眩い輝きの中へ
11月のヘルシンキは、kaamosと呼ばれる極めて日照時間が短い季節。
漆黒の闇の中を登校し、日中少し明るくなったかと思えば、午後3時には再び暗闇の世界へ戻ってしまう。
いつもは流行、サッカー、アカデミックな話題とお喋りの尽きないクラスも静まり、どことなく物憂げな様子が漂う。
日照が少なくビタミンDが不足する為、給食にビタミン剤が添えられる時期である。
陰鬱とした、スカンジナビアの人間が最も嫌う季節。
だが、ダンにはサッカーがあった。
現在トップチーム、セカンドチームはシーズンオフに入り自主トレ期間に入っている。
再始動の翌年1月よりトップチーム合流と先日告げられていたのだ。
HJKはリーグ優勝、CL予選出場を義務づけられたチームであり、リーグ戦出場は消化試合となってからだろう。
しかしトップチームデビューは夢ではなく、近くにある確かな目標となった。
ノルッシを出て真っ暗な寒空の下、反射材を付けて歩く。
駅への道も、断続的に降る冷えたみぞれで濡れている。
そよぐ潮風も、この時ばかりは身にしみる。
それでもなお、ダンの足取りは軽かった。
いつもより混み合うトラムへ乗り込み、わずかな時間に夢想する。
「テーム・プッキ(フィンランド代表、英プレミアリーグ等でも活躍)にどんなパスが良いかな…」
「HJK(ハーフナー・マイク、田中亜土夢に続く)3人目の日本人と、日本メディアでも報道されちゃうかな?」
そうしている内にスタジアム前。トラムを降りる。
相変わらずの闇の中、室内練習場の扉へ手を掛けた。
ダンの瞳に、眩い光と緑が飛び込んで来た。




