4話
入学式が終わると、それぞれのクラスへ移動となった。
クラス分けは成績と爵位を考慮してS〜Dに割り振られる。
一番下のDクラスは名前だけの存在で、余程の問題児じゃないと割り振られることは殆どないと言っていい。だが、問題を起こすと学期途中であってもこのクラスに降格させられる可能性がある。
その逆、Sクラスは王族とその側近、伯爵以上の家格の成績優秀者と特待生枠の平民数人で構成される。極少数の選ばれしものだけが入れるクラス。
つまり、そう。Sクラスはみんなが憧れるエリートクラスってこと。
そしてこの流麗端正、才色兼備、超絶ビューティフルなシオン・ノア・ブライヤーは、〜㊗️Sクラス所属㊗️〜パーティーを脳内で開いている所だった。
「(さすがこの俺、何でもできちゃう)」
過去何度もSクラスになってきたけれど、その度に嬉しかった。
ざわめき嫉妬し驚愕する周囲の視線が気持ちよくて気持ちよくてひたすら気持ちよかったから。
これこれ〜!クセになるんだよな〜!と思いながら、俺はご機嫌な気分で自分のクラスへと足を向けた。
そして教室に入ったら、さっきまでのご機嫌な気分が急速に沈んでいくのを感じた。
「面子が最悪だ……忘れてた……」
趣味の悪い王子と、その側近一号堅物眼鏡、側近二号のノンデリ筋肉男と、今まさにこちらに向かって来ている口うるさいチワワ。その他数名。
「ちょっと!どうして落ちこぼれのあなたがSクラスなんですか!?まさか賄賂!?そんな汚い真似して恥ずかしくないんですか?公爵家としてのプライドがあるかも知れませんが、ここは優秀な人が集まる分他のクラスよりも危険な授業だってあるんですよ!?そうするとケガだって増えて……」
「あ~~!落ち着いてくださいリオネル様?うちは賄賂など渡してませんし……」
「大体!中等学園のときはSじゃなかったじゃないですか!まさかその事でご両親やご兄弟に何か言われたんですか!?お話聞きましょうか!?それとも……」
いつの間にか目の前まできたチワワは、その可愛い眉毛をキッと吊り上げながら吠えだした。
チワワ凄い。勢いが凄い。
口達者の自覚がある俺でもこれにはついていけなかった。
「(そうそうこれも忘れてた。この問答も毎回あるんだよね)」
感心しながら、チワワがキャンキャンと吠える様子を微笑ましく見守ることにした。止めるのが面倒くさかったとも言える。
伯爵令息が公爵令息に凄い口の利き方!と戦慄しそうなものだけど、よく聞くと何故か気遣うことばっかり言っていることに気付いてからは、段々と可愛く見えてきていた。
ニコニコで嫌味風のお小言を聞いていると、無意識に口を開いてしまった。
「「実力不足でしょうが精々頑張ってくださいね」」
あ。と思った時には遅かった。
「ど、どうして私が言ってることを当てるんですか!?どうやったんですか!?ていうか、全然こちらのお話聞いてませんよね?!そうやって綺麗なお顔で微笑まれても騙されないんですからね!!ブライヤー公爵令息は……」
チワワのありがたいお言葉を聞き流しながら、〜何回も聞いてたら流石に次何言うか分かるんじゃないか説〜を脳内で繰り広げていたら、無意識に出てきていた言葉を止めることが出来なかった。
結果、チワワ大興奮。お小言も終わりに向かいそうだったのに、更なる興奮材料を与えてしまった。
あぁ、可愛いお顔が真っ赤になってる。とまた聞き耐性に入ったものの、そろそろこの状況にも飽きてきてしまっていた。
チワワは吠える様子も可愛いけれど、長々と聞くその声が煩わしいのも確かだった。
周囲も傍観しているだけで止める気配が無いし、どうしようかな~と思いながら、ふと思いついて、それまで微笑みを崩さなかった表情筋を休ませ真顔でチワワ伯爵令息ことリオネル・アデル・ヴェルディア伯爵令息を見つめることにした。
これまでの経験則上、黙って見つめるだけで向こうも黙らせることが出来ることを知っていたからだった。
リオネルははじめ、急に真顔になったシオンに気付きビクッと体を揺らしたものの、その口を止めることはなかった。
だが、シオンに真顔で見つめ続けられると段々とその声も尻すぼみとなっていき、最後にはか細い声でボソボソと呟くだけで、その尖っていた眉もへニャリと垂れ下がって哀れな様相な、まるで被害者面するチワワのようになってしまった。
思った以上に自分の真顔で怯えさせてしまったから、あちゃ~と申し訳なく思いながら、自分の凶悪な目つきに悲しくなった。
顔がいい自覚はある。けど、いかんせん目つきが悪い。怖がらせないために常に笑顔を心がけているせいで、何を言われても笑っている奴と舐められることもあるけれど、それでも怖がられるよりは遥かにマシだと思っていた。
実際こうやって怖がられると悲しいしやっぱりちょっとへこんでしまう。
実際は怖がっているわけではなく、いつも微笑んでいる美人の鋭い美しさにタジタジになっただけであり、寧ろ時折見せる無表情顔のファンが密かにいたりもしたが。シオンはそれを知らなかったし、これからも知ることはなかった。
そしてやがて静かになった教室に張り詰めた緊張感は、担任の教師が入ってくることで霧散した。
周囲と同じようにホッと息を吐いて、教師の声かけと共に自分の席へ着席すると、先ほどは気づかなかったあることに気づいた。
前方にある教壇を中心に前から後ろへ段々とせり上がる、扇状の座席。
その中間の窓際に着席したシオンのすぐ前の席にその生徒はいた。
シオンと同じ公爵位で、建国にも貢献した由緒正しい名家、エルドヴォス公爵家。その当主とメイドの間に生まれた庶子。
光に透かすとネイビーに見える黒髪を風に揺らしながら座るその姿は、ここに居るはずが無かった。
回帰前まで、唯一のDクラス生徒として俺以上に蔑まれてたのに?
それが急にS?
呆気にとられ、その後の教師の話なんて全く聞くこともなく、その後ろ姿をひたすらに見つめていた。
そして確信する。
あぁ、今回はやっぱり違う。1日でイレギュラーが2個も起こるなんて……!回帰も終わりに近いのかも!
そしてまた誓った。
回帰者、絶対見つけて☓してやるからね。待ってろよ。
そして花開くつぼみのように、それはそれは綺麗に微笑んだ。
何日も空けてしまってすみません
できれば毎日、ゆっくり投稿していく予定です!
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