5話
その日は入学式だったのもあり、教室では軽い自己紹介と担任の紹介、行事説明等をされてすぐ解散になった。
俺は直ぐにでも前に座る男——ガレル・レオ・エルドヴォスに話かけようと今か今かとタイミングを計っていたけれど、ガレルは俺が声をかけるよりも早く席を立って、こちらの慌てる声を聞いているのかいないのか、そのまま教室を去っていった。
有無を言わせぬその様子に呆気にとられてしまい、ガレルを追うことも忘れたままポカンとその背を見送るしかなかった。
「ええ……足早くない?ちょっと話してみたかったのに…」
さっきまでウキウキとしていた分残念で思わず呟くと、不意に隣から馴れ馴れしそうな声がかかる。
「え、話すって、さっき出てったやつ?シオン知り合いだったっけ?」
なぜか俺の隣の席に座り、先ほどまでずっと珍獣を観察するかのような目でこちらを観察していた側近二号——近衛騎士団長子息のクラウス・ヴァン・ハイゼンだった。
クラウスはそのカーマイン色の瞳を細め、溌剌で気持が良い笑みを浮かべながらこちら見つめてきている。周囲には好青年そのもののように写るだろうが、俺にはその笑みが軽薄に思えて、内心舌打ちをしながら答えた。
「クラウス様。あなたにそう呼ばれるほど親しくはないと思いますが?」
「え?あぁ、ごめんごめん。なんかシオン見てると妙に親近感が湧くんだよな。どっかで話したことあったっけ?」
クラウスがにこやかに言った一言に俺はぎくりと肩を揺らした。
何度も回帰することで人間関係をリセットされるのが嫌になり、一つ前の回帰からは誰とも深い関わりを持たないようにしていた。
確かにそれ以前の回帰ではそれなりに周りと関係を築いていた時もあったし、その中で特に仲が良かったのもクラウスだったけど……
「(でもそれももう無くなった過去の話しで、こいつが覚えてるわけ無いのに……)」
まぁ、気のせいだろう。と沈みそうになる思考を止めて、クラウスをまた見つめ返した。
「いえ。中等学園ではクラスが違いましたし、きちんとお話するのは今日が初めてだと思います」
「あ、そうだっけ?それじゃあ、これから仲良くしてくれよ。ずっとシオンのこと気になってたからさ。俺はクラウス・ヴァン・ハイゼン。クラウスって呼んでくれ。あと敬語はなしで!シオンの方が爵位上だろ?よろしくな」
そう言ってクラウスは俺に手を差し出してきた。
その昔と変わらない人懐っこさに、敵わないなぁと思わず苦笑が漏れる。
今世もまた、あまり人と関わらないようにしようと思っていたけど……でもこんな風に言われたら絆されちゃうよなぁ。
「(少しくらい……いいよな?もしかしたら今世も無くなるかもしれないけど……でもやっぱり一人は寂しい)」
人との関わりを遮断していた分、こうやって手を差し出して貰えることが一際嬉しく感じられた。
思わず溢れた笑みをそのままに俺は手を握り返した。
「うん。よろしくクラウス」
「おう!よろしくな!」
*****
「はー結局、ガレルもあの女生徒のこともわかんなかったな」
あれから、学園中を歩き回って色々と手掛かりを探そうとしたけど、何の収穫も得られなかった。
「女生徒はまだしも、ガレルがやけに気になるな……この天才ビューティフルシオン様の勘が告げてる……ガレルが怪しい……」
寮部屋の机に向かい、腕を組みながらウンウン唸っていたけれど、思考は行き詰まるばかりで、取り敢えず今日の出来事も踏まえてメモを更新してみることにした。
「うーん、まず……気になるのは……」
・見知らぬ女性徒
・Sクラスに何故かいるレガス
「やっぱりこの二人だよな?女性徒はまぁ置いておいて、レガスはなんでSにいるんだ?一応公爵家の庶子ではあるけど……だとしたら前までDクラスだったのも不思議だし……」
うーん?とメモを取りながら頭をかしげる。
今まで自分のことで手一杯で、他人の事情については無頓着だったツケがここで回ってきていた。
「あー!やばい!全然わからん!!もうダメ!無理!降参!明日!明日にしよう明日考えよう!」
結局、考えても考えてもよく分からなかったし考えも全然まとまらなくてお手上げだったから、ちょっと悔しくて思わず大声を上げてしまった。
もう明日、クラウスとかに色々聞いてみよ!と決めて、俺はベッドにダイブした。
更新遅くなりましたm(_ _)m
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