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11/12

15歳の戴冠

「ダン、行くぞ。レガースを付けろ」

フィンランド最高峰リーグ、ヴェイッカウスリーガ。

HJKの本拠地ボルト・アリーナのベンチで、15歳の肩を監督が激しく叩いた。

対戦相手は優勝争いから脱落するも、2位をキープするKuPS。

熱気で白く煙るスタジアム。後半30分、0-0の緊迫した局面。

「お前の『ケンガ』で、この膠着をぶち破ってこい」

背番号「14」のユニフォームに袖を通したダンがピッチに足を踏み入れた瞬間、フィンランドのフットボール史が音を立てて動き始めた。


<タイガ(大樹)の覚醒>

プロの当たりは、アンダー年代とは比べ物にならないほど凶暴だった。

しかし、激しいショルダータックルを受けても、ダンの肉体は大きくはブレない。深川の木場で鍛え上げられた足裏のセンサーが、ぬかるんだピッチの不規則な弾みを完全に無効化し、ボールを磁石のように足元に収め続ける。

後半44分。ゴール正面、28mの位置でダンがファウルを誘い、絶好の位置でフリーキックを獲得した。

ざわめき「なぜ15歳のガキがボールを持っているんだ?」

元ルーマニア代表のGKが構える。「ドライブ(懸河)」「無回転(ブレ球)」双方の噂が伝わっているようで、迷いが見られた。

やがて、ゴールライン内まで下がったように見せかけて、あまり位置を変えなかった。

無回転に山を張ったのを気付かれないようにしているようだ。


(じいちゃん。あなたのホラ話は、世界の真ん中まで届く本物だよ)

深く息を吐き、白夜の終わったヘルシンキの冷たい夜空を見上げるダン。

ホイッスルが鳴る。

右足がボール真後ろのわずか数mm下を、爆発的なスピードで擦り上げる。

ドゥオォシュッ!!!

スタジアムに空気を引き裂く重低音が響き渡った。

壁を越えた瞬間、ボールはゴールバーを越える軌道を描く。

しかしゴールに迫ったところで突如、直角と見紛う角度で、急降下するボール。

理不尽なまでの垂直落下、まさしく『懸河』だった。

ゴールを外れた、という本能、反射的感覚がGKの判断修正を妨げる。

「くっ!」遅れてドライブと悟るも、その手を伸ばす前にボールはゴールへと吸い込まれていた。

ゴオォォォォオール!

ボルト・アリーナが、地鳴りと狂喜乱舞の渦に包まれた。


15歳でのリーグ最年少ゴール。プロのスタジアムを完全に支配した瞬間。

ベンチに向かって誇らしげに右拳を突き上げるダン。

スタンドの各国スカウト達は手元が覚束ない。


「歴史」が「世界」へと繋がる、碧き瞳の少年の果てしない飛翔が、今ここに始まった。


「最終回じゃないぞよ もう1話だけ続くんじゃ」



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