腹は替えられません。涙を飲んで頂きましょう。なに、領主様も『民の為』と言えばきっと苦々しい顔で首を縦に振りますよ」
俺の雇い主は言いながら、とても楽しそう、かつ悪そうな顔をしていた。うわあ、絵に描いたような悪徳商人ヅラですよ、イルマーさん。
「お前は商売の為なら平気で知り合いを売り飛ばすよな」
「人聞きの悪い事を言わないで下さいな。これはただの優先順位の問題でしかありません。それに、どこの誰が損をするって言うんです?」
「ええと……つまり、アステラ様の学生時代の個人的なツテを使って皇家にまで話を持っていくという事ですか、イルマーさん?」
「おっと、皆まで言ってはいけませんよ、マギストスさん。アステラくんはちょっと帝都で旧友と世間話に花を咲かせるだけ。それだけですから。そこに何の含みも有りません」
あー、ようやく少しではあるが俺にも二人が何を話しているのかが見えてきた。マギストスさん、グッジョブ。
「そうですか。私としたことが早とちりをしてしまい、大変失礼致しました。それならば法的には何の問題も御座いません。勿論、アステラ様が殿下、あるいは姫殿下とご歓談なさるのを私が止める権限などこの身は持ち合わせてはおりません。そしてまた、皇家がドワーフ自治区にご関心を持たれたところで、私の知るところでは有りませんね」
やはりマギストスさんは話の分かる文官である。うーん、ゴーレム時代に生き残っているだけあって実に有能。
「そういう事です。審査自体は必要ですが、もし仮に皇家案件となれば半年や一年も棚の上で埃を被ることは無いでしょうね」
そういう事ってどういう事だよ。おい、ここに話半分の現場責任者が居るが、それは置いてけぼりで大丈夫なのか?
皇家だとか殿下だとか、聞き捨てならないが出来れば聞いてなかった振りで済ませたい。そんな単語が飛び交っているけど、本当に君たちに話を任せて大丈夫なんだろうね?
……不安だ。だって俺、責任者なんだもん。ワンチャン比喩でなく首が飛ぶよ、これ。
「おい、イルマー。って事は今のところ、ここの開発における資金は一体どこから出ているんだ?」
「あー、それですか。あまり聞かれたくないところを突いてきますねえ」
「良いから答えろ。返答次第で俺は今すぐエンジナに帰るぞ。無駄に時間を取らせるな。速度が大事だって言ったのはお前だろうが、イルマー」
「全くです」
商人が苦笑する。苦手って公言してる割にはこの若様、物怖じなくグイグイ来るな。この二人の関係性はとかく不思議だ。
「実は、現時点での必要経費のほぼ全てをアタシが賄っています」
「え? 事業資金、全部イルマーが出してるの?」
「だから、正直に言ってカツカツなんですよ。火の車です」
マギストスさんがイルマーさんの言葉を肯定するように何度も隣で頷く。アステラはその二人を交互に見て、首を傾げた。
「イルマー、なんでドワーフに金を出させないんだ?」
「アタシらの発案で始まったものなので、彼らの資金に手を着けるのは無責任だと考えた次第ですね、ハイ」
「いや、お前なんで遠慮してんだよ」
「遠慮……ですか?」
「どうせ巻き込むなら、全力でやれって言ってんだ。今のお前は中途半端だ。無責任? どっちがだよ? お前のやり方じゃ、ドワーフは『代打ち』止まりだ」
穿たれた刃。この若様、やはり決して馬鹿じゃない。「成功はドワーフのものにしたいが、リスクは自分だけで抱える」という、この場の誰も気付かなかったイルマーさんの矛盾に秒速で一人だけ辿り着いた。
言われてみれば実際、彼の言う通りじゃないか。イルマーさんはドワーフに成功の所有権だけ渡して、失敗可能性を取り上げている。それで復興の主体はドワーフだと本当に言えるのか?
そこは明確に否だ。
とは言えイルマーさんの気持ちも俺には分かるかな。彼は過去の失敗を、こういう形で取り返そうとしているのだろう。商人らしくなく感情的で不器用だが、しかし人として誠実な択。
イルマーさんとアステラ。どちらも正しい。
「アステラくん……君の言う事は本当に胸に痛いですねえ」
「まず、最初にドワーフに出資を問うのが筋だろ? 自分達の話なんだからさあ。お前のやってること、無責任とかじゃなくてただの過保護だぜ?」
「仰る通りかと。資料をまとめて明日にでも早速、長老衆に打診してみますよ」
イルマーさんは「だって」も「でも」も無くアステラの案を飲み込んだ。それを見て、青年はニヤリと笑って首から提げていた何かをテーブルへと置く。
なんだろう、あの金属。根付かな? これでも売って資金の足しにしろ的な? でも、見た目にそんなに高そうじゃないな。金ピカでも、宝石が付いてるでもないし。
「よし、ならウチも一口乗せろ。イルマー、ドワーフから金を引き出す時にはこれを使え。もし事業がポシャったら、イスカリオ公爵家が出資金を全額補填する。例外無く、全額な」
え? え? え?
信用補完!? この若様、さらっととんでもない事言ってないか?
「アステラ様、それはなりません! それは……公爵家の印章ではありませんか! そのような大事なものを家の者以外に預けるなど!」
印章。俺の拙いラノベ知識的に言えば全面委任状みたいなモンだな。いわゆる判子だ、判子。実印、って言った方が近いか?
だからこそ、マギストスさんの諌言もむべなるかな。ぶっちゃけヤバいって。それ、下手したら公爵領兵に軍事命令とかも出せちゃうヤツじゃねえ?
「うるせえなあ。イルマーなら構わんだろ。父上もコイツなら納得するって。な、マギー」
あっけらかんと言うアステラ。……イルマーさん、あなた一体過去に何をやらかしたらそんなに領主様から信頼される事になるんですか。
それこそ、体を張って命でも助けてないとこうはならんやろ。
「あの……つかぬことうかがいますが、その印章ってどれくらいの効力が有るんですかね?」
おずおずと聞いてみる。あまりのチートアイテムだった場合は突き返そう、うん。嫌だよ、俺。こんな……言っちゃなんだが、たかが判子一つのせいで「イルマー殺人事件編」に入っていくのは。
「さあなあ。多分、金くらいは借りれるだろ。俺も使ったこと無いからよく分かんねえわ。父上の代官する時に無理矢理持たされるだけだし」
誰か! 誰か、この若様に常識を持ってこい! 冷静に考えたら凄い事言ってるぞ、コイツ! 無頓着にも程があるって!
呆れを隠し切れない俺に、マギストスさんが若様の言葉を補足する。
「アステラ様の認識でほぼ正解です。それを持っている事が領主代官として認められているという証拠になります。公爵家が傾かない程度の借款なら概ね機能するかと」
そこまで言って彼は一つ、大きなため息を吐いた。
「……どうしてアステラ様はこういうところを直感で外さないのか。いつもです」
なんか、色々とマギストスさんの過去が透ける発言だな。苦労人なのだろう。頑張れ。生きていればきっと良い事有るよ(他人事)。
「で、ドワーフから金を引っ張っても……どうせ足りないよな? とりあえず何に金が必要なのか聞かせろよ、イルマー」
「まずは宿です」
「宿ォ?」
「この自治区に宿は、ここ一軒しかありません。早急に増やさねば治安悪化も考えられるでしょうから、ここだけは本当に急務です。が、即応する為の資金が有りません。ええ、アステラくんに今言われた通りドワーフから借りるつもりではいます。しかし、それでも十分とはいかないでしょう」
イルマーさんの言葉にアステラ青年はこくこくと頷く。片や宿屋に治安維持施設としての側面が有った事に驚きの俺である。
まあ、宿無しは犯罪の温床か。分かり味が深い。
「ドワーフ自治区に人が流れ込むのは、お前の中では確定事項なんだな?」
「ええ。『四階層から挑戦出来るダンジョン』にはそれだけの価値が有ります。モルトくんのお墨付きですよ」
「そうか。なら……マギストス、俺が父上から自己判断で使って良いと言われた金が有ったな。アレを出せ」
「は。いかほどお出ししましょうか?」
「全部に決まってるだろ。バカか、お前?」
「ぜ、全部? 大金貨十枚全てでございますか?」
大金貨十枚だから、金貨にして百枚か。ちなみに高給取りと言われるゴーレム技師の日当の相場が金貨一枚であるからして、これは結構な金額……なのかなあ。ちょっと自信無いです。
リンゴ換算なら俺にも出来るんだけど。リンゴじゃ宿は建たないしね。
「イルマー、この程度ではまるで不足だな?」
「いやあ……正直、喉から手が出るほどありがたいです」
揉み手をする商人を、スポンサーの青年はジト目で睨み付ける。
「不足だな?」
「……まるで不足です」
「よし、分かった。なら、父上に掛け合おう。今晩には発つ。そうと決まればくっちゃべっている時間は無いぞ。イルマー、モルト……後、クロードと言ったか。それまで存分に俺に交渉材料を魅せるんだな」
「今晩!? 早急過ぎます。せめて一泊だけでもしていきませんか、アステラ様!?」
「マギー、そう言ってくれるのは嬉しいが時間が惜しいのは、お前も理解しているだろ? イルマー、イスカリオ家からの送金は六日待て」
「六日って……エンジナからここまでが三日ですよ、アステラくん」
往復で六日。……いや、無理だろ。この若様、父親を説き伏せる時間を見ていない。何、そこってキャンセルが効くの? そんな訳なくない?
「父上なら秒で説得してやる。今回の判断を俺に任せた責任は取って貰うとしようじゃないか。これで我が家が潰れるようならそこまでだろ」
そう言って、商人のお株を奪うようにニヤリと笑う青年。自信が有るどころの騒ぎではない。アステラは父の説得を確信している。
「そうですね。アステラくんなら本当に出来てしまうのが怖いですよ」
苦笑するイルマーさんも、彼の判断を否定しない。二人はイスカリオ公爵を知っているからなんだろうな、これは。
アステラの父親だから、同じような即断即決タイプだったりするのかしら?
俺の思索を他所に、アステラ、イルマーさん、マギストスさんの合意は形成されたようだった。若様はモルトさんとマギストスさんをドワーフ自治区を見て回る案内役として選ぶと、宿を出る前に一度こちらを振り返った。
「イルマー、『今度は』出来るよな?」
「……ええ。今度は土産物屋では終わらせませんよ、『アステラ』」
二人の間には「苦手意識」とは真逆の深い相互理解が流れているように俺には見えた。
なんだよ、それ。
……格好良いじゃん。
騒ぎを終えて、俺のブランチはテーブルの上ですっかり冷め切ってしまっていた。ああ、肉の脂が皿の上で白く凝固しているのがとても悲しい。
「嵐のような青年でしたね……」
「青年って。クロードさん、同年代でしょう? 君はたまに年寄りみたいな物言いをしますねえ」
イルマーさんのツッコミは笑って誤魔化す。
「あはは。で、あの人はどういった方なんですか? 話の流れでなんとなくは分かりましたけど、正直まだ掴み切れていません」
そう言えば俺、自己紹介とかして貰ってないな、あの子に。お貴族様だから、領内の人間なら知ってて当然みたいな感じなんだろうか。
「アステラくんですか。彼はエンジナ領主、イスカリオ公爵様の長男坊ですね。性格は見て貰った通り。とにかく判断力と決断力が素晴らしい。ただ、学力に多少の難は有りますが」
「確かに、あの若さでポンと大金を置いていくとか、傑物っぽいですねえ」
「ええ。自分が無学なのを理解しているので、とてもちゃんと人の話を聞きます。だからこそ領民からの人気もすこぶる良くてですねえ。ここぞという判断を外さない所から付いた彼の渾名は『ラッキースター』。彼に救われた領民は決して少なくないですよ」
「なんとなく分かります、それ」
リアル暴れん坊将軍だな。殺陣はさすがにやらないだろうが。
「ところでクロードさんは皇帝陛下の第二子、第一皇女殿下をご存知ですか?」
「いえ、知らないです」
さっきマギストスさんが姫殿下とか言ってたし、きっとその人の事だろうと当たりを付ける。……第一皇女殿下にツテが有るとか、アステラくんは色々と凄いな。どうやったらそんな人脈を作れるのか、前世で基本ぼっちだった俺にはとんと分からぬ。
「年の頃はクロードさんやアステラくんと同じくらいなんですが、彼女は『帝国の星』などと言われていまして」
「また、『星』ですか」
「ええ。才女です。アステラくんとは真逆で学が出来るタイプの方ですね」
俺が思い浮かべたのは将棋の駒。「飛車」と「角」。そこに強弱は無いが、どちらにしろ大駒と呼ばれる類だ。ちなみに合体したらチェスの最強駒、クイーンである。
この比喩で言えばイルマーさんとモルトさんは金将と銀将辺りだろうか。ドワーフは猪突猛進な香車かな。俺? 俺は良いとこ桂馬だろう。王将は……誰だろ。ファム?
おっと、話が逸れたな。
「その『帝国の星』が、どうかしたんです?」
「アステラくんにベタ惚れしてます」
は? 帝国の皇帝の娘(どうせ美少女)がベタ惚れ?
それ、なんて主人公ポジ? 俺の……じゃないの?
「……あ、あー……ね?」
余りの衝撃に女子高生な返しをしてしまった。
知ってはいたが再確認。世界は俺に対して無慈悲だ。異世界転生までさせておきながら、主人公にはさせない。なんとまあ、俺らしい顛末だろうか。
泣きたい。心の底から泣き崩れたい。
「アステラくん以外との結婚は無いと内々に宣言していましてね、殿下。あ、一応これ秘密にお願いします」
「……なんでそんな事を知っているんですか、イルマーさんは」
「アタシは公爵様とたまに話しますから」
そういや、ガネイラさんを見付けてきたのも領主様とのツテか。かえすがえす怖いなあ、商人ネットワークって。
「で、娘がそこまで言うならと皇帝陛下にアステラくんが呼ばれて、その場で陛下をたらしこみました、彼」
「……なんか、情景が透けます」
皇家のお気に入りとか、前世でどれだけ徳を積んだらそんなことになるのやら。あー、やっぱ人生ってキャラメイク時点である程度決まってしまっているんですかねえ。辛え。
俺の深い溜め息を、しかし、イルマーさんが笑った。
「羨ましがる所では無いですって、クロードさん。アタシなんか皇家との縁なんて絶対に要りませんもの。恐縮が大いに勝ります」
「それは確かに。翻って、アステラくんはあの若さで恐ろしく肝が据わっているんですね」
「まあ、そこはああ見えて公爵家嫡男ですから。我々とは社交界の場数が違いますよ。人間、訓練で大体何とかなるものです」
あー、確かに重責込みで考えたら替わりたいとは思えないか。美少女(推定&断定)皇女に一方的に惚れられているとかいう男のロマンとの天秤は、一生ぐらぐらしていそうだ。
「で、どうやらその場で皇女殿下がアステラくんの長所を皇帝陛下にこれでもかとアピールしたそうで」
「才女の使い所間違えてません?」
とりあえず、俺のヒロイン探しにおいて、異世界ファンタジーの鉄板であるお姫様は消えたというのだけは理解する。……いや、居るかも分からないが第二、第三皇女とかならまだギリ諦めなくても良さそうか? なにしろ帝国の皇帝だし、子沢山だったりしても普通だよな、うん。
プリンセス属性好きな人、手ぇ上げてー? ハァァァイッッ!!(全力)
そんな俺の煩悩を知る由も無いイルマーさんは、テーブルに肘を突いて、風景に溶けかけているチェシャ猫みたいに笑った。
「つまり……アステラくんはアレでいて次期皇帝レースのダークホースなんですねえ、これが」
「は?」
じ、次期皇帝陛下!?




